【独占】ピーター・トライアス最新作に『デス・ストランディング』が与えた影響とは——著者コメントが到着 『S-Fマガジン』掲載「死亡猶予」

ピーター・トライアス最新作が登場

『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(2016)、『メカ・サムライ・エンパイア』(2018)で二作連続星雲賞を受賞したピーター・トライアスの最新作「死亡猶予」が、10月25日(金)発売の『S-Fマガジン』2019年12月号に掲載される。これまでの作品に引き続き、中原尚哉が翻訳を担当している。

ピーター・トライアスは、これまでにも「メタルギア ソリッド」シリーズで知られるゲームクリエイター小島秀夫から強い影響を受けてきたことを公言してきた。今回の自身の「死亡猶予」についても、自身のTwitter上で同作が小島監督の最新作『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』のトレーラーに触発されて執筆した作品であると述べている。

今回、VG+はピーター・トライアス本人による「死亡猶予」へのコメンタリーを独占入手した。『デス・ストランディング』から受けたインスピレーションの詳細、短編小説「死亡猶予」に込められた想いが語られている。

ピーター・トライアス  「死亡猶予」公開に寄せて

Photography: Stephen Grant

物心がついた頃から、小島秀夫作品のトレーラーにインスパイアされてきました。私が最初にゲーム業界に足を踏み入れた時には、『メタルギア ソリッド2』(2001) のトレーラーを何度も観て、その映像と撮影技術に畏敬の念を覚えました。『メタルギア ソリッド3』(2004) の時には、HALO降下するネイキッド・スネークの姿を繰り返し観ていましたし、『メタルギア ソリッド4』(2008) のトレイラーでは雷電がヴァンプと戦いを繰り広げる際の“暴力のバレエ”に魅了されました。『メタルギア ソリッドV』(2015) のトレーラーによって、私は言語とアイデンティティについての思索に取り憑かれました。そして『DEATH STRANDING』(2019) においても、私はその光景に心を奪われたのです。

これまでの全ての小島監督作品がそうであったように、『デス・ストランディング』もストーリーとナラティブが絡み合ったものになっています。(『デス・ストランディング』では、) 生は死に打ち克つためのものとして提示されています。(主人公の) サム・ポーター・ブリッジスは自らの体液を利用した銃を使用しており、血液・尿・汗が (敵キャラクターの) BTと戦う際に最も効果的な武器になることを示しています。

考えてみれば、これはそもそも何が私たちの動力になっているかということを伝えてくれています。サムが用を足すためにトイレに行かなければならないという事実は、彼がまだ生きているということを示していますが、それを認識できるのはあなたが死に囲まれた状態に立たされた時だけです。登場人物の一人・ハートマンをフィーチャーしたトレーラーでは、彼はその存在を基本的な機能に集約することで、「排泄、洗浄、摂取」が彼の限られた時間の枠組みにいかに適合するかを示しています。生は死を否定します。逆も然りです。ゲーム中には、一定の間隔でサムが生きた人間であることを思い出させる仕掛けが設けられています。ゲームをセーブするために、肩をマッサージして休憩をとったり、温泉でリラックスしたり、ブリッジベイビーとゆっくりしたりするのです。

上述のハートマンのトレーラーは、特に私の想像力をかき立てました。彼は21分毎に死に、21万8,550回も死後の世界を訪れていますが、この数字には重要な意味があります。魂の重さは21オンスと言われており、ハートマンは3分毎に生き返りますが、これはキリスト教における象徴と復活に通じていると思われます [訳注: キリストは十字架にかけられた3日目に復活している]。

私はハートマンのトレーラーを何度も観て、映画、物語、音楽、ゲームが21分で消費できる長さに制限された場合、アートやメディアにどのような影響を与えることになるのかについて、考えずにはいられませんでした。

ハートマンのコレクションについて考えたのです。どんな物語がそこにはあるのだろう、と。それがどのようなものなのか、その人が唯一にして最後に触れるものかもしれない一つ一つの言葉がどれほどの重みを持っているか、ということについて、何時間も考えを巡らせました。

そして、『デス・ストランディング』とは関係なく過去に作っていたオリジナルの物語がふと浮かびました。それは、人々が死ななくなったらどうなるだろうか、社会的、文化的、個人的にどのような影響を私たちの文明にもたらすことになるか、もしこの世界の誰も死ぬことがなく誰もが不死身であったとすれば、私たちの日常生活はどのように変化するのだろうか、というコンセプトのものでした。

個人的な話をすると、自分の知っている人が何人か亡くなり、自分は残された時間で何をしているのか、ということについて考えさせられました。私は筆を走らせ始め、「死亡猶予 (原題: A Reprieve From Death)」の物語が重層的に形作られていきました。この物語は発展し、複数の関係性が拡大し相互に構築されていきました。自分の心に共鳴するテーマだったためすぐに書き上げることができ、登場人物たちに強い共感の念を抱きました。

書き終えた時、この物語が『S-Fマガジン』に掲載されることを心から願いました。『S-Fマガジン』は最も権威があり、私が強い敬意を抱いている雑誌の一つです。編集者の梅田麻莉絵さんと東方綾さんには、この短編小説を取り上げていただき、とても感謝しています。

『メカ・サムライ・エンパイア』『サイバー・ショーグン・レボリューション (邦題未定、原題: Cyber Shogun Revolution)』の翻訳者である中原尚哉さんが翻訳を担当してくださったことも嬉しかったです。実は中原さんには、私のインスピレーションを掴んでもらうために、まずハートマンのトレーラーを見てもらうようお願いしていました。

“A Reprieve fro Death (原題) ”、「死亡猶予」は、10月25日に (『S-Fマガジン』で) 発表される予定です。ぜひ皆さんにこの物語を楽しんで頂きたいと思っています。私はこの物語のコンセプトやアイデアに強く惹かれており、将来の作品で更に拡張させることになるかもしれません。ですから、読者の皆さんは今回、より大きな物語の最初の段階を見ることになるのかもしれません。

小島秀夫監督とコジマプロダクションによる優れた一連のトレーラーと、多大なインスピレーションを与えてくれたことに感謝します。SNSで何度も言っていることですが、11月8日の『デス・ストランディング』発売が待ち遠しいです。


ピーター・トライアスの新作短編小説「死亡猶予」が掲載される『S-Fマガジン』2019年12月号は、10月25日(金)に発売。

「死亡猶予」に多大なインスピレーションをもたらした小島秀夫監督によるPS4用ゲーム『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』は、11月8日(金) に世界同時発売。


Statement for Releasing “A Reprieve from Death” by Peter Tieryas

As far back as I can remember, Hideo Kojima’s trailers have inspired me. Back when I was first starting in the game industry, I watched the MGS2 trailer multiple times, in awe at its visuals and cinematography. I watched Naked Snake from MGS3 do his halo jump many times over and was mesmerized by the ballet of violence as Raiden fought Vamp in the MGS4 trailer and made poetry out of a sword fight. The MGS5 trailers haunted me with its ruminations on language and identity. So when it came time for Death Stranding, I was enthralled by what I saw.

As with all of Kojima Kantoku’s works, the gameplay is intertwined with the story and narrative. Life is used to defeat death. I love how Sam Porter Bridges uses guns made out of his own fluids, showing how in fighting the BT monsters, blood, urine, and sweat are your most effective weapons. When you think about it, it’s a brilliant way of conveying what in essence makes us tick. The fact the Sam has to take a piss and use the toilet means he’s still alive, which is important to recognize when you’re surrounded by death. In the trailer featuring the character, Heartman, he boils down his existence into basic functions, pointing out how “defecation, ablution, and nutrition” fit into the time slot of his limited existence. Life negates death, and vice versa. There are constant reminders of Sam’s humanity in the gameplay, whether it’s massaging his shoulders and taking a rest to save the game, or relaxing in a hot spring and chilling with the Bridge Baby.

The above mentioned Heartman trailer in particular seized my imagination. He’s a man who dies every 21 minutes and has been to the land of the dead 218,550, which comes out to about ten years. There’s numerical significance too, as the 21 ounces is purportedly the weight of a soul and Heartman returns every 3 minutes, a seeming nod to Christian symbology and the resurrection.

I watched the Heartman trailer multiple times and I couldn’t help but wonder how movies, stories, music, and games limited to 21 minute consumable lengths would affect the arts and the mediums. I tweeted the question, how different would storytelling be knowing it runs the length of a person’s life?

I thought about all this as I pondered Heartman’s library. What kind of stories would be there? I spent many hours imagining what they would be and how much gravity every word and scene must have since it might be the only, and final thing, a person might see.

There was an original story idea unrelated to Death Stranding I’d been playing with in the past that immediately came to mind which began with the concept, what if people stopped dying? What kind of social, cultural, and personal effect would it have on our civilization? If no one in the world died and everyone was immortal, how would that change everyday life?

On a more personal level, several people I knew passed away and it had me thinking about what I’m doing with the time I have left. I began writing and the story of “A Reprieve From Death” began to form in layers. It grew so that there’s multiple relationships that expand and build on one another. It was fast writing because it was a theme that resonated with me and I felt a strong sense of empathy with the characters. When I finished, I really hoped it could be in S-F Magazine, which is one of the most prestigious around and a magazine I greatly admired. I was so grateful to my editors, Marie Umeda and Aya Tobo for taking on the short story. I’m also so excited that my translator for Mecha Samurai Empire and Cyber Shogun Revolution, Naoya Nakahara, translated the story. I actually asked him to watch the Heartman trailer first to get an idea of my inspiration.

“A Reprieve from Death,” 「死亡猶予」is coming out on October 25th and I really hope fans enjoy the story. I’ve been really fascinated by the concepts and ideas within the story and may even expand on it in future works. So it may be you are seeing an early preview of something bigger. Big thanks to Hideo Kojima and Kojima Productions for a wonderful series of trailers and being so inspiring. I’ve said it many times on social media, but I can’t wait for the game’s release on November 8th.

VG+編集部

VG+編集部

映画から漫画、ゲームに至るまで、最新SF情報と特集をお届け。
お問い合わせ

関連記事

  1. 「政治的な発言はやめろ」指摘にSF作家が反論「私はSNS上で政治的な発言をします」

  2. ピーター・トライアス新作はMGS2のテーマから影響——『サイバー・ショーグン・レボリューション』

  3. 同人作品のプラットフォームにSF最高賞——ヒューゴー賞を受賞した AO3 が築いたものとは

  4. ケン・リュウ 「もののあはれ」が説いたヒロイズム  英雄なき世界の生き方

今週の人気記事

新着記事

今月の人気記事

PAGE TOP