SF最高賞3連覇の作家が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を実況。評価と批判は?「今見ると……」 | VG+ (バゴプラ)

SF最高賞3連覇の作家が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を実況。評価と批判は?「今見ると……」

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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をあの作家が実況

SF映画の金字塔として語り継がれる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)。ロバート・ゼメキス監督が手がけ、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めた作品だ。日本では、2020年6月に「金曜ロードショーSHOW!」で「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを三週連続で放送。大きな話題を呼び、「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ブームの再来」との声も聞かれた。

そんな中、海を越えたアメリカでも久しぶりに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を鑑賞した人物がいたようだ。その人物とは、日本でも『第五の季節』が発売されたSF作家のN・K・ジェミシン。ジェミシンは、『第五の季節』から始まる《破壊された地球》三部作でSF最高賞の一つであるヒューゴー賞の長編小説部門を2016年から3年連続受賞した人物だ。ネビュラ賞、世界幻想文学大賞も受賞した現代SF最高の作家の一人である。

そのN・K・ジェミシンが米時間7月13日(月)にTwitterへ投稿したスレッドが話題になっている。「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を何年かぶりに観なおしている」と、20以上のツイートを投稿しその感想を“実況”したのだ。

80年代のノスタルジー

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開された1985年当時は12歳だったというN・K・ジェミシンは、まずは1980年代へのノスタルジーに浸る。「当時はデロリアンやピックアップトラックがクールだとは思わなかったけれど、今見ると格別な80年代っぽさがありますね」と評価すると、「電話帳」や「少年が中高年男性と真夜中に遊んでいても誰も気にしない時代」を懐かしがった。

また、デロリアンを道の真ん中に置き去りにしていくシーンや、「ギガワット」を「ジゴワット」と呼ぶシーンにもツッコミを入れ、フォロワーたちを楽しませている。

人種的な問題も言及

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が抱える人種問題に関する指摘も忘れていない。まず、ドクがだました“リビアの過激派”について「リビア人ではないと思われる黒人によって演じられているステレオタイプなリビア人 (ゾッとする) 。これについては忘れていました」と指摘。

更に、マーティがゴールディーに「将来市長になる」と“助言”することで後に黒人市長が誕生するというネタや、黒人ロックスターのチャック・ベリーがマーティの演奏から名曲「ジョニー・B.グッド」の着想を得たというネタに、「黒人は自分では何も思いつくことができないって? とても可笑しいですね」と皮肉った。

また、黒人メンバーで編成されたバンドが駐車場で大麻を吸っている描写については、黒人女性である自身の経験を交え、シリアスな口調で以下の様に述べている。

私は良心的な黒人の家庭で育ちました。私の家族は可能な限り、私にポジティブな黒人のイメージを与えてくれましたが、これ (このシーン) がその理由です。主要なメディアは、この種の差別的でナンセンスな描写であふれていたからです。ただ指摘されてこなかっただけです。

ジェンダー観への指摘

また、人種問題と共にやはりその性描写の問題点にも言及している。マーティがロレインに暴行を働こうとしてジョージがそれを止めるという計画、そしてその後のビフによるロレインへの暴力について、「この映画を見たことがない人に警告です。不当な性暴力の描写があります (男性キャラクターを成長させるために描かれているものです)」と指摘。「マーティは父親の利益のために母親にトラウマを与える。素晴らしい子どもですね」と皮肉った。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズに一貫しているのは、女性キャラクターには主体的な役割が与えられず、女性があくまで男性主要キャラクターの成長のために利用されるというプロットだ。こうしたプロットは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズに限ったことではないが、「こうした描写も問題はない」との認識が広まらないように、いつの時代にあっても明確に指摘しておく必要がある。

一方で、N・K・ジェミシンは「マーティの母親が性的に積極的な点はいいですね! それが暴力と共に罰せられるところは嫌いですが。時代が変わって本当によかった、ほんのちょっとですけどね。」と、一縷の希望も見出している。

最終的な評価は……

そして、やはりSF作家として、ジョージがSF作家になる設定についても言及している。「おー、ジョージがSF作家だってこと忘れてました」とした上で、歴史改変の結果ジョージがSF作家として大成するという設定について、「ハハハハ、この映画、SF作家がみんなリッチだって思ってるんじゃないですか」「まぁロレインがお金持ちでジョージがおまけなのかもしれませんが」と笑った。

80年代の懐かしい光景を楽しみつつ、問題のある描写モしっかり指摘したN・K・ジェミシン。最終的な評価を以下のように発信し、この“実況”を締めくくっている。

まぁ、時間つぶしにはいい映画だったと思います。でも、皆さんにお勧めするわけではないということは理解してください。子どもがいるジェネレーションX (60〜80年代生まれの世代) の仲間たちには、今はもっといい映画、ゾッとする描写が少ない映画もありますから。でも、ノスタルジックな通りを (ベタベタした足下に顔を歪めながら) 歩くのも、いいものでした。

ヒューゴー賞三連覇の伝説を打ち立てたN・K・ジェミシン。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』への批評的な眼差しもやはりブレない。自らが過去に気付けていなかった描写も取り上げて言葉にしていく姿が印象的だ。過去を懐かしみつつも認識をアップデートしていく姿勢は、あらゆる作家に求められるものだろう。

なお、N・K・ジェミシンの『第五の季節』を起点とした《破壊された地球》シリーズは、ドラマ化の話が進んでいる。N・K・ジェミシン自身もドラマの監督や脚本家との打ち合わせに参加しているという。どのような作品に仕上がるのか、こちらも要注目だ。

N・K・ジェミシンが前人未到のヒューゴー賞三連覇を達成した《破壊された地球》三部作の第一段『第五の季節』は東京創元社より発売中。

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