『デッドプール&ウルヴァリン』公開中
映画『デッドプール&ウルヴァリン』が2024年7月から劇場で公開され、世界中で話題を集めている。ライアン・レイノルズ演じるデッドプールとヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが復帰し、さまざまなキャラクターがカメオ出演し、マーベルの夏を盛り上げている。
さまざまなサプライズがあった『デッドプール&ウルヴァリン』の中でも、今回は序盤であの人が登場したシーンに注目してみよう。あのシーンに込められていた意味とは。
以下の内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含むので、劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の内容に関するネタバレを含みます。
サプライズ登場したハッピー
『デッドプール&ウルヴァリン』の序盤にあった最初のサプライズは、デッドプールがMCUのメインユニバースであるアース616で面接を受けるシーンだ。ここでサプライズ出演したのは、ジョン・ファヴロー演じるハッピー・ホーガンである。
ハッピーは、MCU第一作目『アイアンマン』(2008) からアイアンマンことトニー・スタークの右腕として登場している人物だ。演じるジョン・ファヴローは『アイアンマン』『アイアンマ2』(2010) で監督も務めている他、MCU版「スパイダーマン」三部作に全て出演するなど、長年MCUを支えてきた人物でもある。
デッドプールが訪れたのは2018年のアース616。指パッチンの約2ヶ月前、トニーと愛するメイの死の約5年前というタイミングで、この頃のハッピーはまだ幸せそうである。デッドプールはトニー・スタークと話せることを期待していたようだが、“こういうこと”はハッピーが担当しているらしい。
ハッピーは、アベンジャーズを指して「私たち」と言い、デッドプールからは「あなたアベンジャーズでしたっけ?」と突っ込まれる。ハッピーは映画『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』(2019) でも、「スパイダーマンのため(for)に働いてるの?」と聞かれ、「スパイダーマンと(with)と働いてるんだ!」と、スーパーヒーローと対等な立場であることを強調していた。ハッピーなりのプライドがあるのだろう。
ハッピーが教えたヒーローの条件
この『デッドプール&ウルヴァリン』のワンシーンにおけるデッドプールとハッピーの会話には、MCUの根幹に関わるセリフがある。デッドプールがアベンジャーズに入りたがっていた理由は、デッドプールにヒーローとしての活動をしてほしいと願っていた恋人のヴァネッサを振り向かせるためだった。デッドプールはヴァネッサのために「アベンジャーズに入らないといけない」と、アベンジャーズに入ることが“必要”だと強調する。
これに対し、ハッピーは人々がアベンジャーズを必要としていると返答する。デッドプールが必要なことというのは、デッドプールの都合でしかない。一方で、アベンジャーズらMCUのヒーローたちは人々に必要とされて活動している。この時点でデッドプールにはヒーローの資格はないと判断されてしまうのだった。
実は、「必要とされるものがヒーロー」という発想は、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギが過去に語った内容と重なる。2021年の米The Undefeatedのインタビューでは、ケヴィン・ファイギはスーパーパワーを持っているかどうかがヒーローの条件ではないと語っている。
いわく、MCUのヒーローは押し付けられたり事故に遭ったりしてパワーを得た者か、スティーブ・ロジャースのように“手段”としてパワーを得た者だという。一方で、ヴィランは自らパワーを追い求める人々だと指摘しているのだ。
『デッドプール&ウルヴァリン』序盤のデッドプールは、もちろんすでにスーパーパワーを持っているが、アベンジャーズという肩書きやチームの力を自分の都合で欲している状態だ。終盤の展開のように、必要とされて英雄的な行為に走ってこそヒーローになれる。面接でのハッピーの判断は正しかったと言える。
MCUの正史に足を踏み入れようとするデッドプールに対し、長年MCUを支えてきたジョン・ファヴロー/ハッピーがMCUのヒーローの条件を提示する展開はとても理にかなっている。スーパーパワーはないけれど、MCUの大先輩であるハッピーからの助言を受けて、デッドプールはヒーローとしての道を新たに歩み始めるのだ。
あのアイアンマンのマスクは?
『デッドプール&ウルヴァリン』のハッピーが登場するシーンで、もう一つ注目を集めている要素は、面接を行なっている応接室でアベンジャーズの様々なグッズが登場することだ。部屋の中には、『アイアンマン2』で出てきたものだと思われるキャプテン・アメリカのシールド(おそらくレプリカ)や、『アイアンマン3』(2013) で登場したペッパー・ポッツが表紙のフォーブス誌、トニー・スタークの最初のアーク・リアクター(『エンドゲーム』のお葬式で川に流されるもの)などが見られる。
中でも注目を集めたのは、アイアンマンのおもちゃのマスクと、その後ろの写真たてだ。写真の半分はマスクで隠れていて、見えている部分にはトニー・スタークが写っている。この写真は映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) でピーター・パーカーがスターク・インダストリーズへインターンシップに行ったというアリバイづくりのためにとったものだ。
右側に写っているはずのピーター・パーカーはアイアンマンのマスクで隠れているのだが、その理由は、映画版スパイダーマンの権利をソニーが持っているからだと思われる。その代わりに、アイアンマンのおもちゃのマスクが置かれているのだが、このマスクは『アイアンマン2』に登場したものである。
『アイアンマン2』では、このアイアンマンのおもちゃのマスクを被った子どもが敵に襲われ、アイアンマンが助ける場面がある。ファンの間では、この少年が後のピーター・パーカーではないかという考察が広がり、映画公開から7年後の2017年にケヴィン・ファイギがこのセオリーを正史として認めたと、トム・ホファンドがGIZMODOに語っている。
『デッドプール&ウルヴァリン』では、トム・ホランドのピーター・パーカーの写真をアイアンマンのおもちゃのマスクで隠すことで、上記のセオリーが改めてスクリーンで紹介されたことになる。加えて、トニー・スタークがこのマスクをピーターの写真の前に置いていたことから、トニーもあの少年がピーターだったと知っていたという考察も成り立つ。トニーの中では大事な思い出だったのかもしれない。
わずかな時間ではあったが、ハッピーの登場シーンはMCUファンに様々なメッセージを届けてくれた。最新のタイムラインではトニーを失い、メイを失い、ピーターを忘れてしまったハッピーだが、今後も新たな仲間たちとともにMCUを引っ張っていってくれるだろう。
『デッドプール&ウルヴァリン』は全国の劇場で公開中。
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