ネタバレ考察 『ブラックアダム』のアノ人に注目 『ピースメイカー』からの繋がりを解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察 『ブラックアダム』のアノ人に注目 『ピースメイカー』からの繋がりを解説

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『ブラックアダム』アノ人に注目

DC映画最新作でDCU(DCEU)映画の第11弾となる『ブラックアダム』が2022年12月2日(金) に劇場公開。ドウェイン・ジョンソンが主演を務め、5,000年の眠りから復活したテス・アダムの物語が描かれる。

『ブラックアダム』は、DCU映画としては『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021) 以来、DCU作品としてはドラマ『ピースメイカー』(2022-) 以来となる新作。単独作品としての楽しさもありながら、DCUを追ってきたファンにとっても楽しいサプライズも待っていた。

今回は、『ブラックアダム』の中盤に登場したアノ人について考察していこう。なお、以下の内容には『ブラックアダム』に加え、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』と『ピースメイカー』の重大なネタバレを含むので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ブラックアダム』、映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』、ドラマ『ピースメイカー』の内容に関するネタバレを含みます。

エミリア・ハーコート登場

『ブラックアダム』中盤に待っていたサプライズは、エミリア・ハーコートの登場だ。自ら封印される道を選んだテス・アダムを連れ、JSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)の面々はタスクフォースXの基地を訪れる。タスクフォースXとは、スーサイド・スクワッドの正式名称である。氷山に隠された恐ろしい規模のタスクフォースXの基地で待っていたのが、エミリア・ハーコートだ。

エミリアは『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』で初登場。『ブラックアダム』にも登場したアマンダ・ウォラーの下で、ジョン・エコノモスと共に本部からスーサイド・スクワッドメンバーを支援していた。『ザ・スーサイド・スクワッド』では、誰が生き残るかの賭けに興じる場面もあったが、基本的にはウォラーから信頼されている様子だった。

同僚のエコノモスは事なかれ主義者だが、エミリアもブラッドスポートの娘を人質にするようなアマンダ・ウォラーのやり方に従っている。一方で、エミリアが「ミス・ウォラー——」と意見をしようとする度にウォラーはそれを遮る形で怒鳴りつける。命令を無視して宇宙怪獣スターロを倒しに行こうとするブラッドスポートをウォラーが遠隔で殺そうとした際にも、一度は「ミス・ウォラー——」と意見しようとするが、怒鳴られると頭部を爆破する装置のケースを開いている。

もう一人の部下であるフロー・クロウリーが、ブラッドスポート達を始末しようとするウォラーを気絶させた後には、エミリアはすぐにブラッドスポート達を支援するスマートな立ち回りを見せている。

『新スースク』から『ピースメイカー』へ

『ザ・スーサイド・スクワッド』のミッドクレジットシーンでは、エミリアとエコノモスが登場。ピースメイカーが生きていたことが明かされると、三人が新たな任務を担うことが示唆される。エコノモスはピースメイカーを押し付けてきたことを「ウォラーの復讐」だと言い、エミリアもこれに同意している。

逆に言えば、ウォラーにとってエミリアとエコノモスは、自分の思う通りに動かなかったとしても切り捨てたくはない人材であることが分かる。エミリアが自分の意見を発する前にウォラーが遮るのは、議論になり後戻りできなくなることを恐れているからかもしれない。

『ブラックアダム』では、ウォラーからチーム結集の指示を受けて動いていたホークマンに「ウォラーが宜しくって」と伝言を伝えており、エミリアとウォラーは良好な関係にあることが示唆されている。この時エミリアは、兵士を引き連れてリーダー然とした姿を見せているが、それは『ザ・スーサイド・スクワッド』の後日譚であるドラマ『ピースメイカー』での活躍と関連があると考えられる。

『ピースメイカー』での活躍

『ザ・スーサイド・スクワッド』と同じくジェームズ・ガン監督が手がけたドラマ『ピースメイカー』は、上記のミッドクレジットシーンの直後から始まる。なお、エミリア・ハーコート役を演じるジェニファー・ホランドは、2015年からジェームズ・ガンと交際しており、『ピースメイカー』シーズン1の配信がフィナーレを迎えた2022年2月に婚約を発表した。

ドラマ『ピースメイカー』では、『ブラックアダム』のドウェイン・ジョンソンと同じくプロレス出身のジョン・シナが主演を務めた。認知に問題を抱えるピースメイカーことクリストファー・スミスは、クレムゾン・マーンが率いるチームでエミリア、エコノモス、ウォラーの娘であるアデバヨ、ペットのワッシー、そして友人のビジランテと共に行動する。

エミリアのチームは、バタフライという謎の生命体との戦いに挑む。ピースメイカー自身の認知の歪みがチーム内で指摘され、少しずつ矯正されていく中、ピースメイカー自身は白人至上主義者の父との関係や幼少期のトラウマといった問題にも向き合う。

エミリアは当初、ピースメイカーに冷たい態度を示していたが、少しずつ人との接し方を変えていくピースメイカーに心を開いていった。一方、チームを率いていたクレムゾン・マーンがバタフライに寄生されていることを受け入れて共闘するなど、冷静な立ち回りも見せている。

チームのリーダーに

結果、『ピースメイカー』では司令官のマーンを失った際に、レオタが「信頼できるリーダーがここに」と言われ、チームの全員がこれに賛同。エミリア・ハーコートはチームのリーダーになるのだ。シーズン1第7話のクライマックスはエミリアを中心にチームのメンバーが歩き出すシーンであり、エミリアが『ピースメイカー』のもう一人の主人公であることが示された。

その後、エミリアはアマンダ・ウォラーに電話する娘のレオタを介して、作戦遂行に対する自分の意見を述べている。ウォラーもエミリアが現場の指揮をとるよう告げ、エミリアは「了解、ママ〜」と皮肉混じりの返答をしている。この後作戦も成功させており、ウォラーもエミリアのリーダーとしての成長を認めたのではないだろうか。

エミリアは、チームの写真を撮って皆にテキストで送る姿も見せており、チームをまとめる素質があることが示されていた。エミリアを演じたジェニファー・ホランドは、米DC公式のインタビューでエミリアを「非常に複雑で欠点がある人物」としながらもジェームズ・ガン監督によるキャラクター造形を喜んでいる。

『ピースメイカー』ではエミリアにもアクションシーンの見せ場がいくつもあったが、ジェニファー・ホランドは昔から体操競技に取り組んでいたそうで、アクションが披露できたことも喜んでいる。今後のDCUではエミリアの更なる活躍にも期待できる。

なお、ジェニファー・ホランドは、家が火事になっていたとしたらエミリアはアデバヨ、エコノモス、ワッシーの順番で助けるだろうとも話している。その理由は、自分で逃げられそうにない人を優先的に助けるだろうということと、エコノモスとは長い付き合いで気にかけているとしている。

『ピースメイカー』のラストからどう繋がる?

『ピースメイカー』シーズン1のラストでは、バタフライとの決戦で瀕死の状態になりながらも生き延びた。ピースメイカーの優しさに涙を流すと、ピースメイカーの手を握り、その後はリハビリに取り組んでいる姿が描かれている。

スーサイド・スクワッドのメンバーが収容されていたベルレーブ刑務所の所長だったエコノモスは、刑務所に戻って仕事を再開している。『ブラックアダム』のタスクフォースXの基地にエコノモスがいなかったのは、作戦を成功させたエコノモスをウォラーがベルレーブ刑務所での仕事に復帰させたからだろう。『ブラックアダム』を観る限り、エミリアはタスクフォースXに復帰したようだが、ピースメイカーとの作戦で発揮したリーダーシップが認められ、重要な役職を任されていると考えられる。

なお、『ピースメイカー』シーズン1の最後にはアマンダ・ウォラーの娘のレオタ・アデバヨが記者会見を開き、タスクフォースXの存在を暴露。囚人が減刑を見返りに危険な任務に就く非人道的な計画がベルレーブ刑務所で実施されていることを告発し、その責任者が母のアマンダ・ウォラーであることも世間に公表した。

タスクフォースXは世間に悪名を轟かせたわけで、これまでのような活動はできなくなったはずだ。とすれば、あの巨大な基地でエミリアが従事していたのはタスクフォースXの新規事業であり、ブラックアダムのような超人を封印して管理しておくことが中心的な業務になったのではないだろうか。

一方で、アマンダ・ウォラーがホークマンやスーパーマンに出動を要請しているのは、タスク・フォースXの上部組織にあたるA.R.G.U.S.長官としての権限だろう。『ピースメイカー』シーズン1でも、刻一刻を争う状況のなかでエミリア達が突入する中、ウォラーはウォラーでジャスティス・リーグに出動を要請している。汚れ仕事をこなすためにA.R.G.U.S.傘下に結成されたタスク・フォースXはどのように方針転換をしたのか、今後のDCU作品で語られることに期待しよう。

エミリアのセリフに注目

最後に、『ブラックアダム』でのエミリアの数少ないセリフにも注目したい。ブラックアダムを預けられたエミリアは、「神は私たちを創り、私たちは神を葬る」と語る。“破壊神”のブラックアダムもそうだが、DCUではスーパーマンも神のように描かれており、自分達ならスーパーヒューマンたちを葬ることができると自負しているようにも聞こえる。

実際のところ、ブラックアダムはエターニウムを使ったロケット弾で負傷しているし、『ザ・スーサイド・スクワッド』では、ブラッドスポートがスーパーマンにクリプトナイト弾で重症を負わせたことが明かされている。スーパーヒーローに出動を要請するのがA.R.G.U.S.のアマンダなら、ヒーローだろうがヴィランだろうがスーパーパワーを持つ“神”たちに睨みをきかせておき、捕らえた神々を封印しておくのが、タスクフォースXのエミリアの仕事ということになるのかもしれない。

製作が決定している『ピースメイカー』シーズン2では、ピースメイカーとエミリアの再タッグにも期待したいところ。だが、今後のエミリアは安全地帯から報告を待つアマンダ・ウォラー的なポジションに収まる可能性もある。まずは、「神を葬る」と豪語したエミリアが、神々が登場する2023年3月17日(金)日米同時公開の『シャザム!〜神々の怒り〜』で登場するのかどうかに注目したい。

映画『ブラックアダム』は2022年12月2日(金)より劇場公開。

『ブラックアダム』公式サイト

ブラックアダム誕生のストーリーは中沢俊介・内藤真代 訳のコミック『シャザム!:魔法の守護者』に収録されている。

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『ブラックアダム』ラストとミッドクレジットのネタバレ解説&考察はこちらから。

『ザ・スーサイドスクワッド』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

『ザ・バットマン』がDCU(DCEU)に属さない理由はこちらから。

『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』で描かれたジョーカーについての解説はこちらから。

『ザ・バットマン』ラストの解説&考察はこちらの記事で。

あの人が登場する『ザ・バットマン』未公開シーンの解説はこちらから。

『シャザム!』で描かれたアメリカの里親制度についての解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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