第5話ネタバレ解説&考察『デアデビル:ボーン・アゲイン』神回! 聖パトリックデーを舞台にしたNYの一日 | VG+ (バゴプラ)

第5話ネタバレ解説&考察『デアデビル:ボーン・アゲイン』神回! 聖パトリックデーを舞台にしたNYの一日

©️2025 Marvel

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話はどうなった?

MCUドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』は弁護士のマット・マードックを主人公に据えたドラマシリーズ。Netflixで配信された『デアデビル』(2015-2018) 後のマットの物語を新たに描き出す。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1は全9話で構成される。今回は、その折り返しの回にあたる第5話をネタバレありで解説&考察していこう。第6話と同日配信となった今回のエピソードでは、どんな展開が待っていたのだろうか。以下の内容は重大なネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話ネタバレ解説

聖パトリックデーとは?

ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話は第4話と同じくジェフリー・ナックマノフが監督を務める。第2話と第3話はマイケル・クエスタ監督が指揮し、二つのエピソードを合わせて一本の映画のようになっていたが、第5話は意外にもそれだけで短編映画として成立するような仕上がりになっていた。

直近のマットは、弁護したホワイト・タイガーことヘクター・アヤラの死と、貧窮し窃盗に手を染めたリロイ・ブラッドフォードの現実に直面し、弁護士としての限界を感じていると考えられる。デアデビルとしての、ヴィジランテとしての活動を辞めたマットだったが、これらに加えてパニッシャーことフランク・キャッスルとの再会を経て、揺らいでいることは確かだろう。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話の冒頭では、聖パトリックデーを祝うニューヨークの街が映し出される。聖パトリックデーはアイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックの命日である3月17日に祝われる祭日で、アメリカでは緑のものを身につけたり、ビールを飲んで祝う習慣がある。

聖パトリックデーは祝日ではないため民間の人々も働くが、この日は皆、緑のものを身につけて仕事に出かける。ただし、アイルランド系の人々のためのお祭りではあるが、根底にあるのはカトリックの価値観であるため、この習慣に乗らない人々もいる。

ユスフ登場

そして、『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話には、マットが訪れた銀行でユスフ・カーンが登場。ユスフはドラマ『ミズ・マーベル』(2022) に登場したミズ・マーベルことカマラ・カーンの父で、映画『マーベルズ』(2023) にも登場した。

『マーベルズ』の序盤でニュージャージーの家をボロボロにされたカーンファミリーは、同作のラストではルイジアナ州にあるランボー家に引っ越していた。だが、『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話ではユスフはニューヨークで働いており、ニュージャージーに戻ったことが示されている。ニューヨークの隣に位置するニュージャージー州のジャージーシティは、ニューヨークで働く人々のベッドタウンでもある。

ちなみに、ディズニープラスの「MCUコンプリート時系列順」の項を見ると、『デアデビル:ボーン・アゲイン』は『マーベルズ』『デッドプール&ウルヴァリン』『アガサ・オール・アロング』よりも後に位置しており、本作はMCUで最新の時系列ということになっている。

『アガサ』が2026年10月以降の出来事なので、『デアデビル:ボーン・アゲイン』は2027年以降が舞台と予想できる。第5話は聖パトリックデーが舞台なので、2027年3月17日が舞台だと仮定しておこう。

前回マットはビジネスパートナーのキルスティンから事務所が資金難に陥っていると言われていた。第5話では融資の話し合いをしに銀行へ来たのだが、この展開はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) でウィルソン家が銀行に融資の申請に行ったことを思い出させる。有能なヒーローであっても銀行との話し合いは人並みに行わなければならず、この辺りは登場人物に親近感が湧く演出になっている。

カマラはリクルート中?

ニューヨーク相互銀行の支店長補佐として登場したユスフは、緑のアイテムを身につけていないマットに気づくと、「妖精につねられるかも」と告げる。アイルランドの妖精は聖パトリックデーで緑のものを身につけていない人をつねってもよいとされているからだ。

ユスフは、「妖精」のところは英語で「レプリカン」と言っている。レプリカンはアイルランド民謡の妖精で、『ミズ・マーベル』ではアラブ文化における妖精の「ジン」が紹介されたが、ムスリムのユスフは異文化の妖精も受け入れる心の広さを見せている。

また、ユスフはカマラが友達を訪ねてカリフォルニアへ行っていると明かす。カマラは『マーベルズ』のラストでニューヨークにいると思われるケイト・ビショップを新チームにリクルートしていたが、“アントマンの娘(キャシー)”も誘うつもりだと言っていた。「アントマン」シリーズの舞台はカリフォルニア州サンフランシスコであり、カマラがリクルートを進めていることが示唆されている。

マットはジャージーシティを「ホーボーケンより良い」と語っているが、ホーボーケンはジャージーシティの北東にある街だ。そしてユスフは「ジャージーシティの地元のヒーロー」としてミズ・マーベルを挙げる。ちなみにユスフは娘のカマラがミズ・マーベルであることを知っている。

だが、マットは意外にもミズ・マーベルを知らないという。確かに活躍したのはニュージャージー州内と宇宙空間くらいで、まだ全国区のヒーローではないのだろう。

クラシックだが楽しいクライムドラマ展開に

マットは融資の申請に際して、弱い立場の者の側に立つ弁護士の役割は大きいし必要とされていると語る。これが弁護士としての大義だ。非常に説得力はあるが、もし、それでも人々を救えないとしたら……。今のマットには弁護士としての大義がある分、その厄介な現実だ。

マットは融資を断られて銀行を後にするが、その銀行を狙う銀行強盗が登場。『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話は銀行強盗というクラシックな題材でデアデビルの戦いを描く印象的なエピソードだ。

強盗のリーダー格の人物は第1話と第3話にも登場したデヴリン。「180万ドル稼いでルカに絡むクズを追い払う」と発言している。ルカとはヴァネッサの会合に出席していたジャージの人物で、第3話ではキャッシュマンがルカに180万ドルをヴィクターに支払うよう指示していた。デヴリンはルカの部下だ。

カラフルなマスクを被った強盗たちは銀行を制圧。銀行の外からその音を聞き取ったマットが銀行に舞い戻ってわざと人質になることで第5話の舞台は整う。古典的な銀行強盗シーケンスだが、その空間にマット/デアデビルが放り込まれているという状況によってむしろワクワク度が増す。

人質交渉の緊張感

外にはニューヨーク市警が到着して銀行を包囲。第1話でチェリーと酒を飲んでいたアンジー・キム刑事がデヴリンとの交渉に挑む。主導権を握るマニュアル通りの交渉術を繰り広げるキムと、それを見透かして対処するデヴリンのせめぎ合いも緊張感があり、優れたクライムドラマに仕上がっている。

銀行の中では、たまたま支店長が留守だったばかりに支店長補佐のユスフが金庫を開ける役に駆り出されることに。だがユスフは金庫の番号を知らず窮地に立たされる。そこで立ち上がったのはもちろんマットだ。たとえ融資を断られても、良い人だったユスフのために動く。だからマットはヒーローなのだ。

マットが“弱者”とみなされたのか、犯人から解放されそうになる場面も見どころの一つ。普通なら解放されて嬉しいところだが、ここにはマットが残らないといけないという認識が視聴者とも共有できているため、人質交換の交渉は緊張感あふれるものになっている。

この人質交渉の会話の中でマードック家がアイルランド系であることが指摘されている。演じるチャーリー・コックス自身もアイルランド系とスコットランド系を祖先に持つ。また、緑マスクは盲目で孤児というマットの背景について「ディケンズの小説みたいだ」と言っているが、これはイングランド出身の小説家チャールズ・ディケンズのこと。今回はやたらと固有名詞が多い。

人質になった客の一人が名前をあげる「メシエ」はホッケーの殿堂入りを果たしたマーク・メシエのこと。この人物がサインをもらったという1994年はメシエはニューヨーク・レンジャースに所属していた。そして「レンジャース、ジェッツ、メッツ」と続け、それぞれNHL、NFL、MLBのニューヨークフランチャイズのチームを並べている。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』は細かいやり取りの中でニューヨークに生きる人々の雰囲気を醸し出すのが絶妙に巧い。

アイリッシュの多様性

金庫が開けられないユスフが時間稼ぎをする間、マットはトイレに行くフリをして見張りを倒し、さらにユスフの見張りをも倒して金庫破りに挑戦する。この時点でユスフにはマットがただ者ではないことはバレているだろう。

だが、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) でも窓の外から投げ入れられたレンガを後ろ向きでキャッチしてピーターらを驚かせたこともある。案外「すごい人」という印象で終わるのかもしれない。

ダイアル式ロックの音を聞いて金庫を開けようとするマットに、ユスフは「カマラにあげた貯金箱とはわけがちがう」と娘の名前を出している。冒頭の面談に続いてカマラの名前を出したことで、マットもカマラの名前を覚えることになる。にしてもユスフは娘が大好きなようだ。

マットは金庫を開くことに成功。「超凄腕の弁護士だ(very good lawyer)」と言いデアデビルのテーマが流れるシーンは鳥肌もの。マスクなしでもここまでやれるのがマット・マードックだ。

キムと交渉するデヴリンは、アイリッシュだがプロテスタントであり、聖パトリックデーを祝わないという。聖パトリックデーはカトリック発の祭日だからだ。「ユダヤ教徒にとってのクリスマスのようなもの」とは、クリスマスはキリスト教の祝日で、ユダヤ教には同じ時期に「ハヌカ」という祭りがある。ムスリムのユスフは聖パトリックデーに合わせていたが、アイリッシュでも一枚岩ではないということが示す演出だ。

デヴリンにとっては聖パトリックデーもただの平日。つまりに強盗という仕事をこなす一日に過ぎない。そして、交渉の一環でキムが謎のアイリッシュジョークを披露している間、マットとユスフは犯人が目的としている貸金庫探しに挑む。

この時マットは「幼い頃に父が死んで、母は大人になって会った」と話している。ドラマ『デアデビル』(2015-2018) では、マットの父はボクサーだったが八百長試合を放棄して殺されており、シーズン3ではマットは生き別れていた母と再会している。

ストリートに戻ったマット

ヨセフはアラーに祈ると正解の貸し金庫を見つけ、その中に入っていたのは大きなダイヤモンドだった。マットは警察の突入準備を進める声を聞きつけ、ロビーへと戻る。マットは緑のマスクを被った宝石の小袋をデヴリンにダイヤモンドを投げると同時にスワットが突入する。

スモークの中でマットもこっそり強盗を排除するも、デヴリンは警察に変装して逃走。宝石の袋は人質のふりをしていた仲間に手渡された。しかし、マットは仲間に宝石を渡す際に「ルカに渡せ」と言ったデヴリンの声を聞いており、その靴の音も覚えていた。これで「ルカ」という人物の名前もインプットされたはずだ。

銀行を出た後、マットは路地でデヴリンを強襲。銀行の階段で戦った強盗の赤いマスクを持ってきており、それを被ってステッキを使い戦っている。もちろんマットはマスクが赤いと認識していたわけではないだろう。それでも、マットがもう一度デアデビルになる第一段階としては抜群の演出だ。

第2話ラストの腕折りに続いて、またも目を背けたくなる足の折り方でデヴリンを圧倒したマット。同時に、人質に紛れ込んでいたデヴリンの仲間が宝石袋の中身が飴玉であったことを知り、勝負あり。マット・マードックの完全勝利だ。

この飴玉はユスフのデスクに置かれていたもので、冒頭マットは飴を断っていたが実はもらっていたのだろうか、飴と宝石をすり替えて強盗に渡していたのである。マットはユスフと再会し、ユスフは融資はできないが、事務所が潤う方法を一緒に考えようとマットを夕食に招待する。

ユスフがカマラの名前を出したところでマットが「有名なカマラ」と言うのは、これでその名前を聞くのが3度だからだ。これでマットはカマラのことをすっかり覚えたはず。ニューヨークとニュージャージーのヒーローコラボに期待したい。

マットが飴玉をもらって立ち去ると、ユスフはデスクに置いていた飴玉の山の中に宝石を見つける。ユスフの驚く表情を映してデアデビルのテーマが流れる完璧なラスト。まるで一本の短編映画を観たかのようだった。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話ネタバレ考察&感想

マットの挫折と成功体験

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話はキングピンことウィルソン・フィスクが登場しない回で、マットの1日というかわずか数時間の出来事を描いた回だった。トータルの時間も50分以下で、他のエピソードよりもまとまりのある回でもあった。

こんな「マットの1日」短編ならいくらでも作れるのではないかと期待してしまうほど、“銀行強盗とデアデビル”の食い合わせは良かった。どんな事件に巻き込まれても問題解決に導くマットの姿が想像できた。

一方で、ジェフリー・ナックマノフが連続で監督を務めた第4話と第5話には明確な連続性もあった。それは、マットを弁護士として解決できない問題に直面させるというテーマが一貫していた点だ。

マットは第2話と第3話でヘクターを無罪に導いたがラストでヘクターは殺されてしまった。第4話ではリロイの服役を3分の1まで短縮したが、貧窮するリロイにはそれほど意味を持たなかった。弁護士としての仕事では世の中を変えることができない……そこに来て今回の銀行強盗だ。

善い弁護士であることは融資の条件にならず、事件の現場では弁護士の腕はほとんど役に立たない。マットが強盗事件を解決に導いた手段は、ほとんどがクライムファイターとしてのスキルだった。

合法的な手段の挫折と、実力行使によるストリートでの成功体験、そしてパニッシャーことフランク・キャッスルの呼びかけ。マットは着実にデアデビルとしてもう一度生まれ直す道を歩んでいる。

MCUとニューヨークを繋ぐ作品

それに第5話は『ミズ・マーベル』からユスフ・カーンを登場させたユニバース展開が楽しかった。ただのカメオではなく、第5話のゲストとして中心的な役割を果たした。スパイダーマンやシー・ハルク、それにユスフと、マットは何かとコラボの相性が良い気もする。相手の良さを引き出す何かがあるのだろうか。

また、相変わらずニューヨークの街並みの映像も美しく、ユスフも含めて様々な人々がこの街に生きているということを毎度視聴者に刷り込んでいく巧い演出になっている。デヴリンにキム刑事ら、様々な人種の様々な宗教の様々なジェンダーの人々が住むニューヨークの複雑さと、それに対する誇りが感じられる。

では、第5話と同日配信となった第6話ではどんな展開が待っていたのだろうか。次の記事では第6話を解説&考察しよう。

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第6話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第4話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

これまでの『デアデビル』でデアデビルの正体を知っている人物のまとめはこちらの記事で。

『キャプテン・アメリカ:BNW』と『デアデビル:ボーン・アゲイン』までのMCU時系列まとめはこちらから。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』の配信スケジュールはこちらから。

ドラマ『エコー』最終回のネタバレ解説はこちらから。

 

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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