ネタバレ解説『デッドプール&ウルヴァリン』登場の幻のキャラクター◯◯は何者なのか | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『デッドプール&ウルヴァリン』登場の幻のキャラクター◯◯は何者なのか

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20世紀FOX版「X-MEN」がMCUに合流か

20世紀FOXで制作されていた「デッドプール」シリーズがMCUに合流するということで、マルチバース展開が期待されていた『デッドプール&ウルヴァリン』。『LOGAN/ローガン』(2017)でウルヴァリン役から引退したはずのヒュー・ジャックマンが同役でカムバックするということもあって注目を集めた本作が、2024年7月24日(水)に全国で劇場公開された。

『デッドプール&ウルヴァリン』では、これまでのマーベル作品に登場してきたキャラクターたちであるヒーローたちが登場するのではないかと公開前から話題になっていた。中でも、とある一人のX-MENが注目を集めている。本記事ではその注目を集めているX-MENについて解説を述べていこう。なお、以下の内容は『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含むため、劇場で本編を鑑賞した後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の内容に関するネタバレを含みます。

『デッドプール&ウルヴァリン』に登場したガンビットは誰?

『デッドプール&ウルヴァリン』で虚無に送られ、カサンドラ・ノヴァに襲われたデッドプールとウルヴァリンは、ナイスプールの話をもとに境界線に暮らすヒーローたちに協力を仰ぎに行く。そこでデッドプールとウルヴァリンが出会うのが忘れ去られたヒーローたちだ。

このヒーローたちとは、スピンオフ映画が頓挫したダフネ・キーン演じるローラ/X-23、三部作が完結したウェズリー・スナイプス演じるブレイド、酷評されたジェニファー・ガーナー演じるエレクトラなどだ。彼らは単独映画の企画そのものが忘れ去られようとしているキャラクターたちの集まりというメタ的な設定だった。

その中で一人だけ出自の異なるヒーローが登場した。それがチャニング・テイタム演じるガンビットだ。チャニング・テイタム版ガンビットは他のヒーローたちと異なり、なぜ虚無に送られたかを語っておらず、自分は虚無で生まれたという旨の発言をしている。それもそのはず、チャニング・テイタム版ガンビットは一度も映像化することがなかったヒーローなのだ。

チャニング・テイタム主演の単独映画『ガンビット』

「デッドプール」シリーズや「X-MEN」シリーズが所属しているアース10005にガンビットというキャラクターは登場している。アース10005のガンビットは、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)で最初はウィリアム・ストライカー大佐によって人体実験をされていたミュータントとして登場した。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』でガンビットを演じていたのは、チャニング・テイタムではなくテイラー・キッチュだった。

テイラー・キッチュがアース10005でのガンビットを演じたのは、チャニング・テイタムの起用が検討されていたものの『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の製作時期にチャニング・テイタムが『G.I.ジョー』(2009)の主演を務めていたことで、スケジュールが合わなかったためであった。それでもチャニング・テイタムが演じるガンビットの計画が頓挫したわけではなかった。チャニング・テイタムはガンビットについて、米Slash Filmに以下のように語っている。

ガンビットは私のお気に入りです。私はニューオーリンズの辺りの出身です。父もニューオーリンズ出身で、私はガンビットのケイジャン訛りが好きで、本当に演じられす。テイラー・キッチュの演じたガンビットを批判しているわけではありません。テイラー・キッチュの演じたガンビットは好きです。でも私はいつもケイジャンの人々と暮らしていました。(中略)ガンビットはいつも女好きで、タバコを吸い、酒を飲む男でした。ガンビットはすべてのスーパーヒーローの中のパンクロックな存在でした。

ケイジャンとはアカディア地方に入植したフランス直系の人々のことで、イギリス人によってアカディアから追放されたのち、最終的に主にアメリカ合衆国ルイジアナ州南部に多く暮らしている。ケイジャン・フランス語を話す人も多く、原作コミックのケイジャンという設定が採用されて『デッドプール&ウルヴァリン』で登場したチャニング・テイタムが演じるガンビットはケイジャン・フランス語訛りで話すキャラクターであった。

チャニング・テイタムはガンビットの細かい設定にもこだわっていた。そんなチャニング・テイタムは2014年にスタジオと契約を結び、『X-MEN:アポカリプス』(2016)でチャニング・テイタム版ガンビットが登場する予定だった。しかし、実際には作中に登場することはなかった。

スタジオ側からデッドプールシリーズのような単独映画化が期待されていたガンビットは、ここでキャラクターそのものがお蔵入りになる窮地に立たされた。チャニング・テイタムは諦めず、プロデューサーと共に監督探しに奔走した。ベネット・ミラー、ダーレン・アロノフスキー、ギャレス・エヴァンス、 JC・チャンダーに監督を打診したが全員に断られてしまっている。ここから単独映画『ガンビット』の長い制作の歴史ははじまった。

前述の通り、20世紀FOXはテイラー・キッチュが演じるガンビットも、ライアン・レイノルズ演じるデッドプールのような大ヒット単独映画ができるキャラクターになることを期待していた。だが、監督探しが難航したことで、チャニング・テイタムは主演だけでなくプロデューサーも兼任して監督探しをすることになった。その間もチャニング・テイタムはガンビットの得意技であるトランプマジックを練習するなど、役作りを進めていたという。

『ガンビット』の制作に携わった映画監督たち

ルパート・ワイアット監督作『ガンビット』

2015年に監督の依頼を出したのは『猿の惑星:創世記』(2011)で成功を収めたルパート・ワイアットだった。ルパート・ワイアット監督作『ガンビット』は、ギャングと泥棒の物語というガンビットのダークな側面に焦点を当てた作品になる予定だった。

しかし、ルパート・ワイアット監督作『ガンビット』にピンチが訪れる。そのピンチとは「X-MEN」シリーズをこれまで牽引してきたヒュー・ジャックマンが、『LOGAN/ローガン』でウルヴァリン役から引退するという情報が入ってきたことだった。

これまで「X-MEN」シリーズの顔とも言える人気キャラクターがいなくなるということで、「X-MEN」シリーズそのものに暗雲が立ち込めた。裏を返せば、ヒュー・ジャックマンがいれば20世紀FOX版「X-MEN」シリーズは安泰だとスタジオは考えていたということであり、ヒュー・ジャックマンの復帰によって『デッドプール&ウルヴァリン』でスタジオ側も安心してガンビットを登場させることができたのではないのだろうか。

ヒュー・ジャックマンのウルヴァリン役からの引退という逆境でもチャニング・テイタムは諦めず、ガンビットの関連キャラクターであるベラ・ドナ・ブロードーのオーディションにレベッカ・ファーガソンやアビー・リーといった俳優も参加するなど、映画の制作は進められた。だが、最後にはルパート・ワイアット監督のスケジュールが合わず、ルパート・ワイアット監督作『ガンビット』のアイデアはお蔵入りとなった。

一方、ルパート・ワイアット監督自身は、降板した背景には『ファンタスティック・フォー』(2015)の興行的失敗により、スタジオ側が予算を削ったことが要因としてあると米The Beatのインタビューで語っている。これには「ついに単独映画『ガンビット』を作りたいと思っていると本当に思える人物を見つけました」と米Entertainment Weeklyに語っていたチャニング・テイタムも相当辛かったことだろう。

ダグ・リーマン監督作『ガンビット』

監督不在という窮地に立たされた単独映画『ガンビット』のため、20世紀FOXは次なる監督探しに躍起になっていた。公開日までの期日を守れる監督として、スタジオは、ダグ・リーマン、ジョー・コーニッシュ、シェーン・ブラック、F・ゲイリー・グレイなどと交渉をしていた。その中で最終的に白羽の矢がたったのは『Mr. & Mrs. スミス』(2005)の監督を務めたダグ・リーマンだった。

脚本チームを率いていたサイモン・キンバークはダグ・リーマン監督作『ガンビット』について、「ガンビットは独自の味わいとトーンを持ち、ある意味では強盗映画やセクシーなスリラーのようになるでしょう」と米Colliderに語った。そして、そのような作風に合うように単独映画『ガンビット』の脚本は書き直されることになった。

ダグ・リーマン監督は『ガンビット』の新しい脚本を待つ間、映画『ザ・ウォール』(2017)の監督を務めることを決め、2016年末に『ガンビット』の撮影を開始する予定としていた。しかし、書き直しされた脚本へのチャニング・テイタムの反応はあまり良くなかった。ルパート・ワイアット監督の頃に決められたキャスティングの変更が加わり、映画はルパート・ワイアットの『ガンビット』とは大きく違うトーンに変わっていった。

サイモン・キンバークは脚本のトーンが『ガンビット』が持つべきトーンに近づいていると説明し、完成した脚本をダグ・リーマン監督は称賛した。それにもかかわらず、ダグ・リーマン監督は20世紀FOXと双方合意のもとで降板してしまった。『デッドプール&ウルヴァリン』ではチャニング・テイタム版ガンビットはコメディ・リリーフだったが、ダグ・リーマンが称賛したガンビットはどんなキャラクターだったのか興味はつきない。

ゴア・ヴァービンスキー監督作『ガンビット』

チャニング・テイタムが『ローガン・ラッキー』(2017)の撮影を終えた後、『ガンビット』の監督探しは再開された。20世紀FOXもこの時点では『ガンビット』の制作に対して前向きであり、チャニング・テイタムは米Cinema Blendに対して以下のようなコメントを出した。

私たちはとてもとても幸運だったと思います。多くの挫折は、後から見れば大きな祝福だったと思います。なぜなら、私たちは映画界のパラダイムシフトの転換期に映画を制作し、脚本を書いていたからです。ですから、まだ完全に形が整っていなかった私たちのアイデアをただ発表しなかったのは幸運でした。それは良いアイデアでした。私たちは正しい方向に向かっていました。そして、私たちは『LOGAN/ローガン』と『デッドプール』(2016)という、2つの本当に美しく異なる種類の完全なパラダイムシフトから学ぶことができました。

チャニング・テイタムはこのコメントを発表した後、『ガンビット』の脚本やキャスティングがやり直しになったことを明かした。そこで監督として選ばれたのがゴア・ヴァービンスキーだった。衣装デザインや新キャスト、映画のロケハンなども順調に進み、単独映画『ガンビット』は20世紀FOXの最優先事項として順調に進んでいるように思えた。

ディズニーによる20世紀FOXの買収

『ガンビット』は2019年に公開されると20世紀FOXから発表された。その後、20世紀FOXに大きな事件が発生する。それはディズニーによる20世紀FOXの買収だ。20世紀FOXは映画に影響はないというコメントを出したが、少しずつその旗色は悪くなる。

ディズニー側がMCUにX-MENを登場させたい20世紀FOX側と話を進めたことで、計画の途上にあった『ガンビット』はリセットされ、とうとう単独映画『ガンビット』は幻の作品となった。これに長い間、プロデューサーとしてもかかわってきたチャニング・テイタムはショックを受け、マーベル映画を観られなくなったと米IGNに語っている。

幾多の監督変更や脚本書き直しを経て、最終的には撮影されずに終わってしまったチャニング・テイタム版『ガンビット』。そのような過去から、『デッドプール&ウルヴァリン』に登場したガンビットは一人だけ「虚無生まれな気がする」という旨の発言をしている。

それでもチャニング・テイタム演じるガンビットは、『デッドプール&ウルヴァリン』ではようやく日の目を浴びることができた。もしかすると、ガンビットのように今後虚無からお蔵入りになったマーベルキャラクターたちがMCU作品に登場することもあるかもしれない。

その意味では、チャニング・テイタム版ガンビットはお蔵入りになったマーベルキャラクターの希望の星になったとも言える。『デッドプール&ウルヴァリン』のラストでは、TVAのB-15に元の世界に戻されたということで、今後の作品でも登場する可能性はあるだろう。チャニング・テイタム版ガンビットの今後の活躍にも注目だ。

映画『デッドプール&ウルヴァリン』は全国の劇場で公開中。

『デッドプール&ウルヴァリン』公式ページ

チャニング・テイタムは『デッドプール&ウルヴァリン』出演後にガンビット単独映画への意欲を明かした。詳しくはこちらから。

マーベル・コミックは、ガンビットが登場するコミックシリーズ『TVA』を発表した。詳しくはこちらから。

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Source
Slash Film/The Beat/Entertainment Weekly/Collider 1/Collider 2/Cinema Blend/IGN

『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

ポストクレジットシーンは『シー・ハルク』に繋がる? ラストの更なる考察はこちらの記事で。

続編と今後のMCUの展開についての考察はこちらの記事で。

『ロキ』と『デッドプール&ウルヴァリン』の繋がりについての解説はこちらから。

ライアン・レイノルズは本作でデッドプールとウルヴァリンが抱える問題を「恥」と語った。詳しくはこちらから。

マルチバースで登場したウルヴァリンの変異体についての解説はこちらから。

デッドプールとソーの関係についての解説と考察はこちらの記事で。

 

2024年2月時点の全MCU作品の時系列順の紹介はこちらの記事で。

サンディエゴ・コミコン2024では、ロバート・ダウニー・Jr.がMCUに復帰し、『アベンジャーズ5』でドクター・ドゥームを演じることが明かされた。詳細はこちらから。

ローラの『LOGAN/ローガン』と原作における設定と演じたダフネ・キーンについてのまとめはこちらから。

これまでの映画作品におけるウルヴァリンの活躍はこちらの記事にまとめている。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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