勝山海百合の「てのひら怪談」作品が海外三誌に登場
勝山海百合の掌編計5作品が三ヶ国のマガジンに登場する。いずれの作品も「てのひら怪談」と呼ばれる掌編ホラーの作品で、チェコのThe Cafe Irrealに「朝の庭」「魚怪」「人参採り」が、スコットランドのFrozen Waveletsに「呪いと毒」が、ルーマニアのGalaxia 42に「軍馬の帰還」「とりひき」が掲載される。
チェコのThe Cafe IrrealとスコットランドのFrozen WaveletsにはToshiya Kameiによる英訳作品が掲載される。The Cafe Irrealは1998年からオンラインで刊行されている老舗マガジンで、2008年には同誌の共同編集者二人が世界幻想文学大賞にノミネートされている。今回同誌に収録される勝山海百合の「朝の庭」は、2020年の世界SF大会 CoNZealand での朗読で初公開された作品で、勝山海百合のブログでも読むことができる。
勝山海百合の三作品が掲載されたThe Cafe Irrealの最新号 #76 は2020年11月に公開され、ウェブ上で読むことができる。
スコットランド誌のFrozen Waveletsは掌編と詩を掲載するオンラインマガジン。2019年秋にスタートしたばかりの新興マガジンで、これまで4号が発表されている。Toshiya Kameiが英訳した勝山海百合の「呪いと毒」は近日中に掲載される予定となっている。
ルーマニアのGalaxia 42には、Osamu Kaikouの英訳から重訳した「とりひき」「軍馬の帰還」のルーマニア語版が掲載。Galaxia 42はルーマニア語でファンタジーとSF文学およびアートを紹介するファンジン。同誌ではルーマニア語だけでなく英語の取材記事や小説も読むことができる。勝山海百合の作品が掲載されるのは2020年12月号。
Schimbul (とりひき) Caii se întorc de la război (軍馬の帰還)
勝山海百合は、「軍馬の帰還」で第4回ビーケーワン怪談大賞で大賞を受賞したことで知られる。ビーケーワン怪談大賞では800字以内の“てのひら怪談”を公募し、優れた応募作品をまとめた「てのひら怪談」シリーズで数々の作家を輩出した。今回海外誌に掲載される「魚怪」「呪いと毒」「軍馬の帰還」も『てのひら怪談―ビーケーワン怪談大賞傑作選』(2007)に収録されている。
勝山海百合の「てのひら怪談」はここ最近だけで、「魚怪」がInsignia StoriesのHORROR MATSURIに、「白桃村」が豪AntipodeanSFに、「軍馬の帰還」が英Fudoki Magazineに掲載されている (いずれもToshiya Kameiによる翻訳)。オンラインで読める掌編小説が興隆を極める今、改めて「てのひら怪談」が世界で読まれているのだ。
なお、勝山海百合の作品では、第一回かぐやSFコンテストで大賞を受賞した「あれは真珠というものかしら」は、イーライ・K・P・ウィリアムによって英語に、田田によって中国語に翻訳されて公開されたばかり。同作はToshiya Kameiの手でスペイン語にも翻訳され、Nagari Magazineにも掲載されている。
“世界の海百合”の快進撃は、まだまだ続きそうだ。