『第2回世界SF作家会議』配信開始
2021年1月6日(水) 深夜、フジテレビで『第2回世界SF作家会議 “人類は〇〇で滅亡する”』が関東ローカルで放送され、同日27時10分よりYouTubeで「オリジナル版」の配信が始まった。「世界SF作家会議」は、2020年7月26日(日) に第一回目を放送。前回は“アフターコロナ”をテーマに新井素子、冲方丁、藤井太洋、小川哲という4人のSF作家が議論を交わした。
第2回目となる今回は、新井素子、高山羽根子、藤井太洋、小川哲が登場。前回と同じく司会をいとうせいこう、顧問を大森望が務めた。第一回目に引き続き、牛尾憲輔が音楽を担当し、漫画家・森泉岳土が「挿し絵」を担当した。
人類は〇〇で滅亡する
アフターコロナについて議論した第1回目に続いて、第2回目は「人類は〇〇で滅亡する」をテーマにSF作家たちが自身の考えを披露。海外からは、中国の劉慈欣、アメリカのケン・リュウ、韓国のキム・チョヨプもVTR出演。SFの想像力を大いに発揮した議論が交わされている。
1986年生まれ、2018年に『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞、2020年に『嘘と正典』が第162回直木賞候補作になった小川哲が先陣を切ると、「人類は“チーズケーキ”で滅亡する」と題し、文化的に作り出してきたものが種としての人類を苦しめると解説。
1960年生まれ、1999年に『チグリスとユーフラテス』で第20回日本SF大賞を受賞した新井素子は、「アフターコロナは………ない」とプレゼンした前回に続き、今回も意外な回答。詳細は動画をチェックして頂きたい。
1975年生まれ、2009年に「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作、2020年に『首里の馬』で第163回芥川賞を受賞した高山羽根子は、コロナ禍の状況について「日本にもともとあった問題が、脆弱なところから出てきた」と解説。1971年生まれ、2015年に『オービタル・クラウド』で第35回日本SF大賞、2019年に『ハロー・ワールド』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞した藤井太洋と共に「人類は“愛”で滅亡する」と題して、人類ならではの脆弱性について語った。
VTRでは、2015年に『三体』でアジアに初のヒューゴー賞をもたらした1963年生まれの劉慈欣が、人類が滅亡する二種類の可能性を解説。やはり宇宙規模の発想を披露している。次に登場したのは、「紙の動物園」などの作者で、『三体』の英訳者、中国SFの紹介者としても知られる1976年生まれのケン・リュウ。遺伝子工学、ポストヒューマンという視点からアンサーを導き出し、日本側では倫理・モラルについても議論が交わされた。
韓国で大ヒットを記録した『わたしたちが光の速さで進めないなら』が2020年12月に発売された1993年生まれのキム・チョヨプは、目に見えないもの、つまり人間の感覚外にあるものを、人類滅亡の要因としてあげた。
二つ目のテーマと漫画も公開
また、「地球最後の日に食べるなら、ご飯か麺か?」というお題のトークも行われ、劉慈欣、ケン・リュウ、キム・チョヨプもこの質問に回答。SF作家ならではの議論が繰り広げられている。
「S-Fマガジン」でお馴染みの宮崎夏次系による書き下ろしSF漫画「空を自由にはばたこうとは〜宮崎夏次系〜」も公開。やくしまるえつこ、髙城晶平、マキタスポーツ、堤川周吉が声優を務め、漫画部分の音楽も、やくしまるえつこが担当している。
最後には、小松左京による国際SFシンポジウムの趣意書を引用した第1回に続き、小松左京が『SF魂』(2006) に残した「SFとは思考実験である」から始まる言葉を引用して閉会。アフタートークでは、いとうせいこうと大森望が第3回目の内容についても語っている。今後はどのようなSF作家たちが登場し、SFの想像力を拡張し拡散してくれるのだろうか。
フジテレビ『第1回世界SF作家会議』と『第2回世界SF作家会議』の模様は、YouTube「8.8 チャンネル」で無料公開中。