2022年8月『かぐやSFアンソロジー(仮)』刊行
バゴプラの主催する新しいSFレーベル Kaguya Books から、『かぐやSFアンソロジー(仮)』を刊行します。『かぐやSFアンソロジー(仮)』には過去二回のかぐやSFコンテストの受賞者と最終候補者の新作20編と、選外佳作執筆者を対象とした公募作品を5編、収録します。
現在、先行予約としてクラウドファンディングを実施中! 新しいSFレーベルの誕生に応援をよろしくお願いいたします。
3月11日(金)から19日(土)にかけて、『かぐやSFアンソロジー(仮)』の筆者の方数名をお呼びして、執筆の進捗や見どころなどをお聞きする配信を行いました。今回はその中から、葦沢かもめさんと吉美駿一郎さんのお話を紹介します。
葦沢かもめさんの農業SF
葦沢かもめさんはAIと一緒に執筆したショートショート「あなたはそこにいますか?」で第9回日経星新一賞(2022年)の一般部門優秀賞を受賞しました。「未来の学校」がテーマとなった第一回かぐやSFコンテストでは、学校の中で見過ごされがちな用務員を主人公にした、「壊れた用務員はシリコン野郎が爆発する夢を見る」が最終候補に選出されました。
葦沢かもめさんの作品はオレンジを育てている空飛ぶクラゲのような形のドローンが主人公の農業SFです。タイトル作成、文章の一部の作成に執筆支援ツール「AI BunCho」を使っています。「壊れた用務員はシリコン野郎が爆発する夢を見る」でも評価された、軽快で読みやすい語りやセリフの応酬が見どころの一つです。
—AIは今回の小説執筆ではどのように使いましたか。
葦沢:小説を書き進めていく過程で、話に詰まった時、面白い展開がないかなと思った時に、AIに文章を書いてもらって、それを読んで、採用したり、編集したりして書きました。私が書いた分量の方が多めではあります。
—内容やテーマ設定は葦沢さんが考えられたということですね。「AI BunCho」はどんなことをしてくれるサービスなのでしょうか。
葦沢:タイトルを作ったり、あらすじを作ったりもできますね。今回使ったのは対話型執筆という機能です。あらかじめ文章を入力しておくと、それへの続きを書いてくれるようなものです。スマホの予測変換の進化系だと思ってもらえるとわかりやすいと思います。
—AIを使った執筆の楽しさはなんですか。
葦沢:自分が思いつかなかった展開や文章が出てきたりすると楽しいですね。こんな書き方あるんだ、とか、本当に人と一緒に共作しているんじゃないかと思うような文章を出してくれるときもあります。
他にも具体的な使い方の工夫、AIが小説を書くようになった後、人間の作家がするべき役割は?などなど楽しいお話を伺っています。気になる方はこちらから配信の全編をご覧ください!
吉美駿一郎「盗まれた七五」
吉美駿一郎さんは、2020年に第二回文芸ファイトクラブの本選に出場。第二回かぐやSFコンテストでは、「アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ」が大賞を受賞。田田さんによる中国語訳「曾经,小海豹出生后能拖着脐带游三天」が、中国のSF誌「科幻世界」に掲載されました。
吉美駿一郎さんの小説は、2021年、新型コロナウィルスが蔓延している状況下の病院で働く清掃員のお話です。主人公は日頃趣味で作っている川柳を何故か作ることができなくなってしまい、それを同僚に相談します。すると、「言葉を盗まれた」人が見ている共通の夢があるということを教えてくれます。果たして主人公はその夢を見たのか、その夢の正体はなんなのか…といった展開が、病院での人間模様などと一緒に描かれます。
—吉美さんは第二回かぐやSFコンテストで大賞を取られた「アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ」でも印象的な形で「エッセンシャルワーク」という言葉を使われていました。今回も「エッセンシャルワーカー」たちの物語です。共通したテーマで書かれているのはなぜですか。
吉美:もともと、「盗まれた七五」というタイトルで作品を書くことにしていました。2021年の第二回ブンゲイファイトクラブで本選に選ばれた作品が「盗まれた碑文」というものでした。決勝まで進むつもりで、次に進んだら「盗まれた七五」という風に「盗まれた〇〇」シリーズを書こうと思っていたのですが、一回戦で敗退してしまいました。
僕は普段、病院で清掃の仕事をしていて、そこでの日常のことをツイートしていたんです。そしたらある作家さんからDMがあって、そのツイートのようなスタンスで作品を書いたら文学賞が取れるのではないかと言われました。それでノンフィクションっぽく作品を書いてみてもいいかなと思いました。
「アザラシ…」を書く時にもこれらのことを引きずっていたのかもしれないです。オファーをもらって、今回「盗まれた七五」を完成させようと思いました。
—吉美さんは普段、川柳も書かれるのですか。
吉美:一時期書いていました。今は、「フラワーしげるの短歌やろうぜ」に参加していて、短歌を作っています。
—短詩を作るのと、小説を書くのは全然別物ですか。
吉美:そうですね。全然違うものだと思います。小説を書き始めるときは全体像が見えていることがないのですが、短詩はここまでやるというのが見えていないとおさまらなくなってしまいますね。
『かぐやSFアンソロジー(仮)』に掲載されるお二人の新作、お楽しみに!
葦沢さんと吉美さんの配信の全編はこちらから視聴できます。
『かぐやSFアンソロジー(仮)』にはこの他にも、「さかな」にのって星を移動するものたちの話、詐欺師の一人語りによる詐欺と免疫の話、「声」を扱った近未来SFなど、ハードSFから奇想系のSFまで多様な作品が収録されます。
また、クラウドファンディングのリターンには葦沢かもめさんと吉美駿一郎さんも参加されるエッセイ集「私の小説の書き方」もあります。ご支援よろしくお願いします。
そしてKaguya Booksでは、2022年12月に蜂本みささんの単著も刊行します。詳しくはこちらをご覧ください。
日本SF作家クラブ×バゴプラによるオンラインイベント
4,000字以内のSF小説コンテスト「かぐやSFコンテスト」を開催してきたバゴプラと、10,000字以内で同じ書き出しを共有する「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」を開催した日本SF作家クラブが、ウェブ上で開催されるSF掌編コンテストの未来について考えます。
本イベントには、日本SF作家クラブから会長の池澤春菜さん、作家の長谷敏司さん、門田充宏さんが、バゴプラからは経営部門を担当する齋藤隼飛と、クリエイティブ部門を担当する井上彼方が出演します。ウェブの小説コンテストはどうあるべきなのか、持続可能なコンテスト運営、読み手・書き手・運営の三者にとって望ましい形とは……コンテスト運営に携わってきたそれぞれの立場でトークを行います。
主催:バゴプラ 共催:日本SF作家クラブ
日時:3月25日(金) 21:00〜22:30
参加方法:Zoom配信、イベント当日までに配信URLをお送りします(配信から1週間はアーカイブが視聴可)。
チケット:Peatix