コウモリオーグの語ったこととは?『シン・仮面ライダー』ネタバレ解説&考察 | VG+ (バゴプラ)

コウモリオーグの語ったこととは?『シン・仮面ライダー』ネタバレ解説&考察

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

続く新情報解禁!

2023年3月18日に全国公開された庵野秀明監督最新作『シン・仮面ライダー』(2023)。最終予告に続いて追告冒頭の2分49秒がYoutubeで公開され、『ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション 挑戦の舞台裏~』がNHKで放送決定。2023年4月3日には発声可能上映、4月9日には大ヒット御礼舞台挨拶&全国同時生中継の実施が決定するなど次々と新展開を見せる。また、2023年7月21日よりAmazon Primeにて独占配信が決定している。

そんな『シン・仮面ライダー』だが公開されると同時に各登場人物についての考察合戦がSNS上で繰り広げられるなど、登場人物のキャラクター性についても注目が集まっている。今回はその中でも浜辺美波氏演じる緑川ルリ子との関係性にも注目が集まるコウモリオーグについて考察していきたい。

なお、本記事には『シン・仮面ライダー』および漫画脚本:山田胡瓜氏、作画:藤村緋二氏のスピンオフ漫画『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸福である。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『シン・仮面ライダー』と漫画『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』の内容に関するネタバレを含みます。

SHOCKER生化学主幹研究者「コウモリオーグ」

緑川弘博士とは異なるSHOCKERのブレーン

『ラブ&ポップ』(1998)や『キューティーハニー』(2004)、『シン・ゴジラ』(2016)など庵野秀明監督作品では常連の手塚とおる氏。他にも樋口真嗣監督が特撮監督として関わった『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999)にも出演するなど、特撮およびスタジオカラーとの親和性の高い手塚とおる氏が演じるのがショッカーのブレーンの一人であるコウモリオーグだ。

コウモリオーグは塚本晋也監督演じる緑川弘博士と同じくショッカーの研究者だが、緑川弘博士とは研究内容はおろか、その目的すら異なっている。『シン・仮面ライダー』本編で緑川弘博士はショッカーの思想に心酔しているものの、昆虫をはじめとする節足動物と人間の合成オーグメント(怪人、改造人間)こそ最高傑作と考えており、オーグメンテーション(改造手術)によって周囲のプラーナを無意識に吸収することで食事を必要としない人間を生み出そうとしていた。

それに対してコウモリオーグはそもそも脊椎動物との合成オーグメントという点で緑川弘博士の研究とは設計思想の異なる存在だ。コウモリオーグはヴィールス(ウイルス)を蔓延させ、それにより人心を操ることを目的としていた。コウモリオーグのモデルになったテレビシリーズ『仮面ライダー』(1971-1972)や石ノ森章太郎作品の漫画版『仮面ライダー』(1971)で登場したコウモリ男もヴィールスを蔓延させようとしていたが、それは人間を吸血鬼化させるものだった。

『シン・仮面ライダー』ではコウモリオーグはヴィールス(ウイルス)など感染症の蔓延は社会の不正や不平等を表面化させるものであると考え、ヴィールスによる支配と人口削減によって人類全体を平等にすることこそ幸福という思想を抱いていた。この点はコロナ禍でもエッセンシャルワーカーの人々は休めないという事実によって、職業ごとの重要性と経済的格差が表面化したのとよく似ている。撮影時がコロナ禍と被っていることもあって、コウモリ男に世相を反映させたリメイク・キャラクターだと言える。

実はお互いをあまり知らない?

コウモリオーグは自身の研究の正当性と力を誇示するために乗り込んできた浜辺美波氏演じる緑川ルリ子をヴィールス(ウイルス)によって支配し、更には緑川ルリ子に酷似した大量の女性のショッカー構成員を呼び出し、ヴィールスによって全員殺害してみせている。

そして緑川ルリ子を人質に取ったことで池松壮亮氏演じる本郷猛/仮面ライダー相手に優位に立ち回ろうとした。しかし、緑川ルリ子がベルトにつけたプラーナを操る装置でヴィールスを分解していたことに気づかず、形勢は一気に逆転してしまった。

その直前に緑川ルリ子からは相変わらず人間を信用せずにヒト型等身大兵器に警備をさせていると突っ込まれ、コウモリおじさんと呼ばれるなど親し気だが、その父親である緑川弘博士の研究するプラーナについては詳しく知らなかったようだ。

どの派閥の合成オーグメントだったのか

他にも本郷猛/仮面ライダーのジャンプ力が66m30㎝であることなどを詳しく語っていたが、一方でバッタオーグである仮面ライダーと連動しているサイクロン号がマフラーからジェット噴射をして飛べることを知らないなど、緑川弘博士の研究や開発している合成オーグメントについて詳しくないことが強調されている。

前述のヒト型等身大兵器の原型と思われるガーディアンという兵器は、『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』の中で登場している。そこでは、ガーディアンはショッカーの思想に心酔する緑川弘博士や森山未來氏演じる緑川イチローたちが所属する絶望派とは別のショッカーの技術を用いて軍事産業や人身売買で利益を上げる旧体制派の兵器として描かれている。その点を踏まえるとコウモリオーグは旧体制派よりの人間だったのかもしれない。

それを考えると緑川ルリ子に真っ先に倒す目標として挙げられるなどしているのは、もともと緑川弘博士の所属していた絶望派とは敵対していたか、敵対とまではいかなくても対立関係にあったことが理由かもしれない。第2巻発売時点でコウモリオーグの素体となったと思わしき研究者が、緑川弘博士に対して嫌味を言い、対立する立場として登場している。そのようなコウモリオーグと緑川弘博士の関係性は、今後の『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』で詳しく語られることに期待したい。

名解説役「コウモリオーグ」

科学者ゆえのおしゃべり好き?

前述の通り、手塚とおる氏演じるコウモリオーグは自分の研究や知識を披露したがる節があり、池松壮亮氏演じる本郷猛/仮面ライダーの前で浜辺美波氏演じる緑川ルリ子を操る様子や緑川ルリ子そっくりの構成員を操る姿を見せつけている。更には緑川ルリ子にプラーナでヴィールス(ウイルス)を克服され、片翼を撃ち抜かれて逃げるときには本郷猛/仮面ライダーのジャンプ力が66m30㎝で自分には届かないと煽るかのように語っている。

こういった説明口調の台詞は冗長になりがちだが、コウモリオーグが傲慢な科学者ゆえに知識をひけらかす衒学的な癖があることを描くことで冗長にならず、なおかつ仮面ライダーの身体能力やサイクロン号の性能を映像だけではなく言葉で観客に解説してくれている。

最後はライダーキックで地面に叩きつけられて死亡するのだが、死してもなお解説役の役目を果たしてくれている。コウモリオーグ戦後、本郷猛/仮面ライダーが緑川ルリ子と話す際に優しすぎるために戦いに向いていないと評されていたにも関わらず、その片足からコウモリオーグの血が垂れていたことで本郷猛/仮面ライダーが戦う覚悟を決めたことを表現していた。

名バイプレイヤー「手塚とおる」だから生まれた名バイプレイヤー「コウモリオーグ」

手塚とおる氏と言えば日本を代表する名バイプレイヤーだ。手塚とおる氏は最速公開の舞台挨拶でも会場を笑わせてくれるだけではなく、全国各地のライブビューイングの観客に向けてジョークを飛ばすなど、劇場全体を和ませてくれていた。そのような手塚とおる氏だからこそ、仮面ライダーというキャラクターを立ててくれる名バイプレイヤーのコウモリオーグが生まれたのだと考えられる。

コウモリオーグの登場シーンは決して長くはない。それでも他の合成オーグメントと比べて常に異形の姿をしており、仮面/マスクもつけていない姿は印象的だ。合成オーグメントたちのつける仮面/マスクは殺人への忌避感を失わせる作用があり、ダブルライダーはそれに抗っている。しかし、コウモリオーグは仮面/マスクなしでヴィールス(ウイルス)による大量虐殺をしてみるなど、マッドサイエンティストっぷりが強調されている。

コウモリオーグがいかにして異形の姿になったのか、緑川弘博士や緑川ルリ子との関係性はどのようなものか、そして緑川イチローの計画に関わっていたのかなどが『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』で描かれることに期待が高まる。『シン・仮面ライダー』本編でも大活躍してくれたコウモリオーグがスピンオフ漫画『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』でどのような形で登場するのか今後も注目していきたい。

映画『シン・仮面ライダー』は2023年7月21日(金)よりAmazon Primeにて独占配信開始。

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クモオーグについての解説と考察はこちらの記事で。

ハチオーグについての解説と考察はこちらの記事で。

『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』ネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

『シン・仮面ライダー』の本郷猛と緑川イチローの対比はこちらの記事で。

『シン・仮面ライダー』の一文字隼人のネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

発表済みキャストとキャラクターについてはこちらの記事で。

3月23日に追加発表されたキャストと全オーグメント解説についてはこちらの記事で。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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