北京がSF産業の中心地に
中国で、北京市が同市の西部に“SFシティ”を建設する計画が進行している。更に、SFをテーマにした遊園地も2021年末までの建設完了を目指す。北京西部の首鋼パーク (Shougang Park) で開催中の中国科幻大会 (中国SF大会) で発表された。新華社通信が伝えている。
北京市が目指すのは、鉄鋼工場を改造してアートパークとして生まれ変わった首鋼パーク一帯を、SF産業を集約した“産業団地”に生まれ変わらせる計画だ。ここに優秀なSFクリエイターたちを集め、北京にSF産業クラスタを作り出していくことで、北京を中国政府が後押しするSF産業の中心地としていく狙いだ。北京市科学技術委員会は、ハイレベルなSF実務家を集め、オリジナルのSF作品の創出を支援し、SF産業クラスタを育成していくことで、北京のSF産業の発展を促進するとしている。
SF都市化の内容は
首鋼パークが位置する北京市の石景山区は、SF産業の発展を支援するために、1,000万ドル (約10億4,700万円) の基金を設立。首鋼パークを運営する北京首鋼建設投資有限公司の傅暁明 副総経理は、約10年間で総面積71.7ヘクタール、建設面積約16万平方メートルの“SF都市”を建設するとしている。
具体的には、“3つのセンターと1つのプラットフォーム”の構築を掲げており、SF国際交流センターやSF技術推進センター、SF消費者体験センター、そしてグラフィック作成からデジタル撮影、クラウドサービスに著作権取引といったサービスをワンストップで受けられるプラットフォームを設立するという。また、SFをテーマにした遊園地も、2021年末までの完成を目指して建設される。
国家が後押しする成長戦略
中国では、8月に中国国家電影局と中国科学技術協会によって「科幻十条」と呼ばれるSF映画に関するガイドラインが発表されたばかり。このガイドラインでは、SF小説や漫画、ゲーム作品を映像化していくこと、業界を挙げて人材育成や研究開発、国際交流を支援していくことを掲げている。
中国のSFは、2015年に劉慈欣の『三体』がケン・リュウの英訳によってSF最高賞のヒューゴー賞を受賞して以来、急速に成長を遂げている。2020年にはNetflixが『三体』のドラマ化を発表。中国ではSFは重要な産業として科学技術と共に国家を挙げた支援の対象となっている。
かつて“世界の工場”と呼ばれた中国。現在では世界のSF産業をリードするための準備を着々と進めている。かつて工業地帯だった首鋼パークがSFシティに生まれ変わることは、新時代の到来を示す象徴的な変化だと言えるだろう。