映画『デッドプール&ウルヴァリン』タイムラインは?
映画『デッドプール&ウルヴァリン』が2024年7月に公開され、公開約1週間で全世界興収6億ドル超の大ヒットを記録している。ライアン・レイノルズ演じるデッドプールとヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンがMCUに参戦し、フランチャイズとしても大きな転換期をもたらす作品となっている。
一方、『デッドプール&ウルヴァリン』で少々ややこしいのが、作品の時系列について。時の流れ方が異なるTVA(時間変異取締局)の登場と、マルチバースが絡む物語であることから、いつものタイムラインの整理が困難な作品でもある。もちろん細かい設定を気にせずとも楽しめる作品になっていることは確かだが、今回は今後のMCU作品を楽しむためにも、『デッドプール&ウルヴァリン』の時系列を整理しておこう。
以下の内容は『デッドプール&ウルヴァリン』の重大ネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『デッドプール&ウルヴァリン』時系列をネタバレ解説
『ローガン』より前?
まず、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の舞台はアース10005から幕をあける。デッドプールがいるユニバースは、映画『X-メン』(2000) や『LOGAN/ローガン』(2017) が属している「X-MEN」シリーズと同じアース10005である。
『LOGAN/ローガン』でウルヴァリンことローガンが死んだことにより、アース10005の消滅が決まったというのが『デッドプール&ウルヴァリン』の設定だ。作中では、そのユニバースの重要人物である“アンカー・ビーイング”が死ぬと、そのユニバースは消滅するとされており、ウルヴァリンはアース10005のアンカーだったのだという。
ここで最初の混乱が生じる。『LOGAN/ローガン』の舞台は2029年だが、後述する通り、『デッドプール&ウルヴァリン』でデッドプールがいる時代は2024年なのだ。デッドプールはTVAに連れていかれ、アース10005が消滅する前に「使命」を果たすためにMCUのメインユニバースであるアース616に送られそうになる。だが時系列で考えれば、アース10005のウルヴァリンはまだ死んでいないはずである。
この疑問の答えは、ドラマ『ロキ』(2021-) を観た方はご存知のはずだが、TVAでは時間の流れが異なっているということに尽きる。TVAはその時間軸で起きる出来事を起きる順に把握していくのではなく、一本の糸からほつれを見つけ出すように俯瞰して各タイムラインの出来事を把握している。
デッドプールから見れば、ウルヴァリンの死は自分のユニバースの未来で起きる出来事だ。しかし、TVAのミスター・パラドックスは未来の出来事も把握しているため、アース10005が消滅することをデッドプールに知らせたのである。
冒頭のシーンではデッドプールがウルヴァリンの墓を掘り起こしているが、これはパラドックスのタイムパッド(時間軸間を移動できる装置)を奪い、ウルヴァリンの死から数年後(遺体が白骨化していることから)のアース10005を訪ねたのである。ミスター・パラドックスがなぜ2024年のデッドプールを選んだのかという点は別の考察要素だが、今回は時系列に集中して読み解いていこう。
まとめると、アース10005のユニバースで2029年にウルヴァリンが死亡することが確定すると共に遠い未来で同アースが消滅することが確定。ミスター・パラドックスは、ある「崇高な使命」を持っているデッドプールを2024年のアース10005から呼び出してアース616に送ろうとした。
なぜなら、パラドックスは“いつか”消滅するアース10005を、自身のポリシーに従ってタイムリッパーを使い“すぐに”消滅させようとしていたから。というのが『デッドプール&ウルヴァリン』のストーリーである。パラドックスとしては、崇高な使命を持っているデッドプールごとアース10005を消滅させるわけにはいかなかったのだ。
ちなみに『デッドプール3』にヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが登場すると発表された直後、ヒュー・ジャックマンは本作が『ローガン』よりも「前の出来事になる」と明言していた。上記で整理した内容を踏まえると、『デッドプール&ウルヴァリン』ではウルヴァリンが死ぬ2029年の5年前の時点のデッドプールが主人公になっており、ヒュー・ジャックマンの発言は事実であったことが分かる。
デップーはなぜアース616に?
次にややこしいのが、『デッドプール&ウルヴァリン』の序盤に2018年3月14日のアース616が登場する件だ。デッドプールがスターク・インダストリーズのハッピー・ホーガンにアベンジャーズ入りのための面接を受けるのだが、デッドプールはこの面接に落ちてヒーロー業から手を引いてしまう。そして「6年後」というテロップが入った後、デッドプールはアース10005に戻っている。これで本作の舞台がアース10005の2024年だということが分かる。
問題は、デッドプールがなぜアース616にいたのかということだ。劇中で明確な説明はなかったものの、唯一考えられるセオリーは、デッドプールが映画『デッドプール2』(2018) のラストで手に入れたケーブルのタイムマシーンを使ってアース616を訪れたというものだ。
『デッドプール2』の公開年は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と同じ2018年だ。デッドプールはアース10005から同じ時期のアース616に行き、アベンジャーズ入りを試みたのだろう。MCUのマルチバースというのは、時間軸が分岐した結果生まれるものであり、タイムトラベルをするということはマルチバース間を行き来するということでもあるのだ。
「デッドプール」の過去二作とMCUのメインユニバースであるアース616が同じユニバースだった、という可能性も考えられなくはない。デッドプールがアベンジャーズ入りの面接に落ちたことがネクサスイベント(『ロキ』で紹介された、時間軸/歴史を分岐させる出来事)になり、アース10005の時間軸が生まれたというセオリーだ。
そうであれば「X-MEN」シリーズでの過去の出来事はアース616と共有されているはずだ。しかし、「X-MEN」とMCUの両方に別バージョンのクイックシルバーが登場していることや、世界的な事件が劇中で共有されていないことから、「デッドプール」の過去二作とアース616は異なるユニバースであると断言できる。『デッドプール&ウルヴァリン』では、デッドプールがアベンジャーズに入りたいがために一時的にアース616を訪れていただけだと考えられる。
ちなみに、デッドプールが面接を受けていたアース616の2018年3月14日というタイミングは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) でサノス軍が襲来する2018年5月の一月半前である。
MCUの時系列は?
『ロキ』シーズン1で実現したマルチバース
『デッドプール&ウルヴァリン』内のユニバースと時系列の問題は、上記の説明で一旦まとまっただろうか。次に考えたいのは、MCU内の時系列についてだ。本作は別のユニバースが舞台になっているので、こちらの整理もややこしいが、一つずつ前提となっている状況を見ていこう。
まず、『デッドプール&ウルヴァリン』のアース10005が存在できるようになったのは、ドラマ『ロキ』シーズン1の出来事に起因している。TVAを使い時間軸の分岐を阻止して世界を神聖時間軸=アース616に統一していた“在り続ける者”が死に、時間軸の分岐=マルチバース化が止められなくなったのだ。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2023) でのマルチバース展開も、『ロキ』シーズン1での出来事の結果だ。なかったことにされてきた時間軸が解放され、アース10005のように各ユニバースの過去も未来も同時に存在するようになったのである。
『デッドプール&ウルヴァリン』は『ロキ』S2後?
マルチバースが舞台になった映画『デッドプール&ウルヴァリン』がドラマ『ロキ』シーズン1の後であることは確実だ。米マーベル公式が2024年2月に発表した時系列によると、『ロキ』S1は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) の直後に位置しており、エンドゲーム後を描いた全ての作品は『ロキ』S1より後の出来事になっている。そして、最新の出来事は『ロキ』シーズン2と『ホワット・イフ…?』シーズン2とされている。
では、『デッドプール&ウルヴァリン』はドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) から始まったフェーズ4以降のMCUで、どのタイミングで起きた物語になるのだろうか。
『ロキ』シーズン2では、タイムラインの分岐が暴走して消滅するタイムラインも現れ始めた。『デッドプール&ウルヴァリン』でカサンドラ・ノヴァが虚無以外のユニバースを消そうとした時と同じ演出で、世界がスパゲッティ化してなくなってしまうのだ。
『ロキ』S2のラストでは、ロキは自らを犠牲にし、全ての時間軸を束ねて安定させる役割を担うことになった。以降のTVAでは、ロキを中心に置く世界樹ユグドラシルがマルチバースを安定させながら、B-15らが民主的に組織を運営していくことになる。また、TVAの任務はマルチバース間で戦争を起こすとされていた様々なユニバースのカーンを追うことになったようである。
『デッドプール&ウルヴァリン』はおそらく、この『ロキ』シーズン2のラストよりも後の出来事だと考えられる。『ロキ』S2以降でB-15と共に行動していた同作のメインキャラの一人、メビウスがTVA内にいないからだ。『ロキ』S2のフィナーレでは、メビウスは自分たちが守ってきた外の世界を見たいとしてTVAを離れている。
また、『ロキ』S1ラストの直後=S2の冒頭からロキがユグドラシルになるまで、タイムラインの分岐は暴走していたが、『デッドプール&ウルヴァリン』のTVAで映し出された時間軸の束は安定していた。つまり、本作のTVAはその背後でロキがマルチバースを安定させている状態であることが分かる。
まとめると、①マルチバースが存在できている=『ロキ』S1ラストより後、②時間軸の束が安定している=『ロキ』S2ラストより後、であることが分かる。先に触れた米マーベル公式が2024年2月に発表した時系列に照らし合わせると、『デッドプール&ウルヴァリン』は『ホワット・イフ…?』S2と並んでMCUの最新の時系列に位置していると考えられる。
フェーズ4以降の作品の時系列順は以下の通り。
『ブラック・ウィドウ』(『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と同時期)
『ロキ』シーズン1
『ホワット・イフ…?』シーズン1
『ワンダ・ヴィジョン』
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
『エターナルズ』
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(ラストシーン)
『ホークアイ』
『ムーンナイト』
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
『エコー』
『シー・ハルク:ザ・アトーニー』
『ミズ・マーベル』
『ソー:ラブ&サンダー』
『ウェア・ウルフ・バイナイト』
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
『シークレット・インベージョン』
『マーベルズ』
『ロキ』シーズン2
『ホワット・イフ…?』シーズン2
『デッドプール&ウルヴァリン』
おまけ:ウルヴァリンが二人?
そして、「時の終わり」とされている虚無での冒険を経てアース10005に帰ってきたデッドプールは、ラストでは2024年の仲間たちと食卓を囲んでいる。別ユニバースのウルヴァリンと、アース10005の未来のX-23/ローラもいるが、2029年の『ローガン』前の時系列に位置するため、このアース10005には二人のウルヴァリンとローラが存在していることになる。
かつてのTVAではこんなことをしたらすぐに虚無送りにされていただろうが、B-15がこれを許可したのだろうし、ロキのTVAにかかればこうしたハッピーエンドがあり得るというのが嬉しいところだ。
MCUの今後については、2024年9月19日(木) からはドラマ『アガサ・オール・アロング』の配信が始まる。ワンダの死後が舞台になることが示唆されている一方で、それがミスリードである可能性も指摘されている。同作ではどの時期が舞台になるのか、タイムラインを確認しながら配信を楽しみに待とう。
映画『デッドプール&ウルヴァリン』は全国の劇場で公開中。
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