第4話ネタバレ解説&考察『デアデビル:ボーン・アゲイン』マスクと絵画の意味は? アノ人登場で急展開 | VG+ (バゴプラ)

第4話ネタバレ解説&考察『デアデビル:ボーン・アゲイン』マスクと絵画の意味は? アノ人登場で急展開

©️2025 Marvel

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話はどうなった?

2025年3月から配信を開始したMCUドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』は、ABC制作でNetflixで配信されたドラマ『デアデビル』(2015-2018) の正統な続編として制作された作品だ。チャーリー・コックス演じるマット・マードックと、ヴィンセント・ドノフリオ演じるウィルソン・フィスクの物語が再び描かれる。

今回は、シーズン1全9話の中盤へと入っていく『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話についてネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は重大なネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話ネタバレ解説

新たなホワイト・タイガー?

ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』の第2話と第3話では、ホワイト・タイガーことヘクター・アヤラの裁判が描かれた。両エピソードはマイケル・クエスタが監督を務めており、二つのエピソードを通して一本の映画を観たような満足感があった。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話を指揮したのはジェフリー・ナックマノフ。ローランド・エメリッヒ監督と共に映画『デイ・アフター・トゥモロー』の共同脚本を務めたことで知られ、前話のマイケル・クエスタ監督と同じくドラマ『HOMELAND』(2011-2020) で監督を務め、『HOSTAGES ホステージ』(2013-2014) では企画・製作総指揮・監督・脚本を手がけた。

なお、『デアデビル:ボーン・アゲイン』は第5話もジェフリー・ナックマノフが監督を務める。今回も第4話と第5話で一本の作品のようになっているのかもしれない。また、第5話と第6話は同日に配信される。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話の冒頭では、前回ラストで無罪を勝ち取りながらも射殺されたヘクター・アヤラの遺留品が整理される。その中にはホワイト・タイガーにスーパーパワーをもたらすアミュレットも。この遺留品はマットからヘクターの姪アンジェラに渡される。

クレジットを見るとアンジェラを演じたのはカミラ・ロドリゲスで、キャラクターのフルネームはアンジェラ・デル・トロとなっている。アンジェラ・デル・トロは原作コミックで4代目ホワイト・タイガーになる人物で、「デアデビル」のコミックでデビューしたキャラクターだ。

アンジェラがヘクターの姪というのも原作コミックと同じ設定であり、アミュレットを引き継いだことから今後アンジェラ版のホワイト・タイガーが登場する布石が置かれたようだ。コミックのアンジェラ版ホワイト・タイガーはラテン系の女性ヒーローとして高い評価を受けている。カマラ・カーンら若手チームへの合流に期待しよう。

アンジェラは無罪になったおじが殺されたこと、その事件の捜査が進まないことに怒り、「こんなの公平じゃない」と涙を流す。マットにヘクター殺害犯への復讐の動機を与える場面だが、「犯人は見つかる、そう信じなきゃいけない」という言葉は、マットのカトリック教徒としての側面を感じさせる。

ミューズ登場

一方、地下鉄では人を運ぶ何者かの姿が。白いマスクに血の涙、そしてニット帽といういでたちは、この人物が原作コミックに登場するミューズであることを示している。ミューズは2016年に「デアデビル」のコミックに登場した比較的新しいキャラで、アートのために人を殺す猟奇的なヴィランだ。

原作コミックでも、ニューヨーク市長になったウィルソン・フィスクが反ヴィジランテ政策を進め、ミューズもこの流れに関わることになる。アートの要素がベースにあるキャラクターということで、『デアデビル:ボーン・アゲイン』では定期的に映し出されるキングピンやパニッシャーのグラフィティアートと関係があるのかもしれない。

クラブではBB・ユーリックがフィスクの部下のダニエルに酒を飲ませて情報を引き出している。ダニエルは翌日リサイクル関係のテック企業であるクリーングリーン社との会合があると言っているが、英語では「CleanGreen Haulers(運送会社)」となっているのでベースは運送会社であることが分かる。

どうやらフィスクはゴミを減らす事業に乗り出そうとしているようだ。ここでダニエルは、複数の団体が絡む埠頭から着手するから労働組合の懸念は大丈夫だとBBに情報を漏らしてしまっている。

その後、ダニエルが乗り込んだタクシーの窓を通り抜け、向かいの路地で逮捕されるリロイ・ブラッドフォードをワンショットで撮るカットがかっこいい。街で同時に様々な人々が絡む様々な事件が起きていることを強く印象付ける効果もある。

新たな仕事

デアデビルの角をこねくり回しているマットは、ビジネスパートナーのキルスティンから新たな案件に取り組むよう言われるが、「アソシエイトに頼もう」と答える。アソシエイトというのは法律事務所を運営するパートナー弁護士を補助する雇われ弁護士のことだ。

ちなみに『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022) では主人公ジェニファーのパラリーガルとしてニッキが活躍を見せたが、パラリーガルは法律事務所で事務を担う職業で、アソシエイトは弁護士としての仕事を担う。

暇そうなのに新しい案件をアソシエイトに頼もうとしているということは、今のマットは弁護士としてのモチベーションが湧いていないことを示している。法律で救った人物がすぐに殺されてしまったのだ。だが、キルスティンから事務所の残高に余裕がないと言われ、マットはリロイ・ブラッドフォードの弁護を請け負うことになる。

ウィルソン・フィスクとヴァネッサはヘザーとの夫婦カウンセリングで、フィスクが姿を消した間にヴァネッサが関係を持っていたアダムについて話し合う。ヴァネッサによるとアダムはアーティストだという。ドラマ『デアデビル』でフィスクと出会った時には画廊のオーナーだったヴァネッサは、フィスクにはないものに惹かれたのだ。

そしてヴァネッサは、繊維業界にいて家に帰らなかった父、それに気を病んだ母のことを初めて明かす。ヴァネッサにはヴァネッサの痛みがある。だが、フィスクはそれを知ろうとしなかったのである。

そしてフィスクはアダムと話し合ったことを認めるが、手は出していないと主張。ヴァネッサへの執着を見せるフィスクに、ヘザーは「赦しとは最高の愛であり、前に進む唯一の方法」という名言を与えつつ、ヴァネッサには二人きりでフィスクから暴力を受けていないかを確認。ヘザー、めちゃくちゃいいカウンセラーだ。

スクラルとラトビア

BBレポートが反市長、ヴィジランテに期待する街の声を紹介する一方、マットはリロイと面会。この被告がなかなか厄介で、これまでと違い無実ではない様子。店からポップコーンを盗んだのは事実のようだ。

ちなみに第4話で何度も言及される“ポップコーン”というのは、甘い味付けがされているフィドルファドルという商品名のポップコーンのこと。キャラメル味とバタートフィー味があり、両方甘いフレイバーのため後にリロイは「デザートが欲しかった」と話しているのだ。

リロイは目が見えないマットを揶揄する上に、今回の事件をスクラル人によるなりすましだと嘘をつく。ドラマ『シークレット・インベージョン』(2023) では、一部のスクラル人による侵略計画が明らかになり、当時のリットソン大統領が演説でスクラル人に宣戦布告。スクラル人を差別する下地ができている。

リロイは罪を認めて刑務所に入ることを極端に嫌がり、マットはおそらく検事と思われるソフィア・オゾラと求刑内容について交渉することに。ソフィアを演じたのはエリザベス・A・デイヴィス。ミュージカル『ワンス ダブリンの街角で』(2011) でトニー賞主演女優賞にノミネートされた経歴を持つ俳優だ。

ソフィアは35日の服役を持ちかけるが、マットはラトビアの文化の日くらいは寛容になって欲しいと懇願する。ちなみに『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話の舞台になった「Latvian Heritage Day」というのは架空の記念日で、この情報では時系列は特定できない。

マットは、蜂蜜が多く取れるラトビアの名物料理・ハニーケーキ(ハチミツケーキ)の匂いでソフィアがラトビア系であることを見抜いていた。マットはオゾラという苗字からも読み取れるとしているが、「ソフィア」の綴りもギリシャ語由来の「Sophia/Sofia」ではなく、スラブ系の「Sofija」となっている。

マットに気があるような素振りも見せるソフィアは、リロイに多くの前科があること、以前保護観察で観察官との面会をすっぽかしたことを指摘しつつも、結局10日の服役で同意する。保護観察は取れなかったが、元が35日だったことを考えればマットの敏腕ぶりが際立つ。

その帰りにマットは廊下でパウエル巡査と遭遇。マットはパウエルをわざと挑発し、ヘクター殺しを否定させて心拍数を確認。パウエルの心拍は乱れておらず、本当にヘクター殺しには関わっていないようだ。やっぱり心拍数で嘘を見抜けるというマットの能力は、クライムファイターとしては相当に便利だ。

それにしても、パウエルは祖父の代からの警察一族ということだが、何があって悪徳警官になってしまったのだろうか。マットは第2話ラストでパウエルをボコボコにしたことを踏まえて、「次はもっと大勢でかかってこい」と言い放つ。メンタル以外は完璧な理想の弁護士だ。

「出版の中心地」の意味

ウィルソン・フィスクはチームで埠頭を訪れ、ニューヨークを「金融や出版の中心地」と呼んでいる。出版社としてのマーベル・コミックスは前身のタイムリー・コミックスが1939年にニューヨークで設立された時からニューヨーク市を拠点にしている。

ゆえにマーベルではニューヨークを舞台にした作品が多く、スパイダーマンやデアデビルといったニューヨークのヒーローを生み出してきた。ちなみに映像部門のマーベル・スタジオの拠点はカリフォルニア州バーバンクにあり、流石にフィスクも映像関係はニューヨークの手柄にしていない。

フィスクはこの埠頭、レッド・フックをニューヨークの汚点として考えており、再開発を考えているようだ。誰が用意したのだろうか、埠頭に置かれていた模型には海沿いに二つの大きなビルが建っており、改革の象徴としたい思惑が窺える。

しかし、アドバイザーのシーラは、そんなに単純な話ではないと忠告。土地の測量や環境及び交通への影響に関する調査、建築許可の取得、それを行うための市議会での承認、市議会で議題にあげてもらうための市政監督官との交渉……。改革は一日にして成るものではないということをシーラがしっかり教えてくれている。

それに、キャッシュマンもレッド・フックの治安は問題だと進言。前回キャッシュマンはヴァネッサの指示でギャングのボス達と会ったが、一触即発の雰囲気だった。マットにキルスティンとチェリーがいるように、フィスクにも表と裏のアドバイザーがいるのは大きい。

アメリカとニューヨークの現実

マットは10日で刑務所を出られるとリロイに伝えるが、リロイは保護観察を取れなかったことに怒っている。リロイは前回拘禁中に生活保護の面談に行くことができず、保護を打ち切られたと明かす。ゴミから食べ物を漁り、物乞いをして生きてきたといい、少しの贅沢のためにキャラメルポップコーンを盗んだという。

貧困大国アメリカの現状がそこにはある。福祉と法システムの連携が取れておらず、最低限の尊厳も奪われて困窮状態に陥り、犯罪に手を染める。そこからなんとか抜け出そうとするが、法律家達は自分たちの理論で勝手な“最善”を押し付けてくる。そしてまた諦めの境地に陥る。負のスパイラルに陥ったリロイのような人もまた、法律が救えない社会の被害者なのだ。

フィスクは市長として、中学校の子ども達によるスターシップ「We Built This City(邦題:シスコはロックシティ)」(1985) の合唱を聴くシュールな時間を強制される。言わずと知れた1980年代を代表するポップソングで、「私たちがこの街を作った」と歌われている。フィスクが自分を「眠らない街」の市長と言ったのは、同曲の歌詞からの引用だ。

合唱の最中、BBレポートが「市長による組合潰し」をスクープ。ダニエルが酔って話した内容が記事になったのだ。BBレポートは動画だけでなくテキストメディアもあったらしい。

この記事の投稿時間は午前5時47分となっており、この後ダニエルが朝5時までクラブにいたと話していることを鑑みると、BB・ユーリックはクラブ帰りですぐに記事を出したようだ。おじのベンに負けないジャーナリズムを見せている。

スキャンダルを受けてシーラはクリーングリーン社との会合をキャンセル。フィスクはリークに激怒するが、ラトビア文化センターでのイベントに出席し、ラトビア語の「We Built This City」を聞かされる。「私はどこにいる?」といる場所まで分からなくなるほど市長職に翻弄されるフィスクの姿はシュールだ。

改革は遅々として進まず、内部にはリークした者がおり、職務といえば子ども達やラトビア系の人々が「私たちがこの街を作った」と歌うのを聞くばかり。そうしてウィルソン・フィスクの我慢は限界を迎える。

激怒したフィスクがリークしたものを必ず見つけ出すと宣言したところで、ダニエルは自分が原因であると名乗り出る。こういうのは早く名乗り出た方がいい。ダニエルはクビを受け入れるとし、その上で永遠の忠誠を誓い、遠くから支持し続けると宣言する。

この言葉で落ち着いたフィスクは、忠誠心と勇気は失うには惜しいとしてダニエルを赦す。この判断の背景には、「赦しとは最高の愛であり、前に進む唯一の方法」というヘザーのアドバイスもあったのかもしれない。しかし、フィスクがダニエルを赦した最大の理由はフィスクがダニエルの弱みを握り、操りやすくなったことにあるはずだ。

自分は大事な人に迷惑をかけたという罪悪感によって、人は鉄砲玉になり得る。高い忠誠心を持つ部下を手に入れられたことは、フィスクにとって怪我の功名だっただろう。しかし、「次ヘマをしたら終わり」と言ってしまったのはマネジメント的には良くない。萎縮し過ぎると、次のヘマを隠蔽したり誰かになすりつける不正が生まれてしまうからだ。

ニューヨークの街の外壁には「ミューズ」の名前や、ホワイト・タイガーの絵の下に描かれた「ヴィジランテの正義」という文字が確認できる。よく見ると「ミューズ」のサインはホワイト・タイガーの絵の右下に描かれており、この絵を描いたのがミューズだということが分かる。ミューズはヴィジランテの正義を主張する人物のようだ。

BBレポートではさらに反市長の市民の声が取り上げられる。BBは第3話ラストでフィスクがヘクターを絶対に許さないと発言したのを聞いており、直後にヘクターが死んだことから、フィスク市政に強い危機感を抱いているのかもしれない。しかしここまで反フィスクの姿勢を鮮明にしては、おじのベンのようにBBの身に危険が及ばないか心配だ。

フランク・キャッスルのこれまで

マットはヘクター射殺の現場で銃弾を発見。それにパニッシャーのロゴが刻印されていたことから、マットはパニッシャーことフランク・キャッスルを訪ねる。ジョン・バーンサル演じるフランクの6年ぶりの復活だ。

MCU版パニッシャーは『デアデビル』シーズン2で初登場。かつてイラクやアフガニスタンで従軍し、カンダハールでは汚れ仕事をやらされた。除隊して帰国すると妻と娘、息子が殺され、復讐のために自警活動をスタートさせた。

カトリックのバックグラウンドから殺しをしないデアデビルに対し、パニッシャーは司法を一切信用しておらず、容赦無く相手を殺す。家族が殺されたのはカンダハールでの仕事が絡んだ陰謀であり、裏切りによって全てを失ったが正義感は強く、それがフランクをヴィランでもヒーローでもないヴィジランテたらしめている。

『デアデビル』シーズン2では逮捕され、マット達が弁護。同じく獄中にいたウィルソン・フィスクと対立するもフィスクに脱獄を手助けしてもらった経緯もある。ドラマ『パニッシャー』シーズン1のラストではFBIとの取引で過去の記録が全て抹消された。

その後ニューヨークを離れて放浪していたが、シーズン2ではニューヨークに連れ戻され、最後にはニューヨークで新たにヴィジランテとしての活動をスタートさせている。だが、『デアデビル:ボーン・アゲイン』のフランクはヒゲも伸びっぱなしで落ち着きもなさそう。薬も服用していて精神状態は良くないようだ。これまでとは違う荒々しい感じが出ている。

罪と罰と悪魔の声

マットは今回の件がフランクとは無関係であることを確認しに来ていたが、フランクはパニッシャーの模倣犯がいることを知っているらしい。これまでマットは警官達が入れていたパニッシャーロゴのタトゥーを見ることができなかったが、今回は薬莢の手触りを通してパニッシャーロゴを発見している。

今回マットは弁護士としての姿でフランクと会っているがフランクはマットがデアデビルであることを知っている様子。マットをデアデビルを呼ぶときの「レッド」という愛称で呼んでいる。

デアデビルの正体を知っている人物についてはこちらの記事にまとめたが、フランクは『デアデビル』シーズン2のラストでマスクを外した状態で戦うデアデビルの姿をライフルのスコープ越しに見ている。暗い環境だったので顔を見たかどうかは不明だったが、今回それ以来の再会を果たしてフランクの認識がハッキリした。

自分は従軍していたとマウントをとるフランクだが、マットが「被害者だったか」と皮肉ると激怒。活動したければ活動しろとマットを焚き付ける。自警活動をしたいがビビっていて、許可が欲しいから会いにきたのだろうと挑発するのだ。

フォギーを失い、カレンも去った今のマットにとって、フランクはデアデビルとしての自分を焚き付ける唯一の存在だ。本作でマットの正体を知った元刑事のチェリーは今のマットが好きだと言ってくれていた。だが、マットはヘクターもリロイも法律で救うことができなかった。

フランクは真の意味で人を救えていないマットが抱える罪悪感を指摘する。マットは、自分に罰を与えてくれるパニッシャーの存在を心のどこかで求めていたのかもしれない。そして、フランクがフォギーのことを話題にあげると、マットは思わずフランクに手を出してしまう。

「彼は関係ない」と言うマットだが、フランクは「全て彼に関係している (It’s all about him)」と否定する。家族を殺された経験を持つフランクは、涙を流すマットの気持ちに寄り添いつつ、「一人残らず倒して」という息子の声に応えていると自分の活動を肯定している。

最後にマットは、フランクや自分がどんなに頑張ってもフォギーには遠く及ばないと言い残す。事実上、デアデビルとパニッシャーが同じだと認めたようなものだ。マットに迫るフランクの姿は非常に軍人的だが、まるで悪魔の囁きのようでもあった。

マットはこれまで、デビルとしての自分とカトリック教徒であり弁護士である自分との間でバランスをとってきた。『デアデビル:ボーン・アゲイン』からはデビルとしての顔を捨てたが、司法を信じずデビル側に全振りしているフランクの登場は、マットに揺り戻しが起きるきっかけになりそうだ。

絵画とマスクの意味

ウィルソン・フィスクは、父からは処世術を学んだが人を赦す方法を教わらなかったと話す。実際にフィスクはDV親だった父を自らの手で葬っている。また、フィスクは昔のように戻りたいと話すが、ヴァネッサは自分は変わったと主張。映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(2025) でも大統領となったサディアス・ロスの変化がポイントの一つだったが、ヴァネッサはもうフィスクが愛していたヴァネッサではないのかもしれない。

家に帰ったマットはヘザーと久しぶりに会い、ヘクターやリロイの件で苦しんでいることを共有する。フランクとは違いマットにはまだ大切な人がいる。ただ、マットは「君なしじゃいられない」と言っており、依存の関係にならないかは心配だ。ヘザーを失うようなことがあれば、マットはまた壊れてしまうかもしれない。

しかし、マットは夜になると一人起き抜けて屋上へ向かう。その姿は、地下へと降りていくフィスクとリンクする。地下の廊下の壁に飾られている絵は『デアデビル』シーズン3でフィスクがヴァネッサのために手に入れた(厳密にはブルズアイ/ポインデクスターが元の持ち主から奪取して献上した)もので、最終回でマットがこの絵の前でフィスクの顔面を殴打し、飛んだ血が付着している。

結果、フィスクはポインデクスターからも反旗を翻されており、フィスクがこの絵を残しているのは自分への戒めのように思える。一方、マットが向かった部屋にはデアデビルのマスクが五つも並べられていた。マットもまた、デアデビルを完全に捨て去ったわけではなかったのだ。

このマスクの一つは『シーハルク:ザ・アトーニー』でカリフォルニアで作ってもらった黄色いマスクだろうか。フォギーが死んだ日にツノが欠けたものを含めれば、マスクは六つあったはずで、充実したコレクションはむしろ、アイアンマンスーツを大量生産していた『アイアンマン3』(2013) のトニー・スタークのような不安定さを感じさせる。

マットが取り出したのはデアデビルの象徴的な武器であるビリークラブ(ワイヤー入りの棍棒)。一方のフィスクは檻に入れたアダムの前で食事を摂り、ヘザーの“赦し”が愛だという言葉に疑問を投げかける。

武器を手にしたマットと力づくの手段を選んだフィスク、鳴りをひそめていたキングピンとデアデビルが復活の狼煙をあげる。一方、ミューズに運ばれていた人物は目を覚まし、ミューズが自分から血を抜き取っている様子を目にする。いよいよミューズの参戦を予感させて『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話は幕を閉じる。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話ネタバレ考察&感想

新たに生まれるキングピン&デアデビル

まさに「ボーン・アゲイン」。市長と弁護士として新たな人生のスタートを切ったフィスクとマットが、再びキングピンとデアデビルに成っていくオリジンを描くのが『デアデビル:ボーン・アゲイン』という作品のようだ。

フィスクは妻ヴァネッサの不倫をきっかけに、マットはヘクターやリロイを救えなかったことをきっかけに闇に足を踏み入れた。だが、奥底にはフィスクの支配や愛への執着マットの人を救えないことへの無力感と罪悪感といった個人が抱える問題があることは明らかだ。

フィスクはカウンセリングでアダムがどこにいるのか知らないと答えたが、あれは嘘だったということになる。前回まで強調されていた拳の傷はアダムを殴ってできたものだったのかもしれない。市長になってヴァネッサにはリスクを冒さないよう忠告していたフィスクだったが、アダムの監禁はスキャンダルでは済まない。BBがスクープを追う中でフィスク市政の弱みになりうる。

マットもマットでデアデビルとしての自分は捨てたはずだったが、マスクをしっかり五つも残していた。念のため一個だけ置いておくなら分かるが、五つも残しているのは明らかに未練が感じられる。『シー・ハルク』での出来事はフォギーの死後1年以内の出来事で矛盾が生じると思われていたが、マットは“ニューヨークでの継続的な自警活動”をやめたというだけで、実は新しいコスチュームを作って試運転するなど、完全な脱却はできていなかったのかもしれない。

パニッシャー/フランクの今

それでも、『デアデビル:ボーン・アゲイン』第4話がマットにとって大きな転換点となることは確かだろう。その背中を押す役割を担ったのがパニッシャーことフランク・キャッスルだ。

フランクは以前よりも落ち着きをなくしていて不安定な感じだ。サノスの指パッチン後も孤独にヴィジランテとしての活動を続けていたのであれば、ローニン時代のクリント・バートンのように病んでいてもおかしくはない。今のフランクは、誰も手を差し伸べなかったバージョンのローニンと考えて良いだろう。

余談だが、一時期のニューヨークにはローニンがいて、パニッシャーがいて、デアデビルがいて、ホワイト・タイガーがいて、ローニンと入れ替わりでスパイダーマンが帰ってきて、二人のホークアイが現れたりして、多くのヴィジランテが活動していたことになる。警察が減り、ヴィジランテへの信頼が高まるのも無理はない。

パニッシャーについては、公開されたポスターが髭を剃ったバージョンになっているので、『デアデビル:ボーン・アゲイン』で再度登場するだろう。

また、本作の撮影中にパニッシャーの単独作品のアイデアが生まれ、『パニッシャー』のMCUスペシャルドラマが制作されることも明らかになっている。フランク・キャッスルはどんな物語でカムバックするのか、そして他のMCUキャラと仲良くできるのだろうか……。

なお、『デアデビル:ボーン・アゲイン』第5話と第6話は同時配信される予定。筆者の都合で第5話の解説は配信日に、第6話の解説は翌日に公開させていただくことになるので、ご容赦ください。いつも読んでいただいて、ありがとうございます。

ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』は2025年3月5日(水) よりディズニープラスで独占配信。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』配信ページ

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第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

これまでの『デアデビル』でデアデビルの正体を知っている人物のまとめはこちらの記事で。

『キャプテン・アメリカ:BNW』と『デアデビル:ボーン・アゲイン』までのMCU時系列まとめはこちらから。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』の配信スケジュールはこちらから。

ドラマ『エコー』最終回のネタバレ解説はこちらから。

 

【ネタバレ注意】『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド』ラストのネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

【ネタバレ注意】『アガサ・オール・アロング』最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】映画『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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