小松左京「日本沈没」50周年 その歴史を振り返る。 | VG+ (バゴプラ)

小松左京「日本沈没」50周年 その歴史を振り返る。

小松左京「日本沈没」50周年

SF作家・小松左京が生み出した日本SFの不朽の名作「日本沈没」が、2023年3月20日(月)に50周年を迎える。小説『日本沈没』が光文社のカッパ・ノベルスから最初に刊行されたのは1973年3月20日。同年8月には少年チャンピオンで漫画版の連載が、10月には毎日放送で連続ラジオドラマの放送が始まり、11月には文化放送で単発ドラマが放送されると、1973年12月にはあまりにも有名な東宝製作の映画『日本沈没』が劇場公開されている。

【1973年「日本沈没」の展開】
・小説 3月20日出版 (カッパ・ノベルス 上下)
・コミック 8月25日連載開始 (少年チャンピオン・9 月 24 日号)
・ラジオドラマ 10月8日放送開始 (連続ラジオドラマ・毎日放送)
・ラジオドラマ 11月4日放送 (芸術祭参加作品・文化放送)
・劇場映画 12月29日公開 (東宝)
※2023年3月現在、コミック化計3回、ラジオドラマ化計3回、映画化計2回、テレビドラマ化計2回、アニメ化1回。

それから50年ものあいだ愛され続け、その時代の人々にメッセージを届け続けてきた「日本沈没」。今回はその歴史を振り返ってみよう。

“不安”の時代に現れた名著

1973年に光文社カッパ・ノベルスから刊行された『日本沈没』は出版当時、上下巻で385万部という大ベストセラーになった。小説『日本沈没』刊行の時期は、1970年の大阪万博をピークとした高度経済成長の終わり、世界的な経済混乱を招いた1971年のドルショック、1973年2月の浅間山噴火、10月のオイルショックなど、歴史に残るような暗いニュースが続いていた。特にオイルショックの影響は大きく、テレビの深夜放送が休止し、繁華街のネオン照明も自粛されるなど、日本社会が高度経済成長で得た自信を突き崩すような不安が社会を襲っていた。

そんな時代に現れた「日本人が国土を失う」という物語は多くの人々の関心を集めた。『日本沈没』は後に文春文庫、徳間文庫、双葉社文庫、小学館文庫、角川文庫、ハルキ文庫で出版され、2023年3月現在で累計490万部 (海外出版・電子書籍のぞく) という大ヒットを記録している。

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メディアミックスの先駆けに

「日本沈没」は長編小説の刊行直後から畳み掛けるようにコミック化、二度のラジオドラマ化、劇場映画化が行われ、メディアミックスの先駆けとなった。「日本沈没」は、『ゴルゴ13』(1968-)で知られる、さいとう・たかをにより劇画化され、1973年9月から少年チャンピオンで連載を開始。コミックは、秋田書店、講談社、リイド社と出版が続き、累計100万部を超えるロングセラーになった。

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1973年の二度のラジオドラマ化は、毎日放送では連続ラジオドラマとして、文化放送では単発のラジオドラマ『小松左京“日本沈没”より「ここを過ぎて悲しみの都へ」』として放送された。

毎日放送版は豪華俳優陣によって演じられ、小松左京も本作を高く評価していたが、「深海潜水艇ケルマディックをケマルディックと毎回間違った読み方をされたことだけは残念だ」と語っていたという逸話がある。文化放送版は第28回芸術祭賞で優秀賞を受賞。その後も、1980年にはNHK連続ステレオ小説「日本沈没」も放送されており、 1973年の2作品と合わせ 「日本沈没」は計3度のラジオドラマ化が実現した。

そして、「日本沈没」を語る上で外せないのが1973年の映画『日本沈没』だ。撮影開始からわずか4ヶ月というスピードで完成した本作は、1973年12月29日に劇場公開され、大ヒットを記録。主人公・小野寺俊夫役の藤岡弘、をはじめとする豪華キャストの演技、黒澤明と共に映画を作ってきた橋本忍の脚本と森谷司郎監督の指揮、円谷英二の愛弟子だった中野昭慶特技監督による特撮……盤石の布陣によって映像化された未曾有の大災害は、“特撮”の枠組みを超えたドキュメンタリーのようなリアリティをもって描かれた。

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社会現象ともいえるブームとなった「日本沈没」は1974年10月にテレビドラマ化され、TBS系列でドラマ『日本沈没』の放送が始まる。2001年にアミューズソフトから発売されたDVDのオーディオコメンタリーでは、庵野秀明監督と樋口真嗣監督が第1話と最終話の演出を担当した福田純監督から話を聞いている。

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「日本沈没」のブームは約2年間続き、1974年には第27回日本推理作家協会賞を受賞。SFファンの投票によって決定する第5回星雲賞では日本長編部門を受賞し、日本短編部門もそのパロディである筒井義隆「日本以外全部沈没」が受賞している。

30年後の第二次ブーム

「日本沈没」の第二次ブームはそれから30年あまりが経過した2006年にやってくる。製作費20億円を投じた樋口真嗣監督、草彅剛主演の映画『日本沈没』が同年7月に公開され、大ヒットを記録した。当時最新のVFXによる映像表現はもちろん、本物の有人潜水調査船を使用し、前年に完成したばかりの地球深部探査船ちきゅうの協力を得るなど、徹底したリアリティが話題を呼んだ。なお、2006年版の映画『日本沈没』には、庵野秀明監督とその妻で漫画家の安野モヨコが日本を脱出する役で出演し、「機動戦士ガンダム」の富野由悠季監督が仏像の国外搬出を見送る僧侶役で出演している。

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2006年8月には、第一部の刊行から33年の時を経て『日本沈没 第二部』が刊行。株式会社イオを拠点に、小松左京とSF作家の森下一仁、実際に執筆を担当した谷甲州が中心となってプロジェクトが進められた。『日本沈没 第二部』は、おおよそ月に一回、取材と基本構想の取りまとめを並行して進め、一年近くを要して基本構想が形づくられていった。チームで完成させた第二部について、小松左京はあとがきで以下のように記している。

とても一人では達成することが出来なかった難行を、こうして多くの方々の協力によって成し遂げ、ようやく肩の荷を下ろすことが出来た。感謝に堪えない。ここに、あらためて、谷君をはじめチームのメンバー、そしてご協力いただいたすべての皆様にお礼を申し上げたい。とりわけ、谷君の努力には、深甚なる感謝と敬意を捧げたい。本当にありがとう。

『日本沈没 第二部』(小学館)より

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第二次ブームにおいては、二冊のコミックも刊行されている。小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」で、一色登希彦による劇画版『日本沈没』の連載が始まると、延べ3年間の連載でコミックス15巻に及ぶ大長編となった。同作の累計発行部数は100万部を超えている。

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先述の通り、1974年には筒井康隆による「日本沈没」のパロディ短編小説「日本以外全部沈没」が発表されたが、第二次ブームの2006年には原作者公認のパロディがコミックで刊行されている。それが『日本ふるさと沈没』だ。本作は21名の漫画家が書き下ろしたコミックアンソロジーで、当時の帯には原作者・小松左京の言葉として、「しかし、こんなふうには沈まんっ!!!」と記されていたという。

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20年代の“リブート”

リアリティと遊び心と共に人々に愛されてきた「日本沈没」は、2020年代にも私たちのもとに帰ってきた。2020年7月に「日本沈没」初のアニメ化作品となる『日本沈没 2020』が全10話でNetflixで世界配信された。本作はアニメーションをスタジオSARUが手掛け、湯浅政明監督が指揮をとっている。本作をベースとした渡邉健一のウェブコミック『日本沈没 2020』もWEBコミック『GANMA!』で連載された。更に2021年10月からはTBS日曜劇場で小栗旬が主演を務めたドラマ『日本沈没ー希望のひと』の放送が開始。「日本沈没」のドラマ化は47年ぶりとなり、2023年の50周年に向けて大きな盛り上がりを見せた。

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2020年代に生み出された二つの物語は、「沈みゆく日本」という設定はそのままに、アニメ『日本沈没 2020』では一般の家族を、ドラマ『日本沈没ー希望のひと』では環境省の官僚を主人公に据え、現代社会に求められている新たな物語を提示した。また、両作ともにノベライズ版が発売されている他、アニメ版は『日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-』が2020年11月に劇場公開されている。

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50周年の前年となる2022年には、「日本沈没」初の朗読コンテンツが登場。声優の田尻浩章による朗読がAmazonのAudibleで配信を開始した。この朗読は上下巻と解説で再生時間は計26時間になる。

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海外での展開も

日本国内で広く愛されてきた小松左京の「日本沈没」は、1970年代後半から現在にいたるまで、米国、ソ連(現ロシア)、スペイン、メ キシコ、東西ドイツ(現ドイツ)、ラトビア、ブルガリア、中国、韓国など、様々な国で翻訳出版され続けている。2015年にアジア初のSF最高賞ヒューゴー賞長編小説部門を受賞した『三体』の劉慈欣は、「日本沈没」に衝撃を受け、「中国版『日本沈没』」を書こうとして『三体』が出来たと明言している。

誕生から50年が経過してもなお、時代と国を超えて読者にメッセージを届け、時のクリエイター達と共にSFの想像力を発信し続ける「日本沈没」。次の50年はどんな展開が待っているのだろうか。何より、私たちが希望の中で次のアニバーサリーを迎えられるように、「日本沈没」から得た教訓を生かしていきたい。

「日本沈没」は光文社、小学館、文藝春秋、KADOKAWAからそれぞれ電子書籍が配信中。
文藝春秋の『日本沈没 決定版』は電子書籍初の上下一体版で、カラー図版と共に詳細な解説が掲載されている。

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小松左京と谷甲州の共著『日本沈没 第二部』も小学館から電子書籍で配信中。

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コミック版の3作品はいずれも電子書籍化されている。

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情報提供
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