『メカ・サムライ・エンパイア』が星雲賞受賞
2019年7月27日(土)、第50回星雲賞の受賞作品が発表され、ピーター・トライアスの『メカ・サムライ・エンパイア』が海外長編部門を受賞した。星雲賞の受賞作品は、日本SF大会に参加するSFファンの投票によって決定される。ピーター・トライアスは2017年にも前作『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』で同賞を受賞しており、二作連続での受賞を達成した。
第50回星雲賞
海外長編部門はピーター・トライアス『メカ・サムライ・エンパイア』
中原尚哉 訳ピーター・トライアスは『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』に続き二作連続で受賞👏👏👏👏
翻訳者の中原尚哉は劉慈欣の「円」とW受賞!#sf58 #星雲賞 pic.twitter.com/37IJGgjdmA
— VG+ (バゴプラ) (@vagopla) July 27, 2019
ダン・シモンズ以来の快挙
『メカ・サムライ・エンパイア』は『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』と世界観を共有する「USJ」三部作の第二作目。第二次世界大戦で大日本帝国とナチスドイツが勝利した後の世界を舞台にした歴史改変SFで、日本文化への深い理解と爽快なメカアクションが日本のSFファンのハートを射止めたようだ。同一シリーズの星雲賞二作連続受賞は、ダン・シモンズが1995年に『ハイペリオン』、1996年に『ハイペリオンの没落』で連続受賞して以来の快挙だ。
中原尚哉、小島秀夫への感謝
今回の星雲賞の贈賞式では、『メカ・サムライ・エンパイア』の翻訳を担当した中原尚哉が登壇。ピーター・トライアスは受賞メッセージで中原尚哉を「翻訳者である共同制作者」と表現し、謝意を表明した。中原尚哉によると、ピーター・トライアスは『メカ・サムライ・エンパイア』に登場する日本文化に関する要素について、徹底的に質問と確認を行い、修正を繰り返していたという。なんとその修正期間は10ヶ月にも及んだというから驚きだ。
登壇した翻訳者の中原尚哉
最後に読み上げられたコメントでは、ゲームクリエイターの小島秀夫監督にも言及。「私と世界中のクリエイターにインスピレーションを与えている小島秀夫監督に、心からの感謝を申し上げます」と感謝の言葉を綴り、小島秀夫監督の存在なしにはこの『メカ・サムライ・エンパイア』は存在し得なかったと、その影響の大きさを改めて語った。小島秀夫監督への感謝の言葉が読み上げられると、会場からは「おぉ!」と驚きと歓声が入り混じった声が上がった。
受賞コメントを入手
また、VG+では、独自にピーター・トライアスからの受賞コメントを入手した。ピーター・トライアスからファンへの深い感謝が語られている。
——第50回星雲賞外国部門賞受賞を受けて
ファンの皆さんに心から感謝しなければいけません。2年前、ドンブラコンLL [2017年日本SF大会] に出席するために初めて日本を訪れた時の、ファンの皆さんとの感動的な出会いを思い出します。皆さん素敵で、フレンドリーで、思いやりのある方々でした。皆さんとお話し、またお話を聞き、日本のゲームや映画への愛をシェアでき、楽しい時間を過ごすことができました。
このような大きな名誉を頂けたことを非常に嬉しく思うと同時に、本当に皆さんを恋しく思います。近いうちに皆さんと再会できることを願っています!改めて感謝申し上げます!
by ピーター・トライアス
次回作は『サイバー・ショーグン・レボリューション』
2020年3月には米国で第三作目の『サイバー・ショーグン・レボリューション (邦題未定、原題: Cyber Shogun Revolution)』が発売される予定だ。メカアクションがふんだんに盛り込まれた『メカ・サムライ・エンパイア』に比べ、『サイバー・ショーグン・レボリューション』ではポリティカル・スリラーの要素が強くなるという。日本版の詳細発表を待とう。