ラストネタバレ解説 『ジュラシック・ワールド』 新たなる恐竜時代の幕開け 考察&感想 | VG+ (バゴプラ)

ラストネタバレ解説 『ジュラシック・ワールド』 新たなる恐竜時代の幕開け 考察&感想

© 2015 - Universal Pictures

新作を前に過去作をチェック!

現在、スカーレット・ヨハンソンを主演に新たなる物語が作られようとしている「ジュラシック・パーク」シリーズ。『ジュラシック・パーク』(1993)からはじまった「ジュラシック・パーク」シリーズは、現在では一大フランチャイズとなっている。その最新作を前に過去作のラストをチェックするのはいかがだろうか。

本記事では映画『ジュラシック・ワールド』(2015)のラストのネタバレ解説、考察、そして感想を述べていこう。なお、本記事は映画『ジュラシック・ワールド』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ジュラシック・ワールド』の内容に関するネタバレを含みます。

新テーマパーク『ジュラシック・ワールド』開園

『ジュラシック・パーク』の惨劇から22年後

イスラ・ヌブラル島でのジュラシック・パークのラストの惨劇と、イスラ・ソルナ島ことサイトBの事件から二十数年が経ち、ジョン・ハモンドのインジェン社はマスラニ・グローバル社に買収されていた。それによりイスラ・ヌブラル島はジュラシック・ワールドと名前を変え、サイモン・マスラニ社長のもとで新たなアミューズメント・パークと化していた。

運営責任者のクレア・ディアリングは甥のザックグレイに構う暇が無いほど忙しくしており、特に今は株主相手に新事業の説明をするべく駆けずり回っていた。その新事業が遺伝子改良ハイブリッドの恐竜、インドミナス・レックスの誕生だった。インドミナス・レックスの誕生とは禁忌とされた絶滅種の復活を越えた、新種の創造という神の領域に足を踏み入れることを意味していた。

ジュラシック・ワールドはかつてのジュラシック・パークのように電気の流れる柵で囲われておらず、恐竜を区画ごとに電子フェンスで管理していた。クレアはインドミナス・レックスにブライゾン社がスポンサーとして付くことを語るなど、恐竜を生き物ではなく、商品として見ていることが考察できる。恐竜の目を見れば感情がわかると語っていたマスラニ社長もインドミナス・レックスを生み出していることから命を軽視していると考察できる。

禁忌の領域

インドミナス・レックスは想像以上に身体が大きく成長し、餌の出どころを考えて脱走を試みるなど知能の高さを垣間見せていた。インドミナス・レックスは白い皮膚で、蛇のピット器官のようなものを持ち、熱で生物の居場所を察知していた。更には幼生時に共食いをするなど凶暴性も見せている。それを管理するため、ヴェロキラプトルの調教師で元海軍軍人のオーウェン・グレイディに白羽の矢が立った。

オーウェンは警備部門長であるヴィック・ホスキンスから、ヴェロキラプトルの軍事利用を持ち掛けられる。ヴェロキラプトルの知能を測るためのラプター・リサーチ・アリーナーで管理されているブルー、デルタ、エコー、チャーリーの4体のヴェロキラプトルを操ることができるオーウェンなら、野獣であるヴェロキラプトルを兵士の代わりに戦場に送り込むことも可能だとインジェン社は考察していたのだ。ヴェロキラプトルの名前はブルー以外、NATOフォネティックコードで名付けられていることから元から軍事転用が狙いだった可能性が高い考察できる。

しかし、それもまた禁忌の領域だ。自然と人類の間には決して交わってはいけない最後の一線というものがある。オーウェンはそれを熟知しており、ヴェロキラプトルを自分が操っているのではなく、あくまでも対等な関係になっているだけだと解説する。それを体現するようにヴェロキラプトルの飼育の現場で事故が起き、オーウェンは隙を見せるとヴェロキラプトルたちは容赦なく親代わりの人間を襲うと実践して見せた。

オーウェンは元恋人のクレアから、インドミナス・レックスの管理部門に所属するように要求されるが、2人の関係はギクシャクしている。ここでも、周囲の人間がオーウェンのことを、ヴェロキラプトルを手懐けている人物と考えていることが明らかになる。しかし、オーウェンは返す刀でヴェロキラプトルとは良好な関係を築いているだけだと語った。ここでもオーウェンの口からクレアが恐竜を生き物として見ていないことが指摘されている。

解放されたインドミナス・レックス

オーウェンとクレアはインドミナス・レックスを見に行くが、そこでオーウェンはインドミナス・レックスの社会性の欠如を問題視する。2021年4月19日に発表されたアメリカ合衆国のアーカンソー大学研究チームによれば、あのティラノサウルスですら群れで狩りをし、社会性を有していたことが考察されている。

生物学および医学の研究の査読済み科学メガジャーナル『PeerJ』に掲載された論文によれば、アメリカ・ユタ州南部にあるグランド・ステアケース・エスカランテ国定公園で発見された大量死したティラノサウルスの化石が、ティラノサウルスの群れが洪水に巻き込まれて死亡した可能性を示唆しているという。これが事実ならば、ティラノサウルスもオオカミなどと同じように社会性を持ち、群れで狩りをしていたことになる。これにはユタ州土地管理局もX(旧Twitter)で反応している。

土地管理局は、ティラノサウルスの社会行動に関する画期的な新研究を発表できることを誇りに思います!

それに対し、インドミナス・レックスにはその社会性が無い。ティラノサウルスを凌ぐ巨体を持ちながら共食いで孤独に過ごした結果、世界を餌か、そうでないかの2択でしか判断できないのだ。オーウェンはヴェロキラプトルの飼育の際に群れで社会性を学ばせ、生まれたときには刷り込みまで行い、ようやく対等な関係性を築けるほどの信頼を勝ち取ったと解説する。

そのとき、インドミナス・レックスが檻の中の熱センサーから姿を消す。壁には大量の爪痕が残されており、クレアは12m以上ある壁を登ったと考察して電子チップの反応を追うがインドミナス・レックスは檻の中にいた。インドミナス・レックスは自分のDNAに組み込まれたアマガエルのDNAを用いて体温を下げて熱センサーをかいくぐったのだ。そして、逃げようとした職員が門を開けることを利用し、インドミナス・レックスは自由の身となってしまった。

追跡するのか、追跡されるのか

クレアはインドミナス・レックスを追跡するため、警備部門を動かそうとするが、体面を気にしたマスラニ社長は静かに動くように命令する。しかし、すべてはインドミナス・レックスの方が上手だった。追跡する側の人類が、いつのまにか追跡される側に回っていたのだ。

近年、恐竜には羽毛が生えていたという学説が主流になりつつあるが、「ジュラシック・パーク」シリーズの恐竜には羽毛が無い。『ジュラシック・ワールド』で、その理由は欠けたDNAを近縁種だと考えられていた爬虫類や両生類のDNAで補ったためと解説されるのだが、インドミナス・レックスにはそれ以外の遺伝子も組み込まれていた。

インドミナス・レックスは追跡装置の電子チップを自分で抉り取り、追跡してきた警備部門を攪乱していた。体色を変えて隠れ、警備部門の全員が一か所に集まったところを襲ったのだ。知能の高さはヴェロキラプトルのDNAからで、成長促進のために組み込まれたコウイカのDNAが体色の変化を可能としていた。

複数の絶滅種の恐竜と複数の現存種を掛け合わせた怪物が、ザックとグレイのいるアミューズメント・パーク「ジュラシック・ワールド」に解き放たれた。焦ったマスラニ社長はジュラシック・パーク時代からDNA研究を進めていたヘンリー・ウー博士に研究の中止を命令するが、ウー博士は自分が研究を進めなくても別の誰かがこの禁忌を犯したと語るのだった。

崩壊する『ジュラシック・ワールド』とそのラスト

動き出す歯車

クレアはジャイロボールに乗っているザックとグレイを救うため、オーウェンを頼る。アンキロサウルスの飼育エリアの谷にいたザックとグレイのジャイロボールは、インドミナス・レックスとアンキロサウルスの戦いに巻き込まれてしまう。制御を失ったジャイロボールは簡単にインドミナス・レックスによって手玉に取られてしまった。何とかジャイロボールから脱出したザックとグレイは滝に飛び込み、間一髪逃げのびる。

そのようなことを知る由もないオーウェンとクレアは、インドミナス・レックスの殺戮現場を見ることになる。ジュラシック・ワールド最大の草食恐竜のアパトサウルスの最後の姿を見て、クレアは恐竜が展示物ではなく生き物だと実感する。食べた痕跡の無いアパトサウルスの死体の山を見てオーウェンは、インドミナス・レックスが遊びで命を奪っていることを考察した。

その頃、警備部門長であるホスキンスはこの機会を良いことに恐竜の生体兵器への転用実験を行なおうとしていた。インジェン社の上層部によって様々な軍事物資が船を使って送り込まれてくる。ホスキンスは上層部と裏で繋がっており、ヴェロキラプトルの軍事転用の機会をずっとうかがっていたのだ。

インジェン社の軍需産業

クレアとオーウェンが追っていることなど露知らず、インドミナス・レックスから逃げ続けるザックとグレイ。2人はジュラシック・パーク時代の施設を発見する。そして、そこに残された『ジュラシック・パーク』で登場した職員用のSUVの1993年型ジープ・ラングラーも発見し、それを修理して脱出しようとするのだった。

ホスキンスはマスラニ社長にヴェロキラプトルの軍事転用を提案する。インドミナス・レックスはピット器官による熱感知で、観光客が集まっているエリアを発見し、そこに向っていた。ラプター・リサーチ・アリーナーも、そこで行なわれていたIBRIS(統合行動猛禽類知能調査)計画もすべてがヴェロキラプトルの軍事転用が目的だったと知ったマスラニ社長は、ヘリからの電動式ガトリングガンM134の掃射でインドミナス・レックスを殺害しようと画策していた。

しかし、ヘリからの攻撃を受けたインドミナス・レックスは翼竜ドームに突入し、そこにいた翼竜たちを外に追い立てる。バードストライクならぬ翼竜ストライクによってヘリは墜落し、マスラニ社長は死亡。インジェン社は軍事産業に歯止めをかけていたマスラニ社長を失ったことでヴェロキラプトルの軍事転用へと舵を切るのだった。それを後押しするように解き放たれた翼竜たちが観光客を襲っていく。

危機管理部門の支配

マスラニ社長の死を利用し、インジェン社の危機管理部門がジュラシック・ワールドの制御室を占拠する。そして、そのリーダーに就任したホスキンスはヴェロキラプトルを使ったインドミナス・レックスの追跡の実地テストを実行しようとしていた。手を貸すか、出ていくかという取引のもと、オーウェンはヴェロキラプトルによる追跡作戦に参加する。

ホスキンスが制御室、オーウェンが現場責任者になったことで、ヴェロキラプトルの軍事転用の実地テストが行なわれることになった。ヴェロキラプトルはインドミナス・レックスの居場所を突き止めるが、そこから様子が一変する。インドミナス・レックスのDNAにはヴェロキラプトルも組み込まれており、ヴェロキラプトルと意思疎通が可能だったのだ。

社会性が無いはずのインドミナス・レックスがヴェロキラプトルと手を組むのは少々不思議だが、ヴェロキラプトルは人類とインドミナス・レックスを比較して優位な側についたと考察できる。ヴェロキラプトルがインドミナス・レックス側に着いたことで現場は総崩れを起こす。その頃、ウー博士はホスキンスと共謀し、恐竜の胚の転売の証拠をもみ消しており、それによって現場はおろか制御室も崩壊しはじめる。

ホスキンスは研究室でヴェロキラプトルの軍事転用から手を切り、インドミナス・レックスを軍事兵器として販売しようとしていた。そこにヴェロキラプトルが飛び込んでくる。ホスキンスは「自分は味方だ」と言うが、何度も忠告されたようにヴェロキラプトルにそのような意識は無い。ヴェロキラプトルに食い殺されたホスキンスに対し、オーウェンはヴェロキラプトルの監視装置を外すことで信頼を取り戻そうとする。

ティラノサウルスの“復活”

ヴェロキラプトルがオーウェンの味方に付いたが、それでもインドミナス・レックスには敵わない。そこで思いついたのが、ジュラシック・パーク時代から20年以上生き続け、ときにはヴェロキラプトルとも戦い、そして現在は9番パドックことティラノサウルス・レックス・キングダムに囚われているティラノサウルスの女王、レクシィを解放することだった。

「ジュラシック・パーク」シリーズの顔とも言えるティラノサウルスのレクシィは第1作『ジュラシック・パーク』を想起させる山羊の捕食ショーが開催されるなど、ジュラシック・ワールドの顔にもなっている。その首筋にはかつてのヴェロキラプトルとの戦いでついた爪痕が残されており、『ジュラシック・パークⅢ』(2001)でティラノサウルスを破ったスピノサウルスの骨格模型を破壊する形で登場した。

歯が多いティラノサウルスでも、インドミナス・レックスには劣勢を強いられる。しかし、そこにヴェロキラプトルのブルーの加勢も加わり、状況は逆転。レクシィによってモササウルスの水槽の前に押し込まれたインドミナス・レックスは、そのままモササウルスによって水の中へと引きずり込まれていった。

すべてが終わるとレクシィとブルーはイスラ・ヌブラル島の自然の中に帰っていき、映画『ジュラシック・ワールド』、そしてアミューズメント・パーク「ジュラシック・ワールド」の最後を告げるのだった。ラストのティラノサウルスの咆哮により、イスラ・ヌブラル島が自然に返ったことを感じさせるものとなった映画『ジュラシック・ワールド』。

そして、このラストから『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)や『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022)へと続いていくことになる。現在、スカーレット・ヨハンソンに新作のオファーがかかっているとの米Hollywood Reporterの報道もある。一度、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』で完結した「ジュラシック・パーク」シリーズがどのように“復活”するのか期待だ。

『ジュラシック・ワールド』はAmazonプライムほかで配信中。

『ジュラシック・ワールド』配信ページ

Source
PeerJ/Bureau of Land Management Utah X/Hollywood Reporter

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『ジュラシック・ワールド』の出演俳優と吹替声優はこちらから。

「ジュラシック・パーク」シリーズの第7作目に関する記事はこちらから。

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』から『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』までのブルーの道のりはこちらから。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』エンディングのネタバレ解説はこちらから。

【ネタバレ注意】第1作目以来の登場となったルイス・ドジスンの30年間はこちらの記事で。

メイジー役のイザベラ・サーモンが語った今後についてはこちらの記事で。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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