『すばらしい新世界』に『宇宙空母ギャラクティカ』。NBCユニバーサルの配信サイト“ピーコック”もSF攻勢【7月15日開設】 | VG+ (バゴプラ)

『すばらしい新世界』に『宇宙空母ギャラクティカ』。NBCユニバーサルの配信サイト“ピーコック”もSF攻勢【7月15日開設】

©️NBC

ピーコックが2020年7月開設

配信プラットフォームによる“SF攻勢”はまだまだ続く。NBCユニバーサルは、独自の配信ストリーミングサイトの“ピーコック” (Peacock) を、2020年7月15日(水)にアメリカでオープンする。NBCユニバーサルは、アメリカ4大ネットワークの一つであるNBCと、ユニバーサルスタジオを始めとするエンターテインメント事業を手がけるユニバーサルが合併して生まれたメディアコングロマリット。米SFチャンネルのSyfyもNBCユニバーサルの傘下にある。

ピーコックでは、7月15日の開設とともにピーコック・オリジナルの10作品の配信を開始する。10作品の内の2作品は『おさるのジョージ』(2006-)と新アニメ版『ウォーリーをさがせ』(2019-)の新シーズンで、以前からNBCで放送されていた作品だ。

更にドラマ3作品については、イギリスとオーストラリアの作品を「米国内で独占配信」という形になっている。映画作品では、ドラマ『サイク/名探偵はサイキック?』(2007-2014)の続編映画『Psych 2: Lassie Come Home』が配信される。

ピーコックオリジナルの新シリーズとなる4作品の内、2作品はスポーツのドキュメンタリー番組。そして残ったドラマとアニメ1作品ずつがSF作品で、更に今後、『宇宙空母ギャラクティカ』の新リブート作品の配信も控えている。

ディストピア小説のクラシックをドラマ化

ピーコック開設の目玉作品となるのは、オルダス・ ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』(1932)をドラマ化した『Brave New World』。『すばらしい新世界』はジョージ・オーウェルの『1984年』(1949)とならぶディストピア小説のクラシックとして知られる。

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ピーコックのドラマ版では脚本家として『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』(2015-)に携わったデイヴィッド・ウィーナーがショーランナーを務める。NetflixのSFドラマアンソロジー『ブラック・ミラー』(2011-)の「サン・ジュニペロ」でエミー賞を受賞したオーウェン・ハリスがドラマ版『すばらしい新世界』第一話の監督を務める。また、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)で若き日のハン・ソロを演じたオールデン・エアエンライクが出演する。

『Brave New World』は、未来の“ニューロンドン”を舞台にした予告編が公開されている。

クレオパトラ主人公のアニメ作品も

ピーコックのオープンと共に配信を開始する唯一オリジナルアニメの新シリーズは『クレオパトラ・イン・スペース』(原題: Cleopatra in Space)。「シュレック」「カンフー・パンダ」「ヒックとドラゴン」といったシリーズで知られる、ユニバーサル・スタジオ傘下のドリームワークスが制作を手掛ける。

『クレオパトラ・イン・スペース』はティーネイジャーのクレオパトラの知られざる冒険を描いたコメディアニメで、主に小学生をターゲットにした作品。3万年後の未来に飛ばされた15歳のクレオパトラは、「ナイル銀河の救世主」として悪の宇宙暴君オクタヴィアンに立ち向かう。

音楽にも力を入れており、エレクトロとエジプトの音楽を融合させた楽曲が使用される。主人公クレオパトラの声を演じる俳優のリリマー・ヘルナンデスが主題歌を歌う。

古代エジプトからいきなり3万年後の宇宙にタイムスリップしたクレオパトラが直面する“カルチャーショック”も見どころの一つ。

『宇宙空母ギャラクティカ』が復活

日本でも1980年代にテレビ放送され人気を呼んだ『宇宙空母ギャラクティカ』(1978)もピーコックが復活させる。2003年に『GALACTICA/ギャラクティカ』としてリブートされたが、今回で二度目のリブート。これまでと同様、英語版のタイトルは『Battlestar Galactica』だ。

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ピーコック版『ギャラクティカ』のプロデューサーを務めるのはサム・イスマイル。ドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』(2015-)や『ホームカミング』(2018-)を手がけた敏腕プロデューサーとして知られている。配信日は未定だが、人気SFシリーズの復活に期待がかかる。

マーベルを擁するディズニーにDCコミックス、Appleなど、近年、ストリーミング配信プラットフォームへの参入が続いている。そんな激戦区に参入したNBCユニバーサルの強みは、何といってもユニバーサルが持つ版権と製作ノウハウ、人材やコネクションだろう。『すばらしい新世界』はスピルバーグのアンブリン製作、『宇宙空母ギャラクティカ』はユニバーサルが権利を保有しており、『クレオパトラ・イン・スペース』はユニバーサル傘下のドリームワークスが手掛ける。

また、配信サービスにおいては今や“古参”で、王者の地位にあるAmazonプライムビデオとNetflixは、大量のSFドラマと映画を製作し続けている

AppleTV+も『フォー・オール・マンカインド』(2019)、アイザック・アシモフ原作の『ファウンデーション』(2021)など、SF作品に力を入れる。

既存プラットフォームのSF攻勢に倣うNBCユニバーサルは、新たな舞台でも王者の地位を手にいれるのだろうか。いずれにしても、SFクリエイター達にとっては、新たな表現の場が生まれることになりそうだ。

 

ピーコックはアメリカで2020年7月15日(水)より開設。広告ありで見放題の月額4.99ドルのプランと、広告なしで見放題の月額9.99ドルのプランが用意されている。NBCで放送されている番組や『E.T.』(1982)などのユニバーサルの映画作品、サッカープレミア・リーグを始めとするスポーツの試合やニュース番組などが楽しめる。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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