劉慈欣「中国版『日本沈没』書きたかった」——『三体』への影響を語る

中国SF大会で発言

10月25日〜27日、2019年の中国科幻高峰论坛 (中国のSF大会) が重慶市で開催された。アジア発の作品として初めてSF最高賞ヒューゴー賞を受賞した『三体』の作者・劉慈欣 (リュウ・ジキン/リウ・ツーシン) が登壇し、小松左京による名作SF小説『日本沈没』(1973) から受けた影響について語った。未来管理事務局が運営する未来局科幻の微博 (Weibo) が伝えている。
兼ねてから日本メディアからのインタビューで小松左京ら日本の作家からの影響について触れていた劉慈欣だが、今回は公の場で『日本沈没』が自著『三体』に与えた影響について語っている。

「中国版『日本沈没』を書きたかった」

劉慈欣は、「日本のSFからは大きな影響を受けました」と前置きした上で、中国SFの最高傑作『三体』も『日本沈没』に大きな影響を受けたと話す。「『日本沈没』に衝撃を受けた」という劉慈欣は、SF作品は未来についての恐怖を描き出すことができると指摘し、こう話したという。

中国版『日本沈没』を書きたかったんです。中国にとっての将来的な恐怖とは何か?数年間考え続けましたが、いい考えが浮かびませんでした。しかし、人類としては、確かに宇宙に対する共通の恐怖があります。これは『三体』の重要な要素の一つでした。

劉慈欣は小松左京の『日本沈没』に影響を受け、『三体』では、民族ではなく人類全体にとって起こりうる恐怖を描き出したのだという。

世界で売れる『三体』

『三体』は、中国でシリーズ累計2,00万部を超える大ベストセラーとなり、英語版は100万部以上、ドイツ語版も20万部以上の大ヒットを記録している。日本でも『三体』の日本語訳が2019年7月に発売されると、瞬く間に10刷を突破、10月には13刷目の増版が決定し累計10万部超、海外SF小説としては異例のヒットを記録した。

描き直される『日本沈没』

一方、小松左京の『日本沈没』もまた世界中の人々に影響を与えてきた。10月9日にはNetflixが『日本沈没 2020』としてアニメ化することも発表され、中国を含む世界中のメディアがこのニュースを報じていた。『DEVILMAN crybaby』(2018) の湯浅政明監督が描きなおす『日本沈没 2020』は、オリンピック後の2020年の日本が舞台。アジアで孤立を深める現在の日本は、この“未来の恐怖”にどのように挑むのだろうか。

世界に影響を与える日本のSF作品

小松左京に限らず、日本のSF作品は世界に影響を与え続けている。先日発売された『S-Fマガジン』12月号には、アメリカのSF作家ピーター・トライアスがゲーム『DEATH STRANDING』から影響を受けて執筆された「死亡猶予」が掲載されている。『DEATH STRANDING』は、「メタルギア ソリッド」シリーズで知られる小島秀夫監督の最新作だ。
ピーター・トライアスが『DEATH STRANDING』に受けた影響については、以下の記事で著者本人が詳細に語ってくれている。

SFが喚起する想像力で、世界は繋がっていくのだ。

中国星雲賞も発表

なお、劉慈欣が『日本沈没』から受けた影響について語った中国科幻高峰论坛では、2019年で第10回目となる中国のSF賞・全球华语科幻星云奖 (中国星雲賞、英名: Xingyun Awards) も開催された。各賞の受賞者および受賞作品は以下の記事に詳しい。

– Source –
未来局科幻

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