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第55回ネビュラ賞のノミネート作品発表
SFWA (アメリカSFファンタジー作家協会) が主催するSFファンタジー賞 ネビュラ賞の第55回最終候補作品が発表された。ネビュラ賞は、1966年に設立されたSFファンタジー文学における最高賞の一つ。世界SF大会の参加資格を持つSFファンの投票によって受賞作品が決まるヒューゴー賞に対し、ネビュラ賞はプロの作家や編集者などで構成されるSFWAの会員によって受賞作品が決まる。
小説部門の注目ポイントは?
小説部門では、2019年のヒューゴー賞短編小説部門を受賞したアリックス・E・ハロウの『The Ten Thousand Doors of January』が長編小説部門にノミネート。1989年生まれのアリックス・E・ハロウは、長編デビュー作でいきなりのネビュラ賞ノミネートを果たした。
中長編小説部門には日本でも話題になったテッド・チャンの『息吹』から、収録作品の一つである「不安は自由のめまい (原題: Anxiety Is the Dizziness of Freedom)」がノミネートされている。
また、ラップ楽曲が原作のSF小説「The Deep」も中長編小説部門の最終候補に選ばれている。原作は2018年のヒューゴー賞映像部門 (Best Dramatic Presentation) にノミネートされたシングル曲だ。同作のあらすじは以下の記事に詳しい。
なお、長編小説部門については、2018年、2019年と2年連続でネビュラ賞を受賞した作品がヒューゴー賞も受賞し、“ダブルクラウン”を達成している。
昨年の両賞の受賞作品は以下の記事に詳しい。
ゲームと映像作品にも注目
2019年に新設され、2年目を迎えるゲームライティング部門では、インタラクティブノベルよりも『アウター・ワールド (原題: The Outer Worlds)』などのビデオゲーム作品の比率が増えている。2019年はNetflixのインタラクティブドラマ『ブラックミラー: バンダースナッチ』が同部門を受賞した。
また、映像作品を対象にしたブラッドベリ賞のノミネート作品も発表されている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』『キャプテン・マーベル』といったアメコミ作品に加え、『マンダロリアン』をはじめ、ディズニー+、Amazonプライムビデオ、Netflixなどの配信プラットフォームのドラマ作品が強さを見せている。
受賞作品発表は5月30日
第55回ネビュラ賞の受賞作品発表および授賞式は、米時間の2020年5月30日(土)、ロサンゼルスで行われる。
1966年に発表された第一回ネビュラ賞長編小説部門の受賞作品は、フランク・ハーバートの『デューン/砂の惑星』。同作は繰り返し映像化され、2020年には『ブレード・ランナー2049』(2017)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって映画化される。
サミュエル・R・ディレイニー『アルジャーノンに花束を』(1966)やアーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』(1969)、ケン・リュウ「紙の動物園」(2011)など、これまでに数々の名作がネビュラ賞を受賞してきた。2020年はどの作品が栄誉を手にするのだろうか。
第55回ネビュラ賞ノミネート作品 最終候補
長編小説部門
『Marque of Caine』by Charles E. Gannon
『The Ten Thousand Doors of January』by Alix E. Harrow
『A Memory Called Empire』by Arkady Martine
『Gods of Jade and Shadow』by Silvia Moreno-Garcia
『Gideon the Ninth』by Tamsyn Muir
『A Song for a New Day』by Sarah Pinsker
中長編小説部門
「Anxiety Is the Dizziness of Freedom」by Ted Chiang
「The Haunting of Tram Car 015」by P. Djèlí Clark
「This Is How You Lose the Time War」by Amal El-Mohtar & Max Gladstone
「Her Silhouette」by Drawn in Water, Vylar Kaftan
「The Deep」by Rivers Solomon, with Daveed Diggs, William Hutson & Jonathan Snipes
「Catfish Lullaby」by A.C. Wise
中編小説部門
「A Strange Uncertain Light」by G.V. Anderson
「For He Can Creep」by Siobhan Carroll
「His Footsteps, Through Darkness and Light」by Mimi Mondal
「The Blur in the Corner of Your Eye」by Sarah Pinsker
「Carpe Glitter」by Cat Rambo
「The Archronology of Love」by Caroline M. Yoachim
短編小説部門
「Give the Family My Love」by A.T. Greenblatt
「The Dead, In Their Uncontrollable Power」by Karen Osborne
「And Now His Lordship Is Laughing」by Shiv Ramdas
「Ten Excerpts from an Annotated Bibliography on the Cannibal Women of Ratnabar Island」by Nibedita Sen
「A Catalog of Storms」by Fran Wilde
「How the Trick Is Done」by A.C. Wise
ゲームライティング部門
『Outer Wilds』by Kelsey Beachum
『The Outer Worlds』by Leonard Boyarsky, Megan Starks, Kate Dollarhyde, Chris L’Etoile
『The Magician’s Workshop』by Kate Heartfield
『Disco Elysium』by Robert Kurvitz
『Fate Accessibility Toolkit』by Elsa Sjunneson-Henry
ブラッドベリ賞 (映像作品)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』by Christopher Markus & Stephen McFeely
『キャプテン・マーベル』by Anna Boden & Ryan Fleck & Geneva Robertson-Dworet
『グッド・オーメンズ』「不和」by Neil Gaiman
『マンダロリアン』「ザ・チャイルド」by Jon Favreau
『ロシアン・ドール: 謎のタイムループ』「出口」by Allison Silverman and Leslye Headland
『ウォッチメン』「1軒の酒場に入る神」by Jeff Jensen & Damon Lindelof
アンドレ・ノートン賞 (ヤングアダルト賞)
『Sal and Gabi Break the Universe』by Carlos Hernandez
『Catfishing on CatNet』by Naomi Kritzer
『Dragon Pearl』by Yoon Ha Lee
『Peasprout Chen: Battle of Champions』by Henry Lien
『Cog』by Greg van Eekhout
『Riverland』by Fran Wilde