「スター・ウォーズ」クローンの歴史に転換期 『バッド・バッチ』で何が起きているのか | VG+ (バゴプラ)

「スター・ウォーズ」クローンの歴史に転換期 『バッド・バッチ』で何が起きているのか

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『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』ファイナルシーズンが配信中

45年以上の歴史を持つ「スター・ウォーズ」フランチャイズで、新たな歴史が動き始めている。2021年から配信を開始したアニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』のファイナルシーズンとなるシーズン3が2024年2月より配信され、重要なストーリーラインが描かれているのだ。

『バッド・バッチ』は、「スター・ウォーズ」の映画シリーズで描き切れなかったアナキン・スカイウォーカーやアソーカ・タノの冒険を描いたアニメ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020) の続編として制作された作品。クローン・トルーパーの“不良分隊”と呼ばれるバッド・バッチが、クローン戦争後の成立まもない帝国の時代を生き抜いていく。

『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』のテーマはもちろん“クローン”だ。ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) よりも早く配信を開始した本作は、「スター・ウォーズ」フランチャイズで初めてクローンを主人公に据えた作品でもある。

近年、クローン技術はドラマ『マンダロリアン』(2019-) でもトピックの一つとして扱われている。『バッド・バッチ』では『マンダロリアン』で十分に説明されていなかった背景まで明かされており、「スター・ウォーズ」ファンには必見の作品となっている。

今回は、ファイナルシーズンを迎えた『バッド・バッチ』で何が起きているのか、シーズン3第5話までのネタバレありで解説していこう。なお、以下の内容は映画『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019) と、ドラマ『マンダロリアン』シーズン3までのネタバレも含むので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』、映画『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』およびドラマ『マンダロリアン』の内容に関するネタバレを含みます。

『スカイウォーカーの夜明け』で起きたこと

「スター・ウォーズ」史においては、映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) でパルパティーンがクローン・トルーパーに仕掛けておいたオーダー66(クローンによるジェダイの抹殺プログラム)を発動させてジェダイ・オーダーは崩壊した。それ以来、クローンが改めて重大なトピックになったのは映画『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』でのことだった。

映画『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983) で死んだはずの皇帝パルパティーンが、クローンの身体で復活を遂げたのだ。あまりに突然の展開だった上に経緯説明が省略されており、『スカイウォーカーの夜明け』が続三部作の完結編であったために、この展開にはブーイングも多かった。

『マンダロリアン』で動いたストーリー

だが、ドラマ『マンダロリアン』から幕を開けた「スター・ウォーズ」のディズニープラス作品では、この空白を埋める展開が続いている。『エピソード6』後を舞台とした同作では、シスの暗黒卿であるパルパティーンの力を保持させたままクローンとして復活させる技術について、慎重にバックストーリーが構築されているのだ。

『マンダロリアン』では、帝国の残党であるモフ・ギデオンが、ヨーダと同じ種族で高いミディ=クロリアン値を持つグローグーを追っていた。ミディ=クロリアン値は、遺伝子に含まれている数値が高いほどにフォースの感応力が高いとされている。シーズン3では、モフ・ギデオンが自身のクローンを開発していたことが明らかになった。モフ・ギデオンはミディ=クロリアン値の高い遺伝子を追いつつ、クローン製造を進めていたのだ。

モフ・ギデオンの下で働いていたドクター・パーシングは、グローグーの血を利用して輸血によるフォースの再現実験を行ったが失敗。一方で、帝国の残党によるシャドー評議会では、「ネクロマンサー計画(日本語字幕は「蘇り計画」)」によってハックス司令官を復活させることについて言及されており、クローン計画が進められていることも匂わせていた。

ドラマ『マンダロリアン』では、成立したばかりの新共和国の脆さや問題点についても描かれており、続三部作で新共和国軍が機能しなかった背景も穴埋めされている。続三部作で描かれなかった背景をディズニープラスのシリーズで穴埋めしようとするルーカス・フィルムの意図は明らかだ。

『バッド・バッチ』シーズン3で明かされたこと

そんな中、『バッド・バッチ』シーズン3では、第3話で「ネクロマンサー計画」の名前がパルパティーンと共に登場する。パルパティーンの下で働くドクター・ヘムロックは、クローン体に何かを”移行”させる実験を進めており、ミディ=クロリアン値、つまりフォースの力を低下させることなくそれを実現しようとしている。その計画こそがネクロマンサー計画だったのだ。

『バッド・バッチ』シーズン3では、パルパティーンは自らこの実験の視察に訪れ、帝国の上層部にさえこの計画を忌み嫌っているものがおり、計画は秘密裏に進めなければならないと話している。パルパティーンが強力なフォースの力を維持したままクローンとして復活できるようになるということは、永遠にパルパティーンによる支配が続くということだ。権力の座を狙う帝国上層部のメンバーが反対するのも無理はない。故に、ネクロマンサー計画は旧三部作でも触れられることはなく、続三部作でも突如としてパルパティーンが復活したように見えた、という理屈も成り立つ。

『バッド・バッチ』シーズン3では、バッド・バッチに加入した特殊なクローンの少女オメガの遺伝子が、ミディ=クロリアン値を低下させずに“移行”を成功させる鍵であることが示唆されている。この展開は、『マンダロリアン』でグローグーの血が狙われていた展開とよく似ている。新共和国時代まで続くネクロマンサー計画の行方は、ファイナルシーズンで決着がつけられることになるだろうか。

つながる帝国の歴史

なお、『バッド・バッチ』ではドクター・ヘムロックの助手であるエミリーのユニフォームも考察要素の一つになる。というのも、エミリーが着ている制服は『マンダロリアン』でドクター・パーシングがモフ・ギデオンの配下にいたときの制服と非常に似ている上、腕にはよく似た紋章がつけられているのだ。

エミリーが働いているのは帝国の特殊科学部門だ。ドクター・パーシングはもともと帝国でクローン研究を行っていたことを明かしており、「クローン技術を権力に利用された」と話している。パーシングが帝国の特殊科学部門出身であった可能性は高く、『バッド・バッチ』シーズン3でその研究の行方が描かれることになるかもしれない。

『バッド・バッチ』では、帝国の成立とともにクローンの開発拠点だった惑星カミーノが滅ぼされ、帝国がクローン技術を独占した経緯が描かれている。『マンダロリアン』でもクローン技術を持っていたドクター・パーシングは始末されており、数十年が経過してもクローン技術が「スター・ウォーズ」の宇宙で一般化しないように策が施されている。全ては『エピソード9』でのパルパティーン復活に向けてお膳立てされているように思える。

なお、パルパティーンを演じるイアン・マクダーミドは、2022年のスター・ウォーズ セレブレーションのイベントで、「(パルパティーンなら)プランBを用意していたはず」と語っている。「生命を取り戻すための設備とテクノロジー」を持っていたはずとも語っており、近年の「スター・ウォーズ」作品ではその中身が明かされているということなのだろう。

もちろん、『バッド・バッチ』の魅力はネクロマンサー計画に限ったものではない。『バッド・バッチ』のメインテーマは、兵士として作られたクローンたちが帝国政権下の戦後をどう生きるかということだ。他にも帝国が予算削減を理由にクローン兵を廃止したり、管理社会を構築する中で日本のマイナンバーにあたるチェーンコードを導入するなど、「スター・ウォーズ」のユニバースの社会がどう構築されていったのかを知ることもできる。

「スター・ウォーズ」ファンなら必見のアニメ『スター・ウォーズ/バッド・バッチ』。ファイナルシーズンとなるシーズン3からも目が離せない。

アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン3は2024年2月21日(水) よりディズニープラスで配信開始。

『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(Disney+)

『バッド・バッチ』シーズン3第1話の解説はこちらから。

『バッド・バッチ』シーズン2最終話の解説はこちらから。

シーズン1で明かされたクローン兵廃止の理由はこちらから。

 

『エピソード1』の50年前を舞台にしたドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は夏配信予定。詳しくはこちらから。

映画『マンダロリアン&グローグー』についての情報はこちらの記事で。

メイス・ウィンドゥが生きている可能性についての考察はこちらの記事で。

同じ新共和国時代を舞台にしたドラマ『アソーカ』と『マンダロリアン』の繋がりについての考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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