『三体』含む劉慈欣の英訳 販売部数は100万部超——加速する中国出版業界の“グローバル化”

ライター

中国出版業界の“グローバル化”

『三体』劉慈欣は英独でも人気

6月7日、中国中央電視台で放送された番組で、出版業界関係者らが中国における出版業界の“グローバル化”について話した。人民日報が伝えている。

やはり同番組の中でスポットライトを浴びていたのは、アジア初のヒューゴー賞受賞作品である劉慈欣 (リュウ・ジキン) の『三体』だ。日本でも早川書房より2019年7月4日に日本語版が発売される。『三体』の中国国外への版権販売を担当している中国教育图书进出口有限公司 (China Educational Publications Import and Export Co.、以下 CEPIEC) によると、2018年末までに劉慈欣の作品は英語版で100万部、ドイツ語版だけでも20万部の売り上げを記録しているという。ドイツでは2016年12月に『三体』が発売され、2018年3月に次作の『黒暗森林』が、2019年4月に「三体」トリロジーの最終巻となる『死神永生』が発売されている。

海外人気の要因とは

一方で、ドイツ語版の編集者である Sebastian Pirling によると、劉慈欣の作品が中国国外でこれほどまでの人気になるとは予測していなかったという。それでも、『三体』を含む劉作品の販売部数が好調を維持している理由は、翻訳者の努力や中国作品のオリジナリティといった要因もあるが、中国国内での成功によって読者が世界中に拡散したと、Pirlingは分析している。また、劉慈欣自身が中国SF作品を海外へ向けて発信することに門戸を開いているということ郝景芳 (ハオ・ジンファン)、陳楸帆、夏笳、宝樹といった若いSF作家がSFというジャンル全体を前進させていることも、中国SF躍進の理由として付け加えている。

海外展開は新たな時代に

また、CEPIECは、SFだけでなく45分野の語学書を120の国で販売し、2015年以降で1億5900万ドル(約171億円)の売り上げを記録しているという。“慎重な翻訳者選び”と“専門家との協働”、そして“欧米のソーシャルメディアの活用と国際的なブックフェアへの積極的な参加”を、その成功の理由にあげている。北京語言大学出版社の代表・Hao Yunは「中国語書籍の海外展開は新時代を迎えています」と話す。中国の出版社の関心は、一つ一つの作品の権利をいかに売買するか、という視点から、より綿密な計画を立てるために海外支社を設置する方向に向いているというのだ。

出版界でも進む“輸出”

2018年、中国は海外から18,000作品のコピーライトを購入し、自国からは海外へ14,000のコピーライトを販売したという。この比率は1.28対1となっており、10年前の6.9対1に比べて、“輸出”の割合が大幅に上昇している。2019年は劉慈欣原作のSFブロックバスター『流転の地球』の大ヒットが話題になった。SF映画界においても国際市場で闘えるということを示したが、出版業界も着実に“グローバル化”を進めているようだ。

劉慈欣 (リュウ・ジキン) の『三体』日本語版は、立原透耶 監修、大森望 光吉さくら ワン チャイ 翻訳で早川書房より2019年7月4日発売予定。

– Source –
人民日報

VG+編集部

VG+編集部

映画から漫画、ゲームに至るまで、最新SF情報と特集をお届け。
お問い合わせ

関連記事

  1. ヒューゴー賞の光と影ーーパピーゲート事件がSF最高賞に与えた衝撃

  2. 戦争の忘却に警鐘——小松左京「戦争はなかった」

  3. 『メカ・サムライ・エンパイア』オーディオブックに、『高い城の男』で木戸大尉を演じたジョエル・デ・ラ・…

人気記事

新着記事

hulu
PAGE TOP