ニュースターを生み出した『ブラックパンサー』、「強い女性」としてのヒロイン・ナキアに注目
ブラックパンサーこと、ワカンダ王国の国王であるティ・チャラの幼馴染にして「元カノ」であるナキア。映画版の『ブラックパンサー』では、ティ・チャラへの個人的な感情を乗り越え、ワカンダ王国の為に国際スパイとして活躍する「強い女性」として描かれた。リバー族の出身であるナキアは物語の冒頭、いきなり捕えられたナイジェリア人の女性たちを助けるシーンで登場する。ナキアは、柔道、柔術、東南アジアの武術であるシラットの他、フィリピン・マーシャルアーツを組み合わせた戦闘スタイルで戦う。ユニバース化に当たって、早速ワンダーウーマンを登場させたDCコミックスと違い、マーベルでは長らくブラック・ウィドウ以外の女性戦士がフォーカスされることは少なかった。『ブラックパンサー』では、勇敢な姿を見せたナキアと、ワカンダ王国の忠実な戦士として活躍を見せたオコエの女戦士コンビが人気を集めた。
Nakia is coming!#BlackPanther 2.16.18 @MarvelStudios pic.twitter.com/0GOL9g5Rxh
— Lupita Nyong’o (@Lupita_Nyongo) 2017年11月9日
原作のナキアはどんなキャラクター? 1998年に原作コミックで描かれていたナキア
マーベルの魅力的なキャラクター達に仲間入りしたナキアだが、原作コミックではどのようなキャラクターなのだろうか。ナキアは聞き馴染みのないキャラクターだが、原作では映画でみせた雄姿とは異なる姿になっている。ナキアのコミック初登場は1998年に発刊された『Black Panther Vol. 3 #1』。幼少の頃から訓練を受けて育ったナキアだが、ティ・チャラと親交を深めていくうちに、彼に好意を抱き始める。しかし、ここからが原作版ナキアの厄介なところだ。ナキアは、ティ・チャラが一度は婚約までしたニューヨーク出身のジャズシンガー、モニカ・リンに嫉妬心を抱き始めるのだ。
結構危ないナキアの素顔
モニカ・リンは、レイシスト集団のサンズ・オブ・ザ・サーペントから襲撃された際に、ニューヨークにいたブラックパンサーに助けられた過去を持つ。幼少の頃から戦士になる訓練を受けてきたナキアとは対照的なキャラクターなのだ。モニカ・リンへの嫉妬心に燃えるナキアは、事もあろうに彼女の暗殺を試みる。もちろん、この試みはブラックパンサーに阻止され、ナキアはワカンダを追放される。ここまで読んで頂いてお分かりの通り、ナキアはコミック原作ではヴィラン(悪役)のキャラクターなのだ。その後、エリック・キルモンガーのもとで「マリス」という名のヴィランの2代目を襲名する。映画版でも次回作以降は、このマリスがヴィランとして設定される可能性がありそうだが、凛々しい姿を見せてくれたナキアの扱いが気になるところだ。
ナキアを演じたのは実力派の俳優ルピタ・ニョンゴ
そして、映画版『ブラックパンサー』でナキアを演じたのは、メキシコ出身でケニア人の両親を持つルピタ・ニョンゴだ。ニョンゴは、2005年から制作スタッフとして映画製作に関わり始めると、2008年に短編映画の『East River』で役者デビュー。その後、名門イェール大学に入学し、演劇の分野で修士号を取得するや否や、自由黒人でありながら12年間の奴隷生活を強いられたソロモン・ノーサップによる伝記の映画化作品、『それでも夜は明ける』(2013)でアカデミー賞助演女優賞を受賞。
Congratulations to @Lupita_Nyongo for her Best Female Actor in a Supporting Role win at the @SAGAwards #12YearsASlave pic.twitter.com/PJqpFgn480
— 12 Years A Slave (@12YearsASlaveUK) 2014年1月20日
実は、『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』(2015)、『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』(2017)にも出演。惑星タコダナで酒場を営む宇宙人、マズ・カナタのモーションキャプチャーを担当している。今年で35歳になる、今ノリに乗っている実力派女優なのだ。
ハマり役になったナキア。当初は別キャラ説も
当初、映画版『ブラックパンサー』でニョンゴが務めるのは「ヒロイン役」とだけ報道されており、ヒロインは前述のモニカ・リンだとも報じられていた。ニューヨークを拠点するニョンゴだけに、ニューヨークのジャズシンガーという同キャラクターの役はピッタリだと考えられていたのだ。蓋を開けてみれば、武闘派のナキアを演じることになったニョンゴ。役柄上、武闘のトレーニングを積み、ナイジェリアの言語であるハウサ語も習得しなければならなかった。そんな試練も、オスカー受賞者の彼女にとっては、なんのその。激しいアクションシーンやスタントも「楽しんだ」というニョンゴは、原作では「ちょっと危ない人」であったナキアを、クールなキャラクターとして完成させたのだった。
英・EXPRESS誌によると、『ブラックパンサー』の大ヒットを受けて、ニョンゴはナキアのスピンオフ映画制作について前向きな姿勢を示しているという。スターウォーズの次回作(エピソード9)には継続して出演するとの噂も出ているニョンゴ。彼女が作り上げたナキアもまた、ブラックパンサーシリーズのレギュラーキャラクターとなるのか、はたまたヴィランとして予想外の活躍を見せてくれるのだろうか。
Source
©2018 Express Newspapers.