『ロキ』シーズン2最終話をトムヒが語る
『ロキ』シーズン2は2023年9月から11月にかけて全6話が配信され、シーズン1と合わせたロキの二部作が一旦のフィナーレを迎えた。『ロキ』シーズン2では、シーズン1で解放されたタイムラインを巡って、ロキとメビウスらが混乱を収集するために様々なタイムラインへと乗り出す。そして迎えたラストはファンからも高い評価を受けている。
『ロキ』シーズン2の最終話では、ロキのセリフに登場した詩にも注目が集まった。その詩はロキを演じ、製作総指揮も務めたトム・ヒドルストン自身が引用を提案したものとされている。今回、そのトム・ヒドルストンが自らあのラストと詩の引用について語っている。その中身をチェックしてみよう。
なお、以下の内容は『ロキ』シーズン2最終話第6話の内容に関するネタバレを含むので、必ずDisney+で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ロキ』シーズン2最終話第6話の内容に関するネタバレを含みます。
注目集めるT・S・エリオット『四つの四重奏』
ドラマ『ロキ』シーズン2最終回の第6話では、ロキは在り続ける者と再び対峙。ここでロキは、T・S・エリオットの詩集『四つの四重奏』に収録されている「リトル・ギディング」から「死にゆく者と死に、死者と共に生まれる」という一節を引用する。
この詩の引用はロキを演じたトム・ヒドルストンによる提案だという。トム・ヒドルストンは、この後ロキがメビウスと出会ったシーズン1第1話に戻るという展開もT・S・エリオットの詩の内容を想起させるものになっているとも話している。
米マーベル公式では、『ロキ』シーズン2第6話の配信から10日が経過した11月20日にトム・ヒドルストンの新たなインタビューを公開。映画俳優組合のストライキが終結し、トム・ヒドルストンが改めてこのラストについて語っている。
マーベル公式は、トム・ヒドルストンがロキというキャラクターとストーリーのために過去の文学作品からインスピレーションを得て、その情熱を周囲に広めていたことを紹介している。トム・ヒドルストンは複数のクリエイティブ部門のヘッドに詩集を配って歩いており、それによってストーリー全体をより引き立てようとしていたという。トム・ヒドルストンの情熱がシーズン2のフィナーレの詩的な魅力を生み出したと言っても過言ではないだろう。
『四つの四重奏』を取り入れた意味
トム・ヒドルストンは、『ロキ』シーズン2フィナーレでロキが玉座に座り、力強い表情を見せるシーンについて、その日は土曜日で、撮影現場にいたのはトム・ヒドルストンのほか、監督、プロデューサー、脚本家、衣装デザイナー、プロダクションデザイナーだけだったと振り返っている。その上で、こう語っている。
私はただ、これを詩におけるパラグラフの終わりや、詩そのものの終わりであり、ほとんど音楽における作曲の終わりとして受け止めるために一拍おきました。それは、私がこのキャラクターを演じた全ての回と共鳴し、響き合う瞬間でした。
トム・ヒドルストン自身がこのラストシーンを非常に詩的に捉えていたことが分かる。トム・ヒドルストンは、この瞬間にオリジナルの6人のアベンジャーズのことや、ロキを演じてきた14年間についても考えていたと話しており、「満ち足りた気持ちでした」と振り返っている。
その上で、T・S・エリオットの詩の引用については、インタビュアーの「エリオットは時間や現実と向き合い、一方で存在を正当化するために物事を“正しく”理解しようとするロマンチックな努力にも多くの時間を割いています。その詩がシーズン2にどのような影響を与えたのでしょうか」という質問にこう答えている。
T・S・エリオットによる英文学の中でも、私が最も壮大な詩集だと思うのは『四つの四重奏』です。シーズン1の最後、撮影の最後の週あたりのことでした。カメラチームが撮影のセッティングをしている間、私たちは2020年のクリスマス直前の太陽の下、外で立っていました。
(プロデューサーの)ケヴィン・ライトとエリック・マーティンが「シーズン2、どう思う?」と聞いてきました。私は第四重奏曲「リトル・ギディング」の最後の一節を口にしていました。「私たちは探究をやめてはならない。そして私たちのすべての探究の終わりには、私たちが始めた場所に辿り着き、その場所について初めて知るだろう」。
ただそこに浮かんできたんです。私はエリックとケヴィンにこの言葉を宙に浮かべておいて、それが何を意味するのか考えてみてほしいと言いました。本格的にシーズン2の開発に入る前に、2人ともに詩集を渡しました。エリックには、これが規範だとは思わずに、どうなるかだけ見てほしい、君のイマジネーションの中でスパークするものがあるかどうかを見てほしいと伝えたんです。
シーズン1の撮影終盤の時点で、シーズン2のラストに繋がるT・S・エリオットの詩の一節が浮かんでいたことを明かしている。結局プロデューサー陣はこの詩からの引用を採用することにしたようだ。この一節に込められた意味については、トム・ヒドルストンは以下のように考察している。
時間・現実・悲哀・過去、そして——私がこうしてラベリングすることで矮小化してしまいますが——自分がどこにいたかを知るまでは自分がどこに行くのか知ることはないということについて書かれた、非常に美しく抽象的な文章です。
彼(T・S・エリオット)は第二次世界大戦の余波の中でこの作品を書きました。当時の異常な恐怖と集団的な苦難を理解するために書いたのだと私は思います。もちろん、この歴史的背景は抽象的なもので、必ずしも関係しているとは言えませんが、(この詩は)過去と和解し、現実の本質と向き合い理解しようとすることを扱っています。
他にも要素はあると思います。ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッド、カスラ・ファラハニ、そしてダン・デリーウといった優れた監督たちとよく話したもう一つの特別な一節が在ります。これも第四重奏曲「リトル・ギディング」の一節だったと思います。
「そして、あなたがそのためにここに来たと思っていたものはただの殻に過ぎず、それは意味の殻であり、目的が果たされた時に初めてその殻が割れる。目的などなかったか、目的はあなたの思っていた終わりを超え、そしてそれは達成していく過程で変化する。」
ロキの旅路
トム・ヒドルストンは、この一節をMCUの中で長い旅路を歩んできたロキの姿に重ね合わせたという。
この詩は非常に心に響きました。このキャラクター(ロキ)は『アベンジャーズ』の冒頭で地球に降り立ち、サミュエル・L・ジャクソン演じるニック・フューリーの目を見て「私はアスガルドのロキだ。私は大いなる目的を背負っている」と言います。
「あなたがそのためにここに来たと思っていたものはただの殻に過ぎず、それは意味の殻であり、目的が果たされた時に初めてその殻が割れる」——この考えは、シーズン1のメビウスとの会話でもそうでしたが、大いなる目的を担っているという彼の思い上がりは意味のない誤りであったと明らかになったことと似ています。
ロキは負けるために生まれてきました。ロキが負けることによって、他の人々がよりマシなバージョンの自分になれるんです。しかし、『ロキ』シーズン1を通して、メビウスとのつながり、シルヴィとのつながり、そしてTVAでの経験を通して彼は二度目のチャンスを与えられました。目的とは何かを考え直し、定義し直すチャンスをね。
トム・ヒドルストンは、目的と所属、そして過去との和解というロキにとってのテーマが、メビウスやシルヴィ、B-15にOB、レンスレイヤーといった他のキャラクター、延いてはTVAという組織にとっても試金石になったと話している。
ロキはかつてスーパーヒーローたちに敗れ、それによってヒーローたちが目的を達成できる、いわば“手段”としてのキャラクターだった。ストーリーテリング上も“負けること”がその役割だったのだ。だが、『ロキ』では、ロキは自分の目的とは何かということと向き合い直す中で、他のキャラクターたちにも影響を与えることになった。トム・ヒドルストンはTVAという組織もまた自分たちが慈悲深いと考えていたが、そうではなかったこと、目的の再定義と再建を迫られたことを指摘している。
確かにシーズン2のラストでは、ロキがタイムラインを司るユグドラシルになると共に、TVAの役割はそれを脅かしうる在り続ける者の変異体を追う組織に生まれ変わった。メビウスもまたTVAを離れて時の流れを感じてみるという道を選んだ。ロキの変化とTVAの変化、そしてメビウスたちの変化は同期していたように思える。
最後にトム・ヒドルストンは、これらの物語について以下のように総括している。
全てがライブでした。固定されていたものは何もありません。全てが生きていて、ディスカッションの対象でした。皆がどこからでもアイデアを得ることができました。ケヴィン・ライトとエリック・マーティン、そして4人の監督たちが作り上げた環境のおかげで、皆がどこからでもインスパイアされるようなセットになっていました。そのインスピレーションはどこかへ旅立っていき、また私たちのイマジネーションを高めてくれるでしょう。
ドラマ『ロキ』はシーズン1とシーズン2がディズニープラスで独占配信中。
Source
Marvel.com
ドラマ『ロキ』シーズン1のコレクターズ・エディション スチールブックは12月22日(金)発売で予約受付中。
『ロキ』シーズン2のオリジナルサウンドトラックはVol.1が配信中。
ダニエル・キブルスミス&ジャン・バザルデュアのコミック『ロキ:地球に落ちて来た神』(吉川悠 訳) は発売中。
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