『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』ルイス・ドジスンに注目
映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が2022年7月29日(金) より日本全国の劇場で公開。「ジュラシック・パーク」シリーズの第6作目にして、「ジュラシック・ワールド」三部作を締めくくる作品だ。
今回注目したいのは、シリーズ第1作目『ジュラシック・パーク』(1993) 以来の登場となったルイス・ドジスンについて。第1作目ではキャメロン・ソアが演じたが、その後キャメロン・ソアは性的暴行で逮捕され、本作ではキャンベル・スコットが新たに演じている。本作ではApple社のティム・クック風の姿を見せているあの人だ。
ルイス・ドジスンはバイオシン社の人間で、『ジュラシック・パーク』では作品の序盤でパークで働くネドリーを買収するチョイ役で登場。あのサングラスに赤シャツを着て「名前を呼ぶな」とネドリーに注意する人物だ。この時はネドリーに「ドジスンがいるぞ! いや、誰も知らんよ」と馬鹿にされていたルイス・ドジスンだが、『新たなる支配者』ではバイオシン社のCEOとして登場した。物語の中でも重要なポジションに就いている。
大出世を果たし、約30年ぶりの復活となったルイス・ドジスンは、どのような道を経てここまでたどり着いたのだろうか。
ルイス・ドジスンのこれまで
バイオシン社で働いていたルイス・ドジスンは、『ジュラシック・パーク』ではパークを経営する競合であるインジェン社の恐竜のDNAを盗むため、システムエンジニアのデニス・ネドリーを買収。75万ドルの前金と、15種の胚(はい)1つにつき5万ドルのボーナスを提示している。合計で150万ドル、日本円で1億5,000万円にのぼる報酬で、待遇に不満を持つネドリーは大喜びでこの仕事を受けている。
ドジスンはネドリーに、底に胚を仕舞う仕掛けが付いたシェービング・クリームの缶を渡す。ネドリーは胚を盗んで島を脱出するつもりだったが、雨の中、エリマキのついたディロフォサウルスに襲われて缶を落としてしまう。結局インジェン社の恐竜データがバイオシン社に渡ることはなかったのだ。
その後のルイス・ドジスンについては、続編の小説版で自らパークの恐竜の卵を奪おうと乗り込んだ末に死亡しているが、映画正史の方では意外なところに情報が出ている。それは、映画と連動して公開されたディノトラッカーという恐竜情報サイトの中にある。
このサイトは各地で目撃された恐竜の情報が集まるサイトという設定だが、イタリアのドロミーティ山脈のあたりを見ると、バイオシン社の本部の情報を見ることができる。
この情報によると、バイオシン社は1977年に創業。1993年にジュラシック・パーク事件が起きるわけだが、そこから20年後の2013年にルイス・ドジスンがバイオシン社の3代目CEOに就任している。よほど優秀だったのだろう、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の時点で、ドジスンはCEOになってから10年近くが経過していることになる。
以下の内容は、映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』とアニメ『ジュラシック・ワールド/サバイバルキャンプ』シーズン5の内容に関するネタバレを含みます。
スピンオフアニメにも注目
だが、ルイス・ドジスンの情報はこれだけではない。必見なのは、2020年から配信されているアニメ『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』の最終シーズンとなるシーズン5の第6話。2022年6月10日の米国公開の後、7月21日にNetflixで配信されたシーズン5では、アニメ版のドジスンの姿が描かれている。肩書きはバイオ・シン社の研究所の所長とされている。
『サバイバル・キャンプ』は作中で半年ほどの時間が経過するが、2018年の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』と時系列を共にする作品であり、この時期のルイス・ドジスンは、『新たなる支配者』の約3〜4年前の姿ということになる。このエピソードでは、ドジスンはインジェン社の別のライバル企業であるマンタ社から恐竜をマインドコントロールできるチップを紹介され、マンタ社によるバイオシン社へのデモンストレーションが描かれる。
ルイス・ドジスンは恐竜を手中に収める目的を「マスラニとハモンドのために」と、パークとワールドのオーナー達の名前を挙げ、やはり偽善的な態度をとっている。なお、『ジュラシック・ワールド』(2015) で描かれた通り、パークの運営に失敗したハモンドのインジェン社を買収したのがマスラニで、マスラニが2005年にジュラシック・ワールドをオープンしている。
先述のようにルイス・ドジスンは、2013年にはバイオシンのCEOに就任している。これはジュラシック・ワールドが閉鎖される2年前のこと。『サバイバル・キャンプ』では、『ジュラシック・ワールド』の事件が起きた直後の2015-2016年にドジスンがジュラシック・ワールドを訪れていたことになる。
あの缶の謎が明らかに
アニメ『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』では、ルイス・ドジスンは恐竜をマインドコントロールするチップを購入し、更にシーズン5第8話では恐竜のDNAサンプルを要求している。結果、この計画は頓挫するのだが、ルイス・ドジスンは約30年にわたりずっと恐竜を手中に収めることに執念を燃やし続けていたことが分かる。最終的に『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では恐竜にチップを埋め込み移動させる技術を確立しているのだから大したものである。
そして、『サバイバル・キャンプ』が重要なのは、『新たなる支配者』の謎が一つ回収されている点だ。『新たなる支配者』の終盤、保護区から逃げ出そうとするドジスンは、自室に置いてあったシェービング・クリームの缶を持って逃げる。『ジュラシック・パーク』でネドリーに託した胚回収用の缶だ。
第1作目でネドリーがパークに落とした缶をバイオシン社がどうやって回収したのかは、映画版で明かされることはなかった。だが、その事実は『サバイバル・キャンプ』シーズン5第6話で描かれている。マンタ社がデモンストレーションをするためにパークを回る中で、ドジスンは偶然このシェービングクリームの缶を拾うのだ。
この時、缶を拾ったドジスンは「これが25年前にあればな」と、今では役に立たないことを示唆している。確かに、『ジュラシック・パーク』では、ドジスン自ら缶の機能について「冷凍状態が続くのは36時間」と、胚を保存しておくには制限時間があることを説明している。
ドジスンはこの缶を持ち帰り、『新たなる支配者』でも大事に持ち出すのだが、実はこの缶は、とっくに「役に立たないただの思い出の缶」になっていたということだ。やはりドジスンはロジックの人というよりも、執念深い感情の人だと考えられる。
なお、『サバイバル・キャンプ』で缶を回収するドジスンは、ネドリーを襲ったエリマキのあるディロフォサウルスに襲われる。ずっとこの場所をテリトリーにしていたのだろう。この時はドジスンは一命を取り留めるが、『新たなる支配者』では改めてネドリーと同じくディロフォサウルスの餌食になってしまった。
俳優が語るルイス・ドジスン
ここまで見ると、なんだか不思議な魅力も感じられるルイス・ドジスン。その内面は一体どのような人物なのだろうか。『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でルイス・ドジスンを演じたキャンプベル・スコットは、米VarietyRadioOnlineでこう語っている。
皆さんが彼について話している内容はたくさん見ましたし、小説版の内容もとても興味深いものでした。第1作目について皆さんが、もしドジスンが戻ってきたらどんな風に物語に絡むのかと議論しているのも興味深かったです。
(中略)
(本作の)ルイス・ドジスンは、小説版と最初の映画から変わっていません。ああいう人物です。インジェン社が恐竜について取り組み、アッテンボロー(ハモンド役の俳優)とジェームズ・クロムウェル(ロックウッド役の俳優)のキャラクターが出資するオリジナルの会社としてあり、小説版ではライバル会社としてバイオシンがいます。
ルイスはバイオシンで働いていましたが、CEOになり、この会社を経営しています。バイオシンは遺伝子研究に取り組むサイエンス会社であり、インジェンよりは劣りますが、ある種の陰の部分を取り扱ってきました。小説版ではルイスは、情報を盗むためなら何があっても止まらない、手に入る物は何がなんでも手に入れるという人物です。
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でも、ルイス・ドジスンは強欲で犯罪もいとわない第1作目や小説版の姿と変わらないと話すキャンプベル・スコット。一方で、公式サイトのコメントでは「権力と金が手に入ることに味をしめたとき、彼はあの人物に変身し始めた」とも話している。案の定なラストを迎えることになったドジスンだが、何が彼をそうさせたのか、30年の間には何があったのか、その裏側を描くスピンオフがあるならばぜひ観てみたい。
映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は2022年7月29日(金)劇場公開。
アニメ『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』はNetflixで配信中。
Source
VarietyRadioOnline
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