映画『ジョーカー』作曲家が語る『タクシードライバー』との接点とアーサーの内面

©︎ Hildur Guðnadóttir 2018

映画『ジョーカー』の音楽に注目

DC映画最新作の『ジョーカー』が2019年10月4日(金)に公開され、大きな注目を集めている。人気コミック「バットマン」の宿敵・ジョーカーのオリジンを描いたストーリーはもちろん、貧困や精神病を扱った設定も様々な議論を呼んでいる。そして、同時に注目を浴びているのは、映画『ジョーカー』を演出する音楽だ。

『ジョーカー』の音楽を巡っては、性犯罪者であるゲイリー・グリッターの楽曲が使用されたことで批判が起きた。その後もゲイリー・グリッターは著作権を保持しておらず、楽曲使用料は本人に支払われないことが明らかになるなど、米国では各社の報道が続いている。

(『ジョーカー』でゲイリー・グリッターの楽曲が使用されたことの真の問題点については、以下の記事を参照していただきたい)

サウンドトラックを手がけた作曲家は?

同時に『ジョーカー』の音楽の面で注目を集めているのは、同作の音楽 (サントラ) を手がけた作曲家ヒドゥル・グドナドッティルだ。アイスランド出身のチェリストで作曲家、ジョーカー公開時点で37歳の彼女は、チェルノブイリ原発事故を題材にしたHBOのドラマシリーズ『チェルノブイリ』(2019) で音楽を担当したばかり。テッド・チャン原作のSF映画『メッセージ』(2016) にもチェリストとして参加している。

映画『ジョーカー』では、作曲家としてはもちろん、チェロ演奏家としてのヒドゥル・グドナドッティルの才能が存分に発揮された。重厚なチェロの音色によって、『ジョーカー』という作品の根底に流れる通底する陰鬱さと奇怪さを見事に表現されている。

作中でも最も奇妙なシーンの一つである“トイレで踊るアーサー”のシーンでは、トッド・フィリップス監督と主演のホアキン・フェニックスは、ヒドゥル・グドナドッティルの音楽を聴きながら踊りの演出を考えたのだとか。トイレでのダンスシーンの撮影秘話は以下の記事から詳細を確認してほしい。

脚本を基に作曲

作曲家ヒドゥル・グドナドッティルが『ジョーカー』の劇伴について依頼を受けたのは『ジョーカー』公開から遡ること1年半前の出来事だという。以前からジョーカーを魅力的なキャラクターだと考えていたヒドゥル・グドナドッティルは、その仕事に興味があると答え、トッド・フィリップス監督とのやり取りが始まったそうだ。彼女は、Film Music Magazineのインタビューにこう答えている。

それからトッドは脚本を送ってきて、それを読んで得たフィーリングを基に曲を書いて欲しいと依頼されました。『ジョーカー』は非常に多くの発見と混乱を経験する人間の内面を描いた作品で、私の心を打ちました。

映画『ジョーカー』のストーリーに感銘を受けたヒドゥル・グドナドッティルは、撮影前にメイン楽曲のスコアを全て仕上げたという。脚本の意図を汲み取ったサウンドトラックは、トッド・フィリップス監督を大いに喜ばせたのだとか。「私が物語のトーンを正確に捉えていたことに、彼は驚いていましたよ」と、ヒドゥル・グドナドッティルは回想している。

ホアキン・フェニックスの演技にも影響

また、アーサーがトイレで踊るシーンで流れる曲については、最初期に書かれた楽曲で、ジョーカーのメインテーマでもある。ホアキン・フェニックスは、この曲を聴いたことがアーサーというキャラクターの役作りにおけるターニングポイントであったと彼女に伝えたという。脚本から生まれたサウンドトラックだが、主演俳優の役作りにも影響を与えていたのだ。

 『タクシードライバー』との接点

また、ヒドゥル・グドナドッティルは、トッド・フィリップ監督が『ジョーカー』に強い影響を与えたと話すマーティン・スコセッシ監督の映画『タクシードライバー』(1976) との接点についても認めている。『タクシードライバー』でサウンドトラックを手がけたのは、『地球の制止する日』(1951)、『SF巨大生物の島』(1961)、『華氏451』(1966) といったSF作品を手がけてきた作曲家のバーナード・ハーマンだ。

『ジョーカー』のスコアは『タクシードライバー』での主人公が持つ暴力的な側面が露呈していく様を想起させる、というインタビュアーの指摘と、「『ジョーカー』の作曲でもそのようなアプローチをとったのですか」との質問に、ヒドゥル・グドナドッティルは以下のように答えている。

はい、もちろんですよ。この映画は彼 (アーサー) が自分が抱える問題について説明してくれる自分の過去から様々な発見をしていくという意味では、直線的です。(発見に基づいた) 構築が進むにつれて、彼はより怒りに満ち、攻撃的になっていきます。ですから、音楽も彼の内なる反乱を追従したものになっています。

自分の物語として見るか

そのサウンドトラックと共に一人の人間の変わりゆく内面を描いた映画『ジョーカー』。ヒドゥル・グドナドッティルは、『ジョーカー』を自分自身と関連した物語と感じるか、という質問に対して、以下のように答えている。

アーサーの物語は、私が経験したことのないものです。しかし、街に出ればどこでも目に入るはずです。ホームレス状態にある人々や、社会が決めた枠組みに溶け込めず困難な状況にある人々の姿を目にするでしょう。これは私たちの周辺に多く存在しているものであり、私たちが関心を向けるべきことでもあります。非常に多くの人々にとって現実的な問題なのです。

映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金) より全国でロードショー。

ヒドゥル・グドナドッティルが作曲を手がけたオリジナルサウンドトラックは、Watertower Musicより発売中。

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via: ©︎ Hildur Guðnadóttir 2018
– Source –
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