『ザ・ボーイズ』スターライト役エリン・モリアーティ「性暴力が蔓延っている」 妥協しない現実社会への眼差し | VG+ (バゴプラ)

『ザ・ボーイズ』スターライト役エリン・モリアーティ「性暴力が蔓延っている」 妥協しない現実社会への眼差し

© 2020 Amazon Studios, Prime Video

『ザ・ボーイズ』が取り組んだテーマ

シーズン2の更新を終えたAmazonプライムビデオの人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-)。腐敗したスーパーヒーローチーム“セブン”を通して、タブーなしで現実社会が抱える問題に切り込んでいくストーリーは大きな支持を得ている。

シーズン2では特にレイシズムやファシズム、SNSを通したポピュリズムにスポットライトが当てられたが、『ザ・ボーイズ』には、シーズン1から続く“性暴力”というテーマがある。シーズン2では、このテーマが中心に置かれたわけではないが、根底にはずっとそのテーマが存在し続けている。なぜなら、性暴力被害は加害者が罰を受けただけで終わるものではないからだ。

『ザ・ボーイズ』シーズン1では、エリン・モリアーティ演じるスターライトことアニーが、セブンの先輩であるディープから性暴力を受ける。アニーは、憧れだったヒーローチームに加わった途端に、ヒーローたちの腐った現実を知るのだった。

その後、アニーは性被害を告発し、ヒーローのスターライトとしても活動を続ける。腐った現実を「そういうもの」として受け入れないその姿は、先輩ヒーローたちにも影響を与える存在になっていく。

エリン・モリアーティが語る

そんなスターライト/アニーを演じたエリン・モリアーティが、『ザ・ボーイズ』でキミコ役を演じた福原かれんのYouTubeチャンネルに登場。2020年10月12日(月)に公開された動画ではファンからの質問に答える中で、「性被害を受けるアニーというキャラクターをどのように演じたのか」という質問に答えている。

この質問をしたファンは性暴力被害のサバイバーとしてエリン・モリアーティに対して、サバイバーたちの一人を正しく描き出したことに感謝を述べている。その上で、どのようにしてサバイバーの立場に立って演じたのか、と質問した。モリアーティはこの質問に謝意を表明し、以下のように回答している。

性被害の当事者を演じたのはこれが初めてではありませんでした。この番組 (『ザ・ボーイズ』) のストーリーラインの一つは、どれだけ性暴力が蔓延していて、どれだけの人が共犯関係にあり、隠蔽されているかということです。特にこの国では性暴力が蔓延っていて、被害者として堂々と告発することもできない。

この番組よりも前に、実在する性暴力被害者をモデルにした役を演じました。彼女は大学生の時にアメフトの選手たちに集団暴行を受け、その事実を公にしようとしました。しかし、そのアメフト部と大学には多額の資金があり、お金を失わず、不名誉や法的制裁も避けるために、メディアを通して彼女がその性行為を望んだのだと宣伝したんです。

無茶苦茶ですよね。でも実際にあった話で、調べれば出てきますよ。その人物を演じることになり、(状況を) 詳しく知っていくことはとても怖いことでした。なぜなら、感情的にもなるし、一瞬たりとも気は抜けないし、暴力を受けた人間への影響を表現する——その重みは私には分かるものではありません。だから、その役を演じるにあたって、非常に多くのリサーチをしました。

それから、『ザ・ボーイズ』に出演したんです。そこには性暴力に関するストーリーラインがありました。前の作品での経験と、私にとって膨大な量のリサーチに取り組むことで、誰も入りたくないであろう感情のスポットに入り込んでいきました。このストーリーラインは正しく演じなければならないと分かっていたので。

私がそうした経験をしていないということは、とても幸運なことです。でも、リサーチをしてその感情を知ろうとしただけでも、そうした経験をした人々への非常に大きなリスペクトと共感の念を抱きました。

MeTooムーブメントは素晴らしいものだと思いますが、まだやることはたくさんあります。そして、性暴力の被害を受けた人が、一人でも、私が正しいことをしたと言ってくれるなら、私にとってはそれが全てです。

質問者が「サバイバーたちの一人を正しく描き出した」と、エリン・モリアーティに感謝していたことに触れて、この談話を閉じている。

エリン・モリアーティが話の中で触れた性暴力を題材とした作品は、2017年3月に米Deadlineがモリアーティの出演を報じたFOX製作のスリラードラマを指していると思われる。この作品はまだ公開されていないが、そこでの経験が『ザ・ボーイズ』での演技に大きく影響を及ぼしたようだ。

「性暴力の被害を受けた人が、一人でも、私が正しいことをしたと言ってくれるなら、私にとってはそれが全てです」——演じる役だけでなく、現実に起きている被害に真摯に向き合うエリン・モリアーティ。作品として消費して終わるのではなく、一歩踏み込んで現実を直視することは、視聴者の私たちにも必要な姿勢だ。

福原かれんのYouTubeチャンネルでは、『ザ・ボーイズ』の出演者らをゲストに招いた動画などが公開されている。

Karen Fukuhara (YouTube)

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