『君たちはどう生きるか』の意味を鈴木敏夫が明かす
2023年に公開された宮﨑駿最新作『君たちはどう生きるか』。宮﨑作品としては2013年公開の『風立ちぬ』以来10年ぶりの長編映画になる。国内での興行収入は85億円を突破し、2023年12月8日からは米国の劇場でも公開される。
スタジオジブリの立ち上げメンバーであり、長らくプロデューサーとしてジブリ作品を支えてきた鈴木敏夫は、米公開を目前に控えたタイミングで米IndieWireのインタビューに登場。『君たちはどう生きるか』に宮﨑駿監督が込めた意味について語っている。
鈴木敏夫は、『君たちはどう生きるか』が宮﨑駿監督の“最も個人的な作品”という評について、「彼が実際に私にそう言ったので、私も同意します」としている。続けて、主人公の眞人、眞人を導くアオサギ、キーキャラクターになる大叔父の存在について、こう話している。
宮﨑は眞人、高畑が大叔父、そしてアオサギが私なんです。なぜかって彼に聞いたら、彼は(高畑監督が)彼の才能を見出してスタッフに加えてくれたって言うんです。私は高畑さんが彼の才能を開花させたと思っています。一方で、少年とアオサギの関係は互いに譲らず、押したり引いたり関係ですからね。
更に鈴木敏夫は、『君たちはどう生きるか』の制作中であった2018年に高畑勲監督が亡くなったことが、本作の制作に影響を与えたことも明かしている。
高畑監督が亡くなった後、彼はその物語を続けることができなくなり、ストーリーを変えて少年とアオサギの間の関係をめぐるものにしました。彼の頭の中では、当初アオサギは戦時中の舞台で、彼が行く屋敷や塔の不気味さを象徴するもので、不吉な存在ですらありました。しかし、彼はそれを少年とアオサギの間に友情が芽生えるようなものに変えたのです。
『君たちはどう生きるか』の英題は『The Boy and The Heron』、つまり『少年とアオサギ』というタイトルになっている。本作がこのタイトルが当てはまる内容の作品になった背景には、高畑監督が亡くなった影響が存在していたのである。
鈴木敏夫は、『君たちはどう生きるか』の中で眞人とアオサギがキリコの家で横並びに座るシーンについても、宮﨑駿と鈴木敏夫が普段アトリエで向かい合わずに隣同士に座ることに似ていると指摘している。
一方、大叔父については、高畑勲監督の死後に宮﨑駿監督が大叔父の絵コンテを描くことができるようになるまで1年を要したと明かしている。その上で、終盤のシーンについてこう話している。
私が最も驚いたのは、眞人が大叔父から仕事とレガシーを引き継ぐよう頼まれ、それを断るというストーリーボードを見た時でした。宮﨑は長年にわたって高畑の道を歩んできた人間でしたが、(違う道を行くことは)彼にとって大きな出来事だったと思います。
『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿監督にとって、高畑勲監督に別れを告げるための作品でもあったのかもしれない。それでも、鈴木敏夫は宮﨑駿監督が今後も作品を作ることを予告している。宮﨑駿監督は、『君たちはどう生きるか』が劇場で公開されている間は新しいアイデアに集中することができないとして、こう話している。
彼はまた頭を空っぽにする必要があるんです。彼の頭が空っぽになってキャンバスが真っ白になった時、大抵新しいアイデアが浮かんでくるんです。ですから、私たちはもう少し待たなければいけませんね。
『君たちはどう生きるか』で「最も個人的な作品」を完成させた宮﨑駿監督は、次はどんな作品を作り出すのだろうか。
『君たちはどう生きるか(英題:The Boy and the Heron)』は国内の劇場で公開中。北米では2023年12月8日(金)より劇場公開。
Source
IndieWire
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