Netflixがマーベル、DCとの“プラットフォーム戦争”に次なる一手——大ヒットの一作目に続き、二作目のコミックを出版へ | VG+ (バゴプラ)

Netflixがマーベル、DCとの“プラットフォーム戦争”に次なる一手——大ヒットの一作目に続き、二作目のコミックを出版へ

三つ巴の”プラットフォーム戦争”へ

Netflixが二冊目のコミックを出版

動画配信大手のNetflixは、6月に出版した『The Magic Order』に続き、マーク・ミラー原作の新たなコミックを出版する。タイトルは『Prodigy』、トラブルが起きれば地球のどこにでも駆けつける、世界最高の頭脳を持つ男の物語だ。Netflixは昨年8月、マーク・ミラーが立ち上げたMillarworld社を買収、今年6月に第一弾となるコミック作品『The Magic Order』を刊行していた。

マーベルとDCの「Netflix離れ」

Netflixはこれまで、DCの『ARROW/アロー』や『THE FLASH/フラッシュ』、マーベルの『Marvel デアデビル』や『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』といったコミック原作のドラマ作品を配信してきた。一方で、DCは自社プラットフォームでの動画配信開始を発表。来年アメリカでサービスを開始する動画配信サイト「DCユニバース」では、『タイタンズ』や『ドゥーム・パトロール』といった新作ドラマの配信が決定している。

ディズニーは巨大プラットフォーム設立へ

マーベルの方はといえば、もう一段階上の話が進んでいる。8月8日、マーベルを傘下に置くウォルト・ディズニーは、2019年にディズニー独自の動画配信サービスを開設することを発表した。ディズニーはマーベルの他にも「トイ・ストーリー」シリーズのピクサー、「スター・ウォーズ」シリーズのルーカス・フィルムを傘下におさめている。更に7月末には21世紀フォックスの買収が決定。ディズニーが権利を持つ作品は2019年内にNetflixから引き上げられる予定となっており、Netflixには強烈な向かい風となっている。

勝算あり——Netflixの戦略とは

落とせないコミック事業

Netflixがそんな状況を打破するべく先手を打っているのが、コミック事業だ。DCコミックス等が動画配信サイトに依存する体制からの脱却を狙うように、Netflixはコミック会社に供給を依存する体制から、自社で「原作」を生み出す体制を作り出そうとしている。一見、順序が逆転しており不思議な話にも思えるが、上記の話を総合すれば、Netflixが決死の戦略に出ていることにも頷ける。

マーク・ミラーは救世主になるか

なんといっても、Netflixが味方につけたマーク・ミラーは、DC、マーベルの双方で活躍した伝説的漫画家だ。『スーパーマン: レッド・サン』(2003)や『シビル・ウォー』(2006-2007)を手がけた他、自身で立ち上げたMillarworld社では、『ウォンテッド』(2003-2005)や『キック・アス』(2008-2010)といった、後に映画化されることになる名作を生み出した。実写化との相性と構成力は抜群ということだ。Netflixは既に、『American Jesus』(2009)、『Jupiter’s Legacy』(2013)といったマーク・ミラー原作コミックの実写化を決定している。そして、Netflix × マーク・ミラーの第一弾として発売された『The Magic Order』は、見事大ヒットを記録し、ここ20年で最も売れた新作コミックとなった。ここで続け様に発表された第二弾『Prodigy』の刊行——Netflixにとっては、勝算ありということだろうか。

プラットフォーム資本主義の中で

アメリカのマルクス経済学者ニック・スルニチェクは、現代の資本家は、設備などの生産手段ではなく、サービスの「プラットフォーム」を所有している者のことだと指摘した。SF業界もまた、21世紀型の「プラットフォーム資本主義」に飲み込まれつつある。西部全米脚本家組合は、クリエイターの環境悪化を懸念し、ディズニーの21世紀フォックス買収に強く反発したという。激動の展開を見せる”プラットフォーム戦争”だが、作り手に悪い影響が出ないことを願うばかりだ。

Source
Netflix

VG+編集部

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