十三不塔さんと水町綜さんの『かぐやSFアンソロジー(仮)』の進捗は? | VG+ (バゴプラ)

十三不塔さんと水町綜さんの『かぐやSFアンソロジー(仮)』の進捗は?

2022年8月『かぐやSFアンソロジー(仮)』刊行

バゴプラの主催する新しいSFレーベル Kaguya Books から、『かぐやSFアンソロジー(仮)』を刊行します。『かぐやSFアンソロジー(仮)』には過去二回のかぐやSFコンテストの受賞者と最終候補者の新作20編と、選外佳作執筆者を対象とした公募作品を5編、収録します。

現在、先行予約としてクラウドファンディングを実施中! 新しいSFレーベルの誕生に応援をよろしくお願いいたします。

3月11日(金)から19日(土)にかけて、『かぐやSFアンソロジー(仮)』の筆者の方数名をお呼びして、作品の紹介や苦労した点などをお聞きする配信を行いました。今回はその中から、十三不塔さんと水町綜さんのお話を紹介します。

十三不塔「火と火と火」

十三不塔さんは2020年『ヴィンダウス・エンジン』にてハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞。また過去にも本名名義にて講談社群像新人賞を受賞しています。第二回かぐやSFコンテストでは「スウィーティーパイ」が最終候補に選出され、審査員の橋本輝幸さんから「個性と完成度がずば抜けている」と評されました。

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『かぐやSFアンソロジー(仮)』に収録される十三不塔さんの作品は、シナイ半島が舞台のディストピア検閲SF「火と火と火」です。シナイ半島に建設された国家で検閲が加速していく過程と、その中で生きていく家族を描いた作品です。検閲装置が、単に検閲に引っかかった事項を削除するのではなく、再構築して新しいものを創造していくというのがポイントになっています。謎解き要素もあるのでじっくり読んでみてください。

—検閲がテーマの作品を書いてみたいと思ったのはなんでですか

十三不塔:立原透耶さんと大恵和実さんが中国史SF短篇集『移動迷宮』について話をされていた時に、中国ではその時の政権のトップに誰がいるかによって検閲の厳しさが違う。翻訳などは原作の発表から翻訳を経て発表までタイムラグがあるのでチェックの厳しさも変化するなど、検閲にまつわるお話を聞きました。それを聞いた時に、検閲をテーマにした作品を書いたら面白そうだなと思いました。

—タイトルはどのようにして決まったのですか。

十三不塔:もともとは「自死する聖典」でした。それから内容の推移とともに変化して、「第三の火」というタイトルも考えました。ただ、これは原子力を意味する言葉なのでずれてしまうなと思い却下して、最終的には「火と火と火」に決めました。

最初の“火”は〈篝火〉という国家の聖典のことで、次の“火”は聖典の注釈書です。では三番目の火は…?というあたりにも注目してお読みください。

水町綜「星を打つ」

水町綜さんは、2019年に『ハチェットマンズ・ディストーション』がハヤカワSFコンテストの最終候補作品に選出されました。第二回かぐやSFコンテストでは、「未来の色彩」というテーマに真正面から取り組んだ作品として評価された「ヒュー/マニアック」が最終候補に選出されました。

『かぐやSFアンソロジー(仮)』に収録される水町綜さんの作品は、「星を打つ」という星間戦争SFです。数百年間続く星間戦争によって疲弊し衰退した人類が戦争を終わらせるため、起死回生の一発逆転に命運を懸けるハードでシリアスで壮大なお話です。

水町さんにも苦労した点や見どころをお聞きしたかったのですが、ネタバレを回避するためにお聞きできませんでした。そこまでネタバレを恐れているのは何故なのか、ということは読んでいただけばわかると思います。お楽しみに!

代わりに水町さんには、普段の作風についてお聞きしました。

—第二回かぐやSFコンテストで最終候補に選出された「ヒュー/マニアック」は宇宙を舞台にしたお仕事SFでした。今回の作品も星間戦争が出てくるということで、宇宙SFを書かれることが多いのでしょうか。

水町:そんなことは全然ありません。比較的、現代よりの都市や社会の中に新しい技術が台頭してきてそこに変化が起きたり、逆に今よりもっと進んだ未来の世界に我々の身近にあるものが持ち込まれたりするタイプのSFを書いています。

「ヒュー/マニアック」は、パーソナルカラー診断という現代社会にある身近な仕事が、宇宙規模に発展した時に新しい側面が出てきたりするという構成の話になっています。今回の新作「星を打つ」でも、身近なものが宇宙規模に発展するという要素が出てくるため、「宇宙」という要素がかぶった、という感じです。

『かぐやSFアンソロジー(仮)』にはこの他にも、ポストアポカリプスを描いた怪談、生きたまま襟巻になるように進化したキツネの話、セーターの中で迷子になって大冒険する話など、ハードSFから奇想系のSFまで多様な作品が収録されます。

また、クラウドファンディングのリターンには十三不塔さんと水町綜さんも参加されるエッセイ集「私の小説の書き方」もあります。ご支援よろしくお願いします。

またKaguya Booksでは、2022年12月に蜂本みささんの単著も刊行します。詳しくはこちらをご覧ください。

日本SF作家クラブ×バゴプラによるオンラインイベント

4,000字以内のSF小説コンテスト「かぐやSFコンテスト」を開催してきたバゴプラと、10,000字以内で同じ書き出しを共有する「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」を開催した日本SF作家クラブが、ウェブ上で開催されるSF掌編コンテストの未来について考えます。

本イベントには、日本SF作家クラブから会長の池澤春菜さん、作家の長谷敏司さん、門田充宏さんが、バゴプラからは経営部門を担当する齋藤隼飛と、クリエイティブ部門を担当する井上彼方が出演します。ウェブの小説コンテストはどうあるべきなのか、持続可能なコンテスト運営、読み手・書き手・運営の三者にとって望ましい形とは……コンテスト運営に携わってきたそれぞれの立場でトークを行います。

配信イベント「みんなで考えよう! SF掌編コンテストの未来」概要
主催:バゴプラ 共催:日本SF作家クラブ
日時:3月25日(金) 21:00〜22:30
参加方法:Zoom配信、イベント当日までに配信URLをお送りします(配信から1週間はアーカイブが視聴可)。
チケット:Peatix

VG+編集部

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