『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ネイモアに注目
2018年に公開された映画『ブラックパンサー』の続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』がいよいよ2022年11月11日(金)より劇場公開。MCUフェーズ4としては最後の映画作品となり、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) 以降伏せられてきた現在のワカンダの状況が描かれる。そして、ティ・チャラ亡き後のワカンダ王国に、新たな脅威が迫る。
マイケル・B・ジョーダン演じるキルモンガーが非常に強い印象を残した前作に続き、本作にも重要な新キャラクターが登場する。メキシコ出身のテノッチ・ウエルタ・メヒア演じるネイモアだ。テノッチ・ウエルタ自身は、ネイモアを「ヒーロー」としているが、予告編を見る限りでは『ワカンダ・フォーエバー』のメインヴィランとして存在感を発揮している。
そのネイモアとは一体どのような人物なのだろうか。米マーベル公式で製作陣が語った言葉を見てみよう。
なお、以下の内容は『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』におけるネイモアというキャラクターの立ち位置についてのヒントが含まれている。極力情報を入れずに本編を楽しみたい方は注意していただきたい。
タロカンの王ネイモア
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でMCU初登場となるネイモアは、原作コミックでは“サブマリナー”という別名を持つ古参のヒーロー。1939年に『マーベル・コミックス』第1号に登場している。海底王国アトランティスの王子であり、母はアトランティス人、父はアメリカ人という設定で、アトランティスを守るために戦うキャラクターだった。
後に様々なヒーローと出会うことでヒーローと共に戦うことになるネイモアは、映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) に登場したイルミナティの原作版にアトランティス代表として参加している。
『ワカンダ・フォーエバー』では、ネイモアはアトランティスではなくタロカンの王として登場する。この変更は、“アトランティス”という名前がDCコミックス映画の「アクアマン」の文明と被っているためと考えられる。ネイモアは、予告編では「ククルカン」とも呼ばれているが、これはアステカやマヤ文明で崇拝されていた神の名前であり、羽のある蛇の神を指す。映像ではネイモアは足についた羽根を駆使して空を“駆ける”姿も見せている。
ネイモアとは誰か
米マーベル公式では、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でのネイモアの登場について、ライアン・クーグラー監督が言及している。なんでも、ネイモアは前作『ブラックパンサー』の時点で登場させるアイデアがあり、今回の続編で満を持して登場を果たすことになったのだという。
ライアン・クーグラー監督は、「ネイモアの登場は、自分以上に集団を代表するもう一人の政治家、リーダーを紹介するチャンスでした」と語る。また、高速で泳ぎ、空を飛ぶネイモアの強さについても説明している。
水中と高高度で呼吸でき、地上も移動できるという能力については、他に比類がありません。彼は驚くほど強く、ソーと同じ強さを持っています。十分な量の水があれば、ハルクと同じくらい強くなることもできます。
なんとネイモアは、アベンジャーズの中でも最強クラスであり、初代アベンジャーズの生き残りであるソーとハルクの強さに匹敵するというのだ。しかし、ネイモアの強さは外見だけのものではない。『ワカンダ・フォーエバー』のプロデューサーでマーベル・スタジオ副社長のネイト・ムーアは、こう語っている。
彼は権力のために世界を破滅させることに興味はありません。お金にも興味はありません。彼は自分の民族を守りたいだけなんです。これ以上の利他主義があるでしょうか?
“信念のあるヴィラン”は、MCUではお馴染みだが、ネイモアは自分のためでもなく自分の民族の人々を守るために戦うのだという。
これまでのMCU作品にタロカンは登場してこなかったが、それはタロカンがこれまで人類に知られずに隠れて過ごしてきたということでもある。『ブラックパンサー』ではワカンダは開国し、『ワカンダ・フォーエバー』の予告映像ではラモンダ女王がティ・チャラ王が亡くなったことで世界の国々がワカンダを狙っていると非難するシーンがあった。タロカンも同じように危機に晒されるとすれば、ネイモアは強い信念のもとに戦うことになるだろう。
ネイト・ムーアは、ネイモアの“英雄性”についてこう続けている。
この人物は、自分が自分自身の物語のヒーローだと100%信じています。ネイモアの目には、既に悲劇的な歴史を乗り越えてきた人々を守っている自分の姿が映っており、自分のことをヴィランだとは思っていません。
ラテンアメリカルーツの子ども達へ
ワカンダに対抗するならば大きな脅威となるであろうネイモア。演じたテノッチ・ウエルタ・メヒアは、ネイモアについてこう語っている。
私にとっては、彼はただのヒーローです。世界や他のキャラクターたちが彼をどう見ているか考えるのは私の仕事ではありません。私の仕事は、彼に強いモチベーションを持たせることです。彼は明確に道筋を捉えており、なぜそれが重要なのかということを理解しています。自分自身を守り、自分たちの文化と民族を外の世界から守り、彼女ら/彼らの価値観と文化に反して彼を唆してくる植民地主義から守ろうとしているんです。
同時にテノッチ・ウエルタ・メヒアは、ラテンアメリカ出身の俳優としてMCUに主要な役割で出演することの重要性についても言及している。
このようなキャラクターを演じる機会は、世界中の多くの子ども達、特にラテンアメリカの最も強い先住民族を継承する子ども達にとって、非常に大事なリプレゼンテーションの機会になることを願っています。
MCUでは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』にメキシコ人の両親を持つソーチー・ゴメスが登場。製作総指揮のビクトリア・アロンソは「彼女はLGBTQ+コミュニティとラテン系コミュニティの両方を代表している」と語っていた。
ネイモアを演じたテノッチ・ウエルタ・メヒアはメキシコ生まれのメキシコ人俳優。メキシコ映画での活躍を経てMCUに参戦している。2022年10月に配信されたMCUスペシャル・プレゼンテーションの『ウェアウルフ・バイ・ナイト』では、同じくメキシコ生まれのガエル・ガルシア・ベルナルが主演を務めた。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』では、タロカン自体にラテンアメリカを重ね合わせた表象が複数登場する。予告編ではアステカ文明を思わせる壁画が登場し、ネイモアの別名のクルルカンもアステカやマヤの神の名前だ。“タロカン”という名前自体がアステカの神トラロックの楽園“トラロカン”から来ていると考えられる。
MCU初の黒人主人公を紹介した「ブラックパンサー」シリーズは、MCUでまた別のリプレゼンテーションを実現しようとしている。ネイモアは『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でどのような活躍を見せるのだろうか。その姿は劇場でチェックしよう。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日(金)より全国でロードショー。
Source
Marvel.com
ワカンダ・フォーエバー』のサントラは11月18日(金)に発売される。
アナログレコード版は2023年2月3日(金)発売予定。
【!ネタバレ注意!】ネイモアの過去とタロカンの歴史についてのネタバレ解説はこちらから。
前作『ブラックパンサー』で流れた音楽の歌詞を含む全曲の解説はこちらの記事で。
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