『キャシアン・アンドー』シーズン1をトニー・ギルロイ監督が解説 最終話の意図やビーの秘密が明らかに | VG+ (バゴプラ)

『キャシアン・アンドー』シーズン1をトニー・ギルロイ監督が解説 最終話の意図やビーの秘密が明らかに

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ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1完走

「スター・ウォーズ」ドラマ最新作の『キャシアン・アンドー』シーズン1が2022年9月から11月にかけて配信された。全12話で構成されたシーズン1は映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) で反乱同盟軍の情報将校として登場したキャシアン・アンドーと、その周囲の人々が反乱に加わっていく様子が描かれる。

『キャシアン・アンドー』は既にシーズン2の配信が決定済み。シーズン2もシーズン1と同じく12話で構成されることになっており、『ローグ・ワン』へと直接繋がる物語が描かれることになる。2年後とされているシーズン2の配信が待ち遠しい状況だが、『キャシアン・アンドー』のクリエイターとして全体を指揮したトニー・ギルロイが、非常に高い評価を受けたシーズン1について振り返っている。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の内容に関するネタバレを含みます。

「決断を見る」ドラマ

トニー・ギルロイは、『GODZILLA ゴジラ』(2014) で知られるギャレス・エドワーズ監督が指揮した映画『ローグ・ワン』の再撮影とポストプロダクションを手掛け、当初は上層部から難色を示されていた同作を立て直したことで知られる。『ローグ・ワン』には共同脚本という形でクレジットされているが、『キャシアン・アンドー』では晴れて頭から全体の指揮をとることになった。

スター・ウォーズ公式サイトでは、トニー・ギルロイが『キャシアン・アンドー』で目指したことは、「反乱とはどのようなものかを定義し、その代償を示すこと」だったと紹介されている。『キャシアン・アンドー』シーズン1に登場する人々は一様に“選択”を迫られる。トニー・ギルロイはこう話している。

これらの人々は、実在するような普通の人々です。自分ではコントロールできないような出来事の連鎖が次々と迫り来るんです。もし使われていなかったら『The Wind of War(邦題:戦争の嵐)』というタイトルで呼んでもいいくらいです。次々に何かが起きて、皆を巻き込んでいく。そこで人々がどのような決断を下すのか、それを見るのがこのドラマです。

B2の秘密

その「人々」には、ドロイドも含まれる。マーヴァと暮らすビーことB2は「スター・ウォーズ」でも歴代上位に入るであろう魅力的なキャラクターに仕上がっており、ファンにも好評だったという。

トニー・ギルロイは、ビーのモデルを「年老いた犬」と話す。『ローグ・ワン』や「スター・ウォーズ」続三部作にも参加したクリーチャー部門のニール・スキャンランを中心にデザインされたビーは、製作陣に試作機がお披露目された時に一同が一目惚れしたそうだ。トニー・ギルロイはその時のことを「全員が笑顔になりました」と話している。

ビーを操ったデイヴ・チャップマンは続三部作ではBB-8を操っていたが、今回はなんとビーの声も演じている。チャップマンは撮影の時にいつも通りドロイドを操作しながら自分で仮の声をあてていたのだが、トニー・ギルロイはその後の声優の起用を取りやめたのだという。

オーディションリストからいくつもの映像を映像を観たのを覚えていますよ。ある日、弟のジョンが来て言ったんです、「(デイヴ・チャップマンほど)良い声はないね」って。「この人(チャップマン)は本当に良いよ」と言うので見直したら、「あぁ、このままにしておこう」ということになったんです。彼の声をね。彼にかけた「君だよ。君の声になるよ」っていう電話は最高でしたね。

人形使いのデイヴ・チャップマンは、普段から仮の声をあてており、本編で自分の声を消されることには慣れていたという。思いがけないオファーに、チャップマンは「とても驚いていた」とギルロイは話している。

アクションシーンにもこだわりが

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の特徴の一つは、フォースとジェダイが登場しないことだ。その中で撮影されるアクションシーンにも、トニー・ギルロイなりのこだわりがあったようだ。

私は長いあいだアクションを撮ってきましたが、その鍵は——いくつかあるのですが——特定の場所と特定の状況における制限のある状態で取り組むということです。

トニー・ギルロイは人気SFアクションシリーズの「ボーン」シリーズで第一作目から脚本を手掛け、『ボーン・レガシー』(2012) では監督も務めた。『キャシアン・アンドー』では収容所内の工場や市街などでブラスターなどの武器を持たない人々の戦いが描かれた。特に、ナーキーナ・ファイブでの反乱がトニー・ギルロイのお気に入りだという。

刑務所の中では、私にとっては青年が手すりに飛びついてその重みで手すりが壊れるシーンがキーポイントです。その小さなリアリティと混乱、“エラー”が自分も加わっているように感じるフックになるんです。

フックは常に必要です。アルダーニにも、葬儀にもフックがある。私たちのアクションシーンには全てフックがあり、特別な要素があります。

ナーキーナ・ファイブに夢中に

トニー・ギルロイがナーキーナ・ファイブでこだわったのは脱獄シーンだけではない。そのコンセプトは脚本家達の最初のセッションで生まれ、2日ほどを費やして作り上げたという。

そのアイデアが出た瞬間、皆がそのアイデアに夢中になりました。「そんな、じゃあ床がこうなってたならどうする? 看守にはゴムのブーツを履かせないといけないね。ブーツはゴム製にしよう」ってね。ある時点まではブーツの虜でしたよ。ブーツを手に入れて外に出るという(アイデアもあった)。

結果的にはキャシアンが床を浸水させることで電撃の床をショートさせるという展開になったが、製作陣がナーキーナ・ファイブをどれだけ楽しみながら作り上げたかが分かるエピソードだ。トニー・ギルロイは、こうしたデザインの刑務所が実際に作られるのではと、製作陣が心配になったということも冗談まじりに明かしている。

気になるのは、アンディ・サーキスが演じたキノ・ロイのその後。サーキス自身は「分からない」と話しているが、トニー・ギルロイは「私は彼(キノ)をとても愛しています」とした上で、「答えは分かりません」と濁している。しかし、その答えはいつか分かるのか、という問いには「おそらくね」と今後の展開に含みを持たせている。

ナーキーナ・ファイブ編のエピソード監督であるトビー・ヘインズと、演じたアンディ・サーキスが語ったキノ・ロイのその後についてはこちらの記事で。

シーズン1最終話を語る

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の最終話第12話で描かれるマーヴァの葬儀は、シーズンのクライマックスであり、ハイライトの一つ。フェリックスの人々が奏でる音楽が特徴的だが、実はこの音楽はプロの演奏家ではなく、出演している俳優達が実際に現場で演奏したものだという。シリーズの撮影が始まる2年前から本作の音楽を手掛けたニコラス・ブリテルと共に作曲に取り組み、7分に及ぶ曲を作り上げたという。

これは古からの伝統の一部なんです。マーヴァやキャシアンだけでなく、人々についてのものであり、この伝統はこれらの人々全員が知っていて、彼女ら/彼らが自然につながるような伝統です。ですから、その音はこの人々の民族的伝統であるように感じられなければなりませんでした。(この曲には)特別な意味があり、皆が共に集まる前触れなのです。

葬儀は市民達の列を通して私の中で生き生きとしたものになりました。フェリックスの個性や奥深さ、この人々が互いに思いやる気持ちを前進させるのに役立ちました。それ(音楽)が全てを豊かにしてくれたんです。

トニー・ギルロイは、最終話の別のシーンの意味についても言及している。キャシアンの背中を押したマニフェストのシーンだ。

このショーで最も幸せで幸せに思うことの一つは、(キャシアン役の)ディエゴが(ネミックの)マニフェストを聞き返すシーンです。葬儀の前の晩にネミックのマニフェストを聞くんです。ネミックはマニフェストの中で、「我々は勝利するだろう、なぜなら抑圧は不自然であり、自由は自然なものだからだ」と言います。

そして、銀河中で反乱が起きていることを大々的にスピーチします。反乱を起こそうとしている人たちは、みんなバラバラになっています。ですからこのドラマは、それが集結していく様子を見る作品なんです。最終的にはヤヴィンに集結することになるんですから。その結果というのは、その実現に最も貢献した人々にとっては、良いものでも悪いものでもあります。

『キャシアン・アンドー』シーズン1で印象的だったのは、反乱分子の中でも我が道を行くソウ・ゲレラの姿と、平気でクルーガー派を切り捨てるルーセンの姿だった。決して一枚岩ではない反乱分子たちだが、若くして命を落としたネミックはそれらのさざなみがいつか大きな波になることを予見していた。

トニー・ギルロイは、銀河の各地における反乱分子の戦いが、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977) におけるヤヴィンの戦いに繋がっていくことを見据えている。ここからの『キャシアン・アンドー』では、反乱同盟軍の結成に向けて人々が集結していく姿が描かれることになりそうだ。

どうなるシーズン2

トニー・ギルロイは最後に、シーズン2について「私たちの最大の関心。それは、コミュニティの中で見栄えが悪くなった“昔ながらのギャングスターたち”がどうなるのか、ということです」とヒントを与えている。トニー・ギルロイは米ローリング・ストーンでも「昔ながらの面々と権威の側にあるメンバーの対立」をシーズン2では扱うと話している。

確かに、映画『ローグ・ワン』では、モン・モスマが反乱軍の指揮をとり、ルーセンは登場せず、ソウ・ゲレラは孤立を深めている。世代交代、あるいは革命を実現するための実際的な組織化が進んでいく様子がシーズン2で描かれるということだろうか。まだまだ謎は多いが、ひとまずはシーズン1の余韻に浸りながら、シーズン2の配信を楽しみに待とう。

ドラマ『キャシアン・アンドー』はDisney+で独占配信中。

『キャシアン・アンドー』(Disney+)

『ローグ・ワン』はBlu-rayセットが発売中。

『キャシアン・アンドー』のサウンドトラックは配信中。

Source
StarWars.com

『キャシアン・アンドー』シーズン1最終回の第12話のネタバレ解説はこちらの記事で。

トニー・ギルロイが語ったシーズン2についての情報はこちらから。

俳優のジェネヴィーヴ・オーライリーが語ったモン・モスマの孤独についてはこちらから。

アンディ・サーキスが語る「スター・ウォーズ」再出演の理由とキノ・ロイのバックグラウンドについてはこちらの記事で。

アンディ・サーキスとエピソード監督が語ったキノ・ロイのその後についてはこちらから。

シリル・カーンのバックグラウンドについて俳優が語った内容はこちらから。

デドラ・ミーロのバックグラウンドについて俳優が語った内容はこちらから。

 

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』最終話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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