ネタバレ解説『バッド・バッチ』シーズン2第3話 アノ人登場で問われる忠誠心と迫られる決断 あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『バッド・バッチ』シーズン2第3話 アノ人登場で問われる忠誠心と迫られる決断 あらすじ&考察

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『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン2第3話はどうなった?

アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』は2021年に配信されたシーズン1に続き、2023年1月4日(水) よりシーズン2の配信をスタート。元クローン兵でオーダー66の影響を受けなかった“不良分隊”ことバッド・バッチの旅を描く。

シーズン2は第1話と第2話が同時配信され、強化クローンの少女オメガとオリジナルのメンバー4人が新たに直面する課題が描かれた。全16話が用意されている『バッド・バッチ』シーズン2はどんな展開を見せるのだろうか。

今回は、『バッド・バッチ』シーズン2第3話をネタバレありで解説していく。以下の内容はネタバレを含むので、必ずDisney+で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン2第3話の内容に関するネタバレを含みます。

第3話「孤独なクローン」あらすじ&ネタバレ解説

第3話はクロスヘアー回

『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン2第3話は、意外にもクロスヘアー回に。『バッド・バッチ』シーズン1ではオーダー66に逆らうバッド・バッチメンバーに対し、クロスヘアーは帝国に従うことを選んだ。抑制チップの影響かと思われていたが、最後には抑制チップではなくクロスヘアー自身の意思で帝国に仕えていたことが判明した。

自由意志のもと、それぞれの道を歩むことになったバッド・バッチ。シーズン1最終話ではクロスヘアーは帝国に見捨てられ、オメガに命を救われるが、それでもなお「今後は帝国が銀河中を支配する。俺はその一部になる」と言って憚らなかった。

その後、オメガを助けて借りを返したクロスヘアーだったが、バッチ・バッチへの復帰を断った。ハンターから「敵である必要はない」、オメガから「今でも5人にとっては兄弟」という優しい言葉をかけられたクロスヘアーだが、シーズン2ではどんな動きを見せるのだろうか。

帝国とクロスヘアーのその後

惑星デシックスに出向いたのは、良い具合に小物感を出す帝国のグロットン(自称)総督。帝国の支配下に入ることを拒む現総督のトーニ・エイムズの首をすげかえに来たようだ。帝国の“使節団”を包囲したのは、バトル・ドロイド軍。デシックスはかつて分離主義勢力だったようで、クローン大戦後も主力であったドロイド兵を保持しているようだ。

一方、クロスヘアーは帝国軍で過ごしている。「また徴兵法案が出されるらしい」というクローン・トルーパーの会話から、まだクローン・トルーパーからストーム・トルーパーへの移行が完了していないことが伺える。帝国成立まもないこの時期は、まだ元老院が機能しているはずだ。一方でクローンの生産拠点である惑星カミーノを沈めた後の食堂には、それほど多くのクローン兵の姿は見られない。

クローンの中でも孤立しているクロスヘアーを呼び出したのはランパート中将。シーズン1最後のカミーノの着陸台に32日間取り残されていたというクロスヘアーは、それでも帝国軍に復帰していた。強い忠誠心を持つクロスヘアーの標語は「優秀な兵士は命令に従う」だ。帝国はデシックスのトーニ・エイムズ総督を「反乱分子」と捉え、クロスヘアーを送り込む。「帝国は交渉に応じない」と米国のスタンスを踏襲したセリフを吐いている。

コーディ登場

そして、部隊の指揮官として登場したのはコマンダー・コーディだ。映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 』(2005) で初めて登場したオビ=ワン・ケノービの腹心の部下で、アニメ『クローン・ウォーズ』(2008-2020) でもオビ=ワンやアナキン・スカイウォーカーと作戦を共にした。

『エピソード3』では、オビ=ワンにライトセーバーを渡した直後にパルパティーンから通信を受け、「コマンダー・コーディ、いよいよだ。時は来た。オーダー66を実行に移すのだ」と指示を受けてオビ=ワンへの攻撃を指示した。これを皮切りに各地の戦場でクローン兵によってジェダイが襲撃される様子が映し出されており、コーディはオーダー66における象徴的な存在となっている。

その後も帝国軍で働いているコーディは、「あの命令を疑問視する兵士も増えてるとか」と話す。オーダー66の発動から時間が経過し、自分の意思で帝国に仕えることを選んだクロスヘアーのように、自分の意思で帝国に疑問を持つ兵士が出てきているということだろうか。

コーディは、クロスヘアーの「ジェダイと同じ裏切り者だ」という言葉にわずかに反応する。オビ=ワンとの親交を裏切った自分の行いを思い出したのだろうか。それを掻き消すようにコーディは「優秀な兵士は命令に従う」と言い聞かせるが、クローン兵の中にも変化が生まれつつあるようだ。

バトル・ドロイドvsクローン・トルーパー

デシックスのトーニ・エイムズ総督は「ドゥークーが正しかった」と、共和国が帝国になると主張していたドゥークーの予言を認めていた。これは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)において、人々が「サノスは正しかった」と言い出した展開と似ている。去ってから肯定される悪もある。

奇襲作戦を仕掛けるコーディの部隊は、シップを撃墜されてからが本番。クロスヘアーのスナイパー能力を軸にどんどん進軍していく。戦車の砲身を狙った狙撃に、“低速で進む物体はバリアを通過する”というドロイデカの弱点をついた戦い方など、『クローン・ウォーズ』を思わせる魅力的な戦闘シーンの連続で構成されている。

バトル・ドロイドvsクローン・トルーパーという構図も懐かしいが、かつて分離主義勢力と共和国軍という立場だったのが、今では前者が反乱分子で後者が帝国軍という何とも言えない状況になってしまっている。コーディとクロスヘアーは、出会した民間人と子どもには優しくするが、相手にとっては侵略しにきた帝国軍である。

その帝国軍に対してデシックス側が投入したのは、BXシリーズ・ドロイド・コマンドー。コマンドー・ドロイドは『クローン・ウォーズ』に登場したエリートドロイドで、高い戦闘力を誇るが、高価なため大量生産されることはなかった。

機敏な動きを見せるコマンドー・ドロイドとの螺旋階段での戦闘に、クロスヘアーはブラスターを跳弾させて狙い撃つという戦法で挑む。最終的にクロスヘアーはコーディとのコンビネーションで、遠くにいる司令官の戦術ドロイドを連続した跳弾で仕留めるという離れ業をやってのけ、制圧に成功する。流石にコーディとクロスヘアーが揃えば、作戦遂行能力は圧倒的だ。

選択と決断

トーニ・エイムズ総督が説得するも、帝国が悪だということを認められないコーディ。総督は、かつてミーナ・ボンテリと共に分離主義勢力と共和国の間の和平協定を立案したことを明かす。ミーナ・ボンテリは『クローン・ウォーズ』に登場した元老院議員で、分離主義勢力=独立星系連合の支持に回った人物だ。パドメ・アミダラの依頼で和平条約締結に向けて動いたが、これを阻止したいドゥークー伯爵の使いによって暗殺され、共和国と独立星系連合は双方の策略だと認識して和平は頓挫した。

パルパティーンが平和を拒んだ、和平の道はなかったと聞いたコーディは銃を下ろして平和的解決をオファー。それに応じてグロットンを解放したエイムズ総督だったが、処刑の命令を受けたクロスヘアーに射殺されてしまう。後戻りのできないところまで行ってしまったクロスヘアーを前に、コーディは複雑な表情を見せるのだった。

平和を求めていたはずが、仲間のクローン兵は傷つき、デシックスには新たな軍隊が到着する。「帝国はより良い世界を作れるか?」と、疑問を投げかけるコーディに、クロスヘアーは「命令に従うだけ」と回答する。しかし、コーディは、自分たちはバトル・ドロイドと違って「自分で決断して選べる」「決断の責任も取らなきゃならん」と告げる。

クロスヘアーは、ランパート中将から、そのコーディが無許可離隊したことを知らされる。コーディは、問答無用で指示に従うクロスヘアーの姿がきっかけとなって帝国軍を離れたのだ。ランパート中将のクロスヘアーの周りではクローンの失踪が続くという指摘は的を射ている。今回のケースではクロスヘアーが反面教師になったのだから。

『バッド・バッチ』シーズン2第3話 考察&感想

盲信と忠誠心

『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン2第3話の最後は、一人歩くクロスヘアーの姿だった。第3話タイトルの「孤独なクローン」とはクロスヘアーのことだろうが、一方で、コーディもまた帝国軍の中で孤独を感じ、軍を離れたのだろう。ここは自分の居場所ではないと気づいたはずだ。

『バッド・バッチ』シーズン1では、オーダー66の発動から物語は始まり、明確にオーダーの影響を受けなかったクローンと受けたクローンの間に距離があった。一方で、シーズン2では少し時間が経過し、その境界線が曖昧になりつつある。コーディが言ったように、それぞれのクローンが「自分で決断して選ぶ」ことを迫られるのだろう。

「命令に従うだけ」というクロスヘアーが進む道は、実際には自分で考えることを放棄できる楽な道でもある。シーズン2第1話と第2話でハンターやオメガ、エコーらがそれぞれの考えを持って議論を交わしたのとは対照的だ。その意味でも議論の余地を持たないクロスヘアーは「孤独なクローン」である。

クロスヘアーは「帝国への忠誠心」と言うが、本当の忠誠心は盲信することではない。誤った道を進んでいるならそれを止めるべく努力することもまた忠誠心だ。コーディを離隊させてしまったクロスヘアーは、この考え方/生き方から脱却できるのか。次のエピソードを待とう。

アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン2は2023年1月4日(水)より、Disney+で独占配信。

『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(Disney+)

シーズン2第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン1を振り返りながら考えるハンターの行動原理と、『バッド・バッチ』の魅力についての解説はこちらから。

シーズン1のネタバレ解説はこちらから。

シーズン1ラストの解説はこちらの記事で。

シーズン1で明かされたクローン兵廃止の理由はこちらから。

『マンダロリアン』と『バッド・バッチ』に登場した“チェーンコード”の解説はこちらの記事で。

 

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3は2023年3月1日より配信開始。詳細はこちらの記事で。

『スター・ウォーズ エピソード1』の100年前を描く異色のドラマ『アコライト』についてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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