『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話はどうなった?
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』は、Netflixで配信されたドラマ『デアデビル』(2015-2018) の続編でありながら、MCUに合流した重要な作品。ニューヨークで戦う弁護士マット・マードックの姿を描きながら、MCUのキャラクター達がクロスオーバーする作風は高い評価を得ている。
今回は、全9話で構成される『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1より、終盤戦へと突入する第7話についてネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むので、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話ネタバレ解説
戦うしかないマット
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話の冒頭では、ウィルソン・フィスクがマット・マードックに言った、デアデビルが活動を再開すれば報いを受けるという言葉が回想で紹介される。マットは前回、ミューズを止めるためについにデアデビルのスーツを着て活動を再開してしまっている。
フィスクはアンジェラがデアデビルという名のヴィジランテに助けられたという報告を受け、デアデビルの帰還を知る。ポイントになるのは、かつて『デアデビル』でフィスクが偽デアデビルを演じさせたポインデクスターが第1話で逮捕され収監されていることだ。その前提があるため、フィスクはこのデアデビルがマットである可能性が限りなく高いと予想できるのだ。
第7話では、ヘザーがマットの傷に気づきながら、シャワールームで絡み合うシーンが描かれる。原作コミックではマットにはジャッキーという息子がいるのだが、“デアデビルの息子”を登場させるならそろそろ頃合いだろうか。
しかし、優秀なカウンセラーであるヘザーは、仕事をしていたというマットの嘘を見抜いていた。マットは観念したのか、かつて全く異なる生活を送っていた、今の生活は偽物だと話し、ヘザーは、マットが長い間トラウマを抑圧しており、善良な部分が壊れるかもしれないと警鐘を鳴らすのだった。
これに対し、マットは「だから戦ってる」と答える。ヘザーからすれば、マットに必要なのは癒しのプロセスだったが、マットは戦うことでしか過去をプロセスすることができない。「悪魔」の名を冠するキャラクターだけあって、やはりマットはかなり精神的に困難さを抱えるキャラクターだと言える。
マットはいわば、戦いをなるべく避けようとするサム・ウィルソン、サムと共に暴力よりも人に寄り添う償いを選んだバッキー・バーンズの逆の立ち位置にいると言える。そんなマットにも、今は愛するヘザーがいて、「愛してる」という言葉の後に心臓音を感じ、そこに嘘はないということが示されている。ヘザーは偽物ではないというマットの確信は事実だったのだ。
執着し合う二人
一方、マットがデアデビルとして復活した件はチェリーにバレていた。チェリーは第1話でデアデビルのマスクを外したマットの姿を見ている。マットはまずデアデビルとして動き、次に警察を動かす考えだったようで、ミューズ確保のためにチェリーに協力を要請。しかし、チェリーはそれを拒否し、また人生をぶち壊したいなら好きにしろと言って立ち去るのだった。
マットは「君が現役の頃、こういう時は私を呼んだ」と言い返すが、この「僕」とはマットのことだろうか、それともデアデビルのことだろうか。後者だとすれば、デアデビルとチェリーは、バットマンとジェームズ・ゴードンのような関係だった時期があったのかもしれない。
フィスクはデアデビル復活に動揺を隠せず、デアデビルによって組織を壊滅させられた『デアデビル』シーズン1の話を簡単にまとめてくれている。ちなみにドラマ『エコー』(2024) では、指パッチン後もデアデビルはキングピンの組織を監視し、取引を妨害するなど積極的に行動していた様子が描かれている。
キングピンはデアデビルを憎み、デアデビルは執拗にキングピンの組織を追っていた。どちらも互いに異常な執着を持つ関係だと言える。それでも、キャッシュマンはそれは過去のことであり、デアデビルの登場は街にとっては良いことだと助言するのだった。
フィスクは独特な考え方を評価してキャッシュマンを裏社会から採用したというが、警告を聞き入れず、法を犯す者は誰であろうと許さないと断言する。ここにフィスクのリーダーとしての弱点がある。重要な分岐点、ここぞというところで部下の意見を取り入れることができないのだ。
デアデビル式ヴィランの作り方
マットがアンジェラに事情を聞く一方、キムとチェリーは61番線の調査に入っていた。前回チェリーがミューズの情報を仕入れた警察時代の伝手というのはキムのことだったのだろうか。
ミューズのアジトはホラーテイストで映し出され、そこにミューズは顔の絵を描いたスケッチに興奮していたというアンジェラの証言が加わる。前回いきなりデアデビルに倒されたミューズだが、猟奇的な側面が強調して描かれることで、戦闘力以上に野放しにできない危険な存在であることが示されているのだ。
一方、第5話で銀行強盗計画に失敗したルカは、ヴァネッサ・フィスクに変革を求める。ヴァネッサがトップに立っていた時はよかったと。ヴァネッサは、ウィルソン・フィスクが市長になってからリスクとなるような行動を抑えるよう求められていた。自然とヴァネッサが裏社会を仕切ることができなくなり、機能不全に陥ったのだろう。
ヘザーの方は、第2話の著書のサイン会で相談を受けた青年のカウンセリングに取り組んでいる。青年は小さい頃外に出ると親から赤い風船の束を渡されるという異様な家庭で育ち、アーティストになりたかったが親が求める通りにテコンドーに取り組んでいたという。
このカウンセリングと並行し、キム刑事がフィスクに、アジトに残されていた特殊なキャンバスからバスティアン・クーパーがミューズの正体の容疑者だという報告がなされる。そして、徐々にバスティアンがヘザーのクライアントの青年だということが分かっていく。主人公の大切な人にヴィランが迫る恐怖の展開だ。
非自発的入院を繰り返していたというバスティアンは、かつてテコンドーの選手で、故にデアデビルと互角の戦いを繰り広げることができたようだ。リー・スクジという師匠を持っていたが、リーは16歳のバスティアンを教え始めてから3ヶ月後に遺体で発見。捜査は行われなかったという。
「非常に疑わしいが証拠にはならない」というこの状況は、法を超えた対応が必要になる条件を満たしている。だが、今回の件がユニークなのは、デアデビルにとっても市長となったフィスクにとっても対応に乗り出す動機となるという点だ。
バスティアンは鼻血で絵を描き、ヘザーに自分がミューズであることを悟らせる。若い頃のコーチを憎み、カウンセラーに威圧的な態度を取るというのはドラマ『デアデビル』シーズン3のポインデクスターと同じ展開だ。
ブルズアイことポインデクスターはシーズン3第5話を丸々使って幼少期のトラウマが描かれた。フィスクは資料を通してポインデクスターの過去をバーチャルに目撃しており、今回のミューズに関する報告を聞いた時もポインデクスターのことを思い出したのではないだろうか。
ポインデクスターは1エピソードを使ってオリジンが描かれたこともあってか、その後は人気キャラへと成長していった。『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話でも、ライトバージョンではあるが、トラウマとカウンセリングを通した“ヴィランの作り方”を踏襲したものと考えられる。
ミューズ戦再び
ヘザーがバスティアンに襲われる中、第6話でフィスクが結成した警察の“ギャング”による特別部隊が捜査を開始。入れ替わりでデアデビルがミューズのアジトを捜査し、手触りでヘザーの絵が大量に置かれていることに気が付く。
デアデビルの姿とヘザーの絵を見たパウエル巡査が特別部隊として動く一方、ミューズのコスチュームを着たバスティアンはヘザーの採血を開始。ミューズはサノスのような大ヴィランではなく、血を抜くという細かい作業を行うヴィランだが、猟奇性を際立たせることで、十分に怖さを演出することができている。
そんな中、現場付近に警察が到着。銀行強盗事件といい、動きは良さそう。ヘザーがミューズに「マスクを着ける奴らは腰抜け」と罵ったところでデアデビルが到着。同じようにマスクを着けていても誰かを助けるために戦う者もいる、ということを証明するかのように。
それにしても、同じヴィランと連戦というのも珍しい。シーズン1だけで全9話、シーズン2の制作も決定している『デアデビル:ボーン・アゲイン』は、時間を使って一人のヴィランを追うことができるのだろう。そこに常にフィスクが絡むという構図になっているようだ。
ミューズによってヘザーが狙われる緊張感は見事。だが、最後にミューズを射殺したのはヘザーだった。ヘザーは大量出血で意識を失うが、特別部隊が到着した時には、デアデビルは手当てをして去っていた。ミューズは死亡し、この件は一件落着となった……かに思えた。
ラストの意味は?
フィスクは市長自ら現場検証へ。ノース巡査部長から犯人以外にも誰かがいたと考えられると報告されるが、フィスクはその報告を隠蔽し、ミューズ退治の手柄を特別部隊のものにしてしまう。だが、BBレポートの声は現場でデアデビルを見たという声を紹介している。
ダニエルが「デアデビルがミューズを退治」と報じたBBに大物との関わりを餌に脅しをかける一方、ヘザーはマットに自分がミューズを撃ったこと、デアデビルが自分の名前を呼んだことを明かす。だが、テレビから流れるニュースは、特別部隊がミューズを射殺したという二重の嘘を報じていた。
まず、マスクのヒーローが自分の知っている人かもしれないという展開は、「スパイダーマン」シリーズを思わせるクラシックなヒーローもののポイントを押さえている。そして、当事者が知る真実と異なる内容がメディアと行政から発表されるという展開は、シーズン1のクライマックスに向けてスリラーの要素が増していく上手い演出になっている。
フィスクは記者会見で「マスクマンはもう脅威ではない」と、敢えて「マスク」を強調してヴィジランテの印象操作を行っている。そこにはスパイダーマンやローニン、ソーズマンも含まれるのだろう。パウエルがミューズのマスクを掲げているのが印象的だ。
一方、ヴァネッサはルカに「彼」がウィザーズ通り32に一人でいるとテキストメッセージを送る。そこではフィスクが食事を摂っており、ルカは背後からフィスクの射殺を試みるが、隠れていたキャッシュマンに射殺されるのだった。
フィスクは、キャッシュマンに感謝を述べると、舌平目のムニエルを持って帰って欲しいかヴァネッサに電話するよう頼み、満足げなフィスクの表情を捉えて『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話は幕を閉じる。
ラストで流れている曲はThe Cryin’ Shames「Please Stay」(1966)。「前みたいに、いなくなってしまうの?」「今回は違う、だから残って、行かないで」と歌われるこの曲は、一度はフィスクに去られたヴァネッサの立場を表現した曲だろうか。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話ネタバレ考察&感想
新しい方程式
『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話は第6話と同じくデヴィッド・ボイド監督が指揮し、この2話でミューズに関する二部作が完結したと考えていいだろう。ミューズという猟奇的なヴィランがいつの間にか主人公のパートナーから強い影響を受けていたという展開は、これまで十分にニューヨークの人々の有機的な絡み合いを見せてきた分、強引にならずに済んでいる。
ホワイト・タイガーと弁護士マードック、ミューズとデアデビルなど、ヴィジランテ/ヴィランとの交差を通してマットの物語は前へ進んでいく。だが、その背後には市長となったウィルソン・フィスクの存在があり、個別のケースが終了してもマットとフィスクの戦いは続いていくという構図となっている。
キングピンのような大物ヴィランを置いておいて、より小さめのヴィランとのストーリーを2時間ほどで完結させるというのはMCUが映画で取り組んできたモデルとも共通する。ドラマで長い時間をかけ、ニューヨークという限定的な舞台を設定しているところが『デアデビル:ボーン・アゲイン』の特徴で、この構成は今のところ成功していると言える。政治と個人の話をつなぐという観点からも優れた構成だ。
ヴァネッサは裏切った?
『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話のラストは、ヴァネッサともキャッシュマンとも距離ができていそうなフィスクの状況をうまく利用する“引っ掛け”だった。ルカはフィスクの暗殺に失敗したが、ルカは嵌められたのだろうか。
ダニエルはBBに、フィスクが市長室にいない理由を「個人的な用事」と語っていた。実際にはフィスクはレストランで食事をしていただけで、これは「用事」に当たらないと考えられる。ということは、フィスクはルカを誘き出すためにあのレストランに一人でいたのだろう。
問題は、ヴァネッサがフィスクと組んでルカ暗殺を仕組んだのか、それともルカと組んでフィスク暗殺を試みたのかということだ。ルカは埠頭のカージャックや銀行強盗などでしくじっており、ヴァネッサとフィスクにとっては野放しにできない人物だったはずだ。
一方、フィスクが暗殺されたからといってヴァネッサに旨味は少ない(殺さずとも好き勝手にやればよい)が、もし前回フィスクがアダムを殺したことをヴァネッサが知っていたとすれば、フィスクへの復讐という線もあり得る。あるいは、フィスクなら生き延びると分かっていてルカを送り込んだか。
フィスクは、前回のラストで自分より強い相手とも武器があれば戦えるとアダムに教えていた。第7話でもルカは武器を持ってフィスクに挑んだが、それでも敗れないところがキングピンのキングピンたる所以である。
もしヴァネッサがフィスクを裏切ったのであれば、殺されたルカの携帯からはヴァネッサのメッセージが見つかるだろう。ヴァネッサはフィスクにとっての唯一の弱点であり、ヴァネッサの安全は、フィスクがデアデビル=マット・マードックという事実を知っていながら黙っている唯一の理由である。
ヴァネッサとフィスクの関係の変化は、すなわちフィスクとマットの関係の変化でもある。それにしてもフィスク夫妻の夫婦仲に、マットらヴィジランテの活動、延いてはニューヨーク市民の生活が委ねられてしまうとは……。
キングピン復権を印象付けた『デアデビル:ボーン・アゲイン』第7話。残り2話で物語はどのように動くのか、配信を楽しみに待とう。
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』はディズニープラスで独占配信中。
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