ネタバレ解説&考察『室井慎次 生き続ける者』青島俊作はどうなったのか 定年はいつ? 今後は? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『室井慎次 生き続ける者』青島俊作はどうなったのか 定年はいつ? 今後は?

ⓒフジテレビジョン

『室井慎次 生き続ける者』公開

2024年10月から公開されている映画『室井慎次 敗れざる者』の後編にあたる映画『室井慎次 生き続ける者』が2024年11月15日(金) より全国の劇場で公開された。「踊る大捜査線」最新作にして、柳葉敏郎演じる室井慎次が12年ぶりに帰ってくる本作では、やはりあの人にも注目が集まった。

その人とは、織田裕二演じる青島俊作である。「踊る大捜査線」といえば、現場の刑事である湾岸署の青島俊作と、キャリア組の警察である室井慎次の友情と衝突、そして警察の組織改革をめぐる物語という一面があった。「室井慎次」二部作では警察を辞めた後の室井慎次の姿が描かれたが、「踊る」のもう一つの心臓である青島俊作はどうなったのか、『室井慎次 生き続ける者』のネタバレありで解説&考察していこう。

なお、以下の内容は『室井慎次 敗れざる者』および『室井慎次 生き続ける者』の結末までのネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『室井慎次 生き続ける者』の結末に関するネタバレを含みます。

『室井慎次 生き続ける者』青島俊作はどうなった?

カムバックした青島俊作

映画『室井慎次 生き続ける者』で最も観客を盛り上げた瞬間は、ポストクレジットシーンで青島俊作が登場した瞬間だろう。前作『敗れざる者』では、新城賢太郎の口から青島が警視庁の捜査支援分析センターに所属していることが明かされた。かつての和久平八郎の「偉くなって警視庁に行け」という助言が現実になったのだ。

一方、『室井慎次 生き続ける者』では最後の最後まで青島は登場せず。室井は狭心症を発症したこともあり、帰らぬ人となってしまった。それでも、室井家には室井の遺志を継ぐ多くの人が訪れて手を合わせた。青島が愛し、室井が引退後に食べていたキムチラーメンのカップ麺をお供えする人もいる。そこに最後の最後で登場したのが青島で、やっぱりあのミリタリージャケットを着て現れた。

青島俊作とそれを演じる織田裕二は共に1967年12月13日生まれで、『室井慎次 生き続ける者』の時点で56歳。29歳で湾岸署にやってきた時から27年。四半世紀以上の時が経ったのだ。だが相変わらずな雰囲気を漂わせている青島は、着信を受けて慌ただしく来た道を戻っていく。電話の相手に放った「戻ります……」というセリフは、観客にも向けられたものだろう。

室井は青島と話していた?

青島が室井と会う場面が描かれなかったのは残念だが、『室井慎次 生き続ける者』では、室井と青島が連絡をとっていたのではないかと考察できる場面もある。飯島直子演じる石津紀子、小沢仁志演じる石津百男の夫妻は息子が東京に出て以来帰ってこないという話を病院で室井にしていた。室井の死後には夫妻の元を息子が訪ねてきて、室井から頼まれた刑事が親に顔を見せるよう言いに来たと明かしている。

室井は警察を辞めてから3年近くが経過しており、室井が個人的な用事を頼める“東京の刑事”となると数はかなり限られているはずだ。あの室井さんだもの。それに、人情派刑事の青島俊作が石津家の息子を訪ね、「Love Somebody」オルゴールバージョンをBGMにして病院に通う老いた両親に会いに行くように説得するシーンは容易に想像できる。

もし室井が声をかけたのが青島だったとすれば、室井は青島に連絡を入れたことになる。室井は「自分に何かあったら」と子ども達の預金通帳を地区長の長部に預けており、自分の死期が近いことを悟っていたと考えられる。ちゃんとした診断のシーンはカットされていたが、室井は具体的な余命も宣告されていたのかもしれない。

そんな状況であれば、室井が青島に電話を入れたとしてもおかしくはない。「室井慎次」二部作で青島が最後にしか登場せず、きりたんぽを食べる約束も果たせず、手も合わせて行かなかったことは、ともすれば冷たさも感じてしまう展開だった。だが、室井と青島が石津家の家族問題をきっかけに電話越しにでもゆっくり対話する時間を持てていたとすれば、それで十分な気がする。

一方で、石津家の息子を訪ねた東京の刑事は、室井が捜査に協力して貸しがあった桜章太郎だったという可能性もある。それはそれで、“室井がいかにも青島に頼みそうなこと”を頼める若手が登場したと考えれば良いことではある。幸い桜は青島と同じ警視庁刑事部にいる。今後の「おどる」シリーズで二人の会話から真相が語られることに期待したい。

青島の今後はどうなる?

青島の定年はいつ?

気になるのは、青島俊作の今後について。一部報道では今後の「踊る大捜査線」シリーズでは青島を主役に据えたドラマと映画が展開されることが報じられている。映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012) の公開時には、織田裕二は他の人が演じるくらいなら自分が(もう一度)やる、青島を定年まで演じたいとメディアで語っていた。ドラマシリーズの和久さんの年齢にも近くなっている青島だが、あとどれくらいの時間が残されているのだろうか。

ドラマ版で和久さんが60歳で定年を迎えたように、これまで日本の公務員の定年は60歳だった。しかし、2023年から公務員の定年延長が始まっており、2032年まで2年に1歳ずつ定年の歳が引き上げられ、65歳まで延長されることになった。2023年から2032年までの期間は、生まれ年によって定年時期が異なる移行時期ということになる。

実は、この定年延長がフルで適用される最初の世代が1967年4月2日〜1968年4月1日生まれの人々で、1967年12月13日生まれの青島俊作はピッタリこの世代に当てはまる。2032年に65歳を迎える青島は、公務員の定年が65歳に延長された最初の世代として定年の時を迎えることになりそうだ。

なんなら公務員の定年延長が始まったことで青島のカムバックが決定したのではないかと邪推できるくらいのグッドタイミング。青島は、60歳の時点でも慢性的な腰痛を抱えて苦労していた和久さんよりも5年長くフルで働かなければならない。高齢者の闇バイト応募が社会問題として取り沙汰される高齢化社会を描くには、ピッタリなキャラなのかもしれない。

青島とかつての「踊る」メンバー

また、青島はかつての和久の助言通りに警視庁に行くことができたが、同時に和久と同じく定年を前に若手に教えを与える立場になっている。いつまでも若いつもりが責任ある立場になっていて……というのは現実でもあるあるだが、視聴者にとっても若いイメージのままの青島が、かつての和久のように振る舞えるのかという点にも注目だ。

一方、和久は新人の青島に教えを与える立場ではあったが、定年を前に警察の仕事に対する諦めのような感情があった。おそらく青島には情熱が残っていて、その情熱が和久に足りなかった部分を補ってくれるだろう。青島には、松下洸平演じる桜章太郎らを「踊る」ユニバースの新たな主人公に育てるくらいの活躍を期待したい。

「踊る大捜査線」のかつての面々で言えば、もはや青島の近くに残っているのは真矢ミキ演じる沖田仁美くらいだろうか。その沖田も警察庁長官官房審議官というお偉いさんになっているが、かつての青島×室井のようなコンビプレーが新作映画で観られるなら胸熱だ。

かつて管理官として青島と対立した人物で言えば、新城賢太郎は自分が室井と青島の約束を果たすと意気込んでいるが、別に青島自身もその約束を諦めたわけではないだろう。秋田県警からボトムアップで「室井モデル」の実現を目指す新城と、警視庁の青島、警察庁の沖田がチームプレーで警察組織を改革していく姿も見てみたい。

青島と恩田すみれのその後

最後に触れなければいけない存在が恩田すみれだ。青島とすみれと言えば、かねてから二人が一緒になることを望むファンが多いカップリングとして知られる。なかなか進展がないまま「踊る」シリーズは『THE FINAL』を迎えたが、青島を主人公とした「踊る大捜査線」が再び動き出すのであれば、二人の今後にも注目せざるを得ない。

『室井慎次 生き続ける者』では、室井慎次の口から恩田すみれの名前があがった。すみれが国見に撃たれた後遺症で今でも苦しんでいることが明かされたのだ。それに、すみれの「家族」も苦しんでいると。だが、気になるのは室井がなぜすみれの現状を知っているのかということだ。

『THE FINAL』の一ヶ月前を舞台にしたテレビスペシャル『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』では、室井と恩田すみれは真下署長から結婚を前提としたお付き合いを勧められた。これを拒否した室井は、「どうなんだ? 青島は」とすみれに青島を勧めている。つまり、すみれと青島は室井がかねてから気にかけていたカップリングなのだ。

室井がすみれの現状を知っていた理由は、やはり直近で青島と話をして、すみれの現在について聞いていたからではないだろうか。そして、「苦しんでいる家族」というのがほかでもない青島のことだったとすれば……。青島が直接すみれとやり取りをしていない限りは、すみれの現在を知っている人物というのは相当限られるはず。「苦しんでいる」という状況には胸が痛くなるが、青島とすみれが一緒になったという可能性が示されたワンシーンでもあった。

これら全ての考察はきっと、青島俊作を主人公に据えた「踊る大捜査線」新シリーズで、そう遠くない内に明かされることになるだろう。共に「踊る」の一時代を築いてきた和久が去り、室井も去った。青島はどんなキャリアの晩年を過ごすことになるのか、続報を楽しみに待とう。

映画『室井慎次 生き続ける者』は2024年11月15日(金) より全国の劇場で公開。

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『室井慎次 生き続ける者』ラストのネタバレ解説・考察・感想はこちらから。

恩田すみれはどうなったのか、『生き続ける者』を受けての解説&考察はこちらから。

『室井慎次 生き続ける者』の新庄賢太郎と「室井モデル」の考察はこちらから。

鳥飼誠一はどうなったのか、『THE FINAL』と『生き続ける者』を受けての解説&考察はこちらから。

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『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』ラストのネタバレ解説&感想はこちらから。

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香取慎吾が演じた久瀬智則についての解説&考察はこちらから。

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新城賢太郎と室井慎次の関係性、新城の過去作からの変化についての考察はこちらから。

『室井慎次 敗れざる者』では和久さんの想いを室井と青島がどのように引き継いだのかが明らかになった。詳しくはこちらの記事で。

『室井慎次 敗れざる者』に登場した弁護士・奈良の所属事務所についての考察はこちらから。

『室井慎次 敗れざる者』に登場した「踊る大捜査線」からの小ネタまとめはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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