AmazonがSFに“倍賭け”
Amazonプライムビデオの生き残り戦略の鍵はSF作品にあるようだ。米調査会社のAmpere AnaliysisがBusiness Insiderに提供したデータによると、動画配信プラットフォームのAmazonプライムビデオがオリジナルSF作品の製作に“倍賭け”していることが分かった。2018年後半から2019年にかけてのSF作品の発注数が、全体の作品の15%から30%に増加しているのだ。Business Insiderはこれを「プライムビデオにおけるAmazonの大規模なドラマコンテンツ戦略の一部」と分析している。
『ザ・ボーイズ』『エクスパンス』の成功も
Amazonプライムビデオでは、現在、オリジナルSFドラマが人気を集めている。2019年に配信を開始した『ザ・ボーイズ』(2019-) シーズン1は、Amazonではナンバーワンのヒット作品に。『エクスパンス -巨獣めざめる-』(2015-) は、SFに特化したケーブルテレビ局のSyfyチャンネルでシーズン3をもって打ち切りが発表されたが、Amazonプライムビデオがこれをが引き継ぎ、2019年12月にシーズン4の配信が始まった。
また、フィリップ・K・ディック原作のドラマ『高い城の男』(2015-2019)は4シーズンを完走。同作のプロデューサーでフィリップ・K・ディックの娘でもあるイサ・ディック・ハケットは、今後もAmazonプライムビデオでフィリップ・K・ディック作品の実写化を続けていくことを公言している。
NetflixのSFは減少?
今回の調査を行なったAmpere Analiysisは、「AmazonはSFへの投資を倍増させています。SFとファンタジーはAmazonにおいては大きく成長しているジャンルであり、代わりにコメディコンテンツから手を引いているようです」と解説している。
Amazonがコメディ作品への比重を下げ、SF作品に力を入れる一方で、競合であるNetflixがより力を入れているのはコメディ作品とロマンス作品だ。2018年後期には製作中の作品のうち4%だったロマンス作品は2019年後期には16%に、8%だったコメディ作品は18%に上昇している。
Netflixは、2018年にはSF作品が全体の40%近くを占めていたが、2019年には約20%にまで落ち込んでいる。それでもロマンス作品とコメディア作品の比率を上回っており、Netflix全体の作品数が増え続けていることもSF作品の比率が減少した要因の一つである。現在製作を進めているSF作品数では、Amazonの27作品に対してNetflixが41作品と、NetflixもSF作品の製作数自体を減少させているわけではない。SF作品自体のコンテンツとしての強さは変わらず健在だ。
今後の“Amazon SF”
Amazonプライムビデオでは、今後も続々とSF作品が公開される予定だ。大人気ドラマとなった『ザ・ボーイズ』はシーズン2が2020年に公開される。また、Amazon初のロトスコープアニメーションで製作された『アンダン〜時を超える者〜』(2019-)もシーズン2の製作が決定、『エクスパンス -巨獣めざめる-』もシーズン5の製作が決定している。
そしてAmazonプライムビデオ最大の目玉となるのは、Amazonが約270億円を投入して製作するドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』だ。配信開始は2021年に迫っており、歴史的ファンタジー作品のドラマ化に大きな注目が集まっている。
なお、Amazonプライムビデオは、約1,100億円を投入して中国SF『三体』のドラマ化を目指しているとの報道もあった。この報道があったのは2018年3月のことで、Amazonがこの2年間でSF作品に力を入れているという今回のデータと合致する内容だ。『三体』はその後、中国本国でドラマ化されることが発表されているが、AmazonスタジオがSFにかける熱量が分かる一件だった。
日本では以前、Amazonオリジナルシリーズとして『仮面ライダーアマゾンズ』(2016-2017)も製作され、配信されている。『高い城の男』での日系キャストの活躍や、『ザ・ボーイズ』が日本で巻き起こしたブームは記憶に新しい。AmazonプライムビデオによるSFへの“倍賭け”は、日本SFにも波及するだろうか。
Source
Business Insider