「コミック界のアカデミー賞」アイズナー賞で変化の兆し
コミック界でも女性作家にスポットライト
「女性達が歴史を作る。2018年のアイズナー賞でようやく認められた」—そう見出しをつけた記事を掲載したのは、ワシントンポスト紙だ。7月に発表された”コミック界のアカデミー賞”とも呼ばれるアイズナー賞において、多くの女性クリエイターが受賞を果たしたことを受けての記事である。今年のアイズナー賞では、30年に及ぶ同賞の歴史上初めて、最高作家賞の栄誉が女性作家(『モンストレス』作者のMarjorie Liu)に贈られた。米国で活動する日本人イラストレーターで、『モンストレス』の絵を手がけたタケダ サナが最高ペインター賞をはじめとする4冠に輝くなど、2018年は女性作家達が”正当に”評価を受けた年となった。
『うる星やつら』高橋留美子にも言及
ワシントンポストが見出しで強調していたのは、「overdue = ようやく、遅れて」という点である。記事中では、今回見事に“コミックの殿堂”に選ばれた『うる星やつら』(1978-1987)、『犬夜叉』(1996-2008)で知られる高橋留美子にも言及。日本人女性作家としては初の殿堂入りとなった高橋留美子について、以下のように記している。
同じく栄誉を受け取ったのは、伝説的漫画家の高橋留美子(60)だ。サンディエゴ・コミコンでインクポット賞を受賞してから、四半世紀が経過しての殿堂入りとなった。
#Inuyasha creator Rumiko Takahashi was inducted into the #WillEisner Hall of Fame.https://t.co/R4kDbsLrvd pic.twitter.com/GwGQJ7nmT6
— Comicbook.com (@ComicBook) July 24, 2018
2018年のアイズナー賞で、殿堂入りを果たした女性は高橋留美子を含めて4名。元DCコミックス編集者のカレン・バーガーは、高橋留美子と同じ60歳で殿堂入りを果たした。初の黒人女性アメコミ作家として知られるジャッキー・オームズ (1911-1985)と、マーベルコミックスの副社長まで上り詰めながらも36歳の若さでこの世を去ったキャロル・カリッシュ (1955-1991)はいずれも故人。逝去から四半世紀以上が経過してからの”再評価”となった。
進む多様化
アイズナー賞は、漫画界における最高賞の一つ。毎年サンディエゴで開催されるコミコン・インターナショナルで受賞者および受賞作品を発表している。同賞は“コミック界のアカデミー賞”とも呼ばれているが、本家のアカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーでは、新会員の女性比率を上げていく動きを見せている。アメコミの世界では長らく、成人男性が読者層として設定されてきた。だが、近年になり、アメコミヒーロー作品においてもセクシャルマイノリティーを主役とする作品や、性暴力の問題を訴える作品が登場し、多様化が進んできている。
日本の女性クリエイターの活躍に日本は…
日本では、東京医科大学による女性受験者への減点問題が取り沙汰されている。ラブコメにSFを取り入れた稀代の漫画家・高橋留美子の殿堂入りと、日本を飛び出しアメコミ界で活躍するタケダ サナが達成した4冠は、コミック界の常識を打ち破った。それでも米メディアは、「ようやく」と表現せざるを得なかった。今回のアイズナー賞の結果について、日本での報道はかなり少ない。日本社会は、コミック界の変化をどう受け止めるのだろうか。
Source
Washington Post