映画『サンダーボルツ*』公開
MCU映画『サンダーボルツ*』が2025年5月2日(金) より全国の劇場で公開された。2月に公開された『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』に続き、2026年5月公開を予定している映画『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へと繋がる重要作となっている。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、キャプテン・アメリカことサム・ウィルソンによるアベンジャーズ再建にスポットライトが当てられた。一方、エレーナ・ベロワやバッキー・バーンズを中心とした『サンダーボルツ*』では、今後のアベンジャーズについて重要な展開があった。
今回は、MCUにおいて今後のアベンジャーズがどうなっていくのかという点について、『サンダーボルツ*』と『キャプテン・アメリカ:BNW』のネタバレありで考察していこう。以下の内容は両作の重大なネタバレを含むため、本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『サンダーボルツ*』と『キャプテン・アメリカ:BNW』の内容及び結末に関するネタバレを含みます。
Contents
『サンダーボルツ*』ネタバレ考察 アベンジャーズはどうなった?
『サンダーボルツ*』ラストの意外な展開
映画『サンダーボルツ*』では、ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌことヴァルが運営するOXEで行われていた非人道的な人体実験を暴くため、下院議員となったバッキー・バーンズが奔走。一方でOXEの悪事の“証拠”としてヴァルに消されそうになったエレーナ、ゴースト、ジョン・ウォーカーが、アレクセイと共に立ち上がり、バッキーの力を借りてヴァルに挑んだ。
OXEの人体実験の結果、人工の超人セントリーとなったボブは、ヴォイドとなり暴走を始め、エレーナら“サンダーボルツ”がボブに寄り添うことでその暴走を止めた。サンダーボルツというのはエレーナが幼少の頃に所属していたサッカーチームの名前で、アレクセイが喜んで呼び始めた名前だった。
『サンダーボルツ*』のラストでは、窮地に立たされたヴァルがサンダーボルツメンバーを記者会見に誘き出し、「ニュー・アベンジャーズ」として紹介。表舞台での活躍を望んでいたエレーナは、これをヴァルへの「貸し」として受け入れ、『サンダーボルツ*』というタイトルは『ニュー・アベンジャーズ』の仮の名であったことが明かされた。
アベンジャーズが二つ?
『サンダーボルツ*』を観に行ったつもりが、新たなアベンジャーズのオリジンを観ていたという衝撃の展開。ミッドクレジットシーンではニュー・アベンジャーズが商品展開されていることが明かされ、ポストクレジットシーンではそれから14ヶ月が経過してもエレーナ達は政府公認のアベンジャーズとして活動していることが明かされる。
しかも、バッキーによるとキャプテン・アメリカことサム・ウィルソンはニュー・アベンジャーズの存在に納得していないらしい。バッキーは「盾を持っているから」と言っているが、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) では先代のスティーブ・ロジャースから受け継いだ盾の扱いについて揉めた経緯があるため、バッキーにとっては説得力のある理由なのだろう。
バッキーはサムと話し合ったがそれでもダメで、エレーナによるとサムはアベンジャーズの商標登録を申請したという。サムの狙いはアベンジャーズを商業利用することではなく、アレクセイが望んでいたようなニュー・アベンジャーズの商品展開を阻止することだと考えられる。
思えばスティーブ・ロジャースには、戦時中にプロパガンダに利用された過去がある。ドラマ『ホークアイ』(2021) では、アベンジャーズのニューヨークの戦いは「ロジャース・ザ・ミュージカル」としてミュージカル化されていることが明らかになったが、これも「アベンジャーズ」というタイトルを避けているように思える。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で命を落とした仲間も含め、先人達の思いを大事にしたいというのがサム・ウィルソンの考えなのかもしれない。
アベンジャーズの商標問題
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022) 第5話では、スーパーヒーローの商標問題について一つの結論を出している。同エピソードではタイタニアが勝手に「シー・ハルク」を商標登録し、シー・ハルクことジェニファー・ウォルターズを商標侵害のかどで提訴した。
裁判ではジェニファーがマッチングアプリでシー・ハルクを名乗っていたことを証明。「ヒーロー名が勝手に商標登録されても、それ以前から自分のアイデンティティとして名前を使用していれば権利が認められる」という判例が生まれた。
旧アベンジャーズに有利な判例のような気もするが、実際のところ旧アベンジャーズとも一緒に戦ったバッキーもニュー・アベンジャーズのメンバーなので難しいところではある。また、政府が商標権を主張する場合は、政府のブランドが勝手に商業利用された場合に限られるため、いずれにせよアクションを起こすならサムから、ということになるだろう。
ちなみに『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の第5話ではアベンジャーズのパチモンTシャツが登場している。「Avongers」「Avingers」と書かれているもので、世間の人は商標登録前から世界を救ったヒーローチームの名前を濫用を避けていたことが窺える。
三つのアベンジャーズ?を考察
ニュー・アベンジャーズの発表から14ヶ月が経過し、なかなか込み入ったことになってしまったアベンジャーズの“のれん分け”問題。エレーナとバッキーが中心となるニュー・アベンジャーズが『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の中心に立つのかと言えば、どうやらそうでもないらしい。
マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは、『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』でドクター・ドゥームに挑む5つの勢力として、ワカンダ人、X-MEN、ファンタスティック・フォー、アベンジャーズ、そしてサンダーボルツを挙げている。サンダーボルツ=ニュー・アベンジャーズだと考えると、『ドゥームズデイ』には二つのアベンジャーズが登場することになりそうだ。
一方で、映画『マーベルズ』(2023) のラストでは、ミズ・マーベルことカマラ・カーンがチーム結成に動いている。新たにホークアイを襲名したケイト・ビショップをリクルートし、“アントマンの娘”であるキャシー・ラングをリクルートすることを示唆した。
サムの本家アベンジャーズとバッキー&エレーナのニュー・アベンジャーズ、そしてカマラのチームは、どんなメンバーになり得るのか。ここからはそのメンバーと特徴について考察していこう。
ニュー・アベンジャーズのメンバーは?
ニュー・アベンジャーズはサンダーボルツがそのままメンバーに。元ブラック・ウィドウのエレーナ、元ウィンター・ソルジャーのバッキー、レッド・ガーディアンことアレクセイ、ゴーストことエイヴァ、U.S.エージェントことジョン・ウォーカーの5人からなる。
雑用をしているボブがニュー・アベンジャーズに加われば、初代アベンジャーズと同じ6人組になる。アベンジャーズにも自分の力をコントロールできないハルクがいたので、ボブの加入もありえない話ではないだろう。
ニュー・アベンジャーズのメンバーは、過半数の3人が超人血清を打っているというのが特徴だ。バッキーはヒドラ製、アレクセイはソ連製、ジョン・ウォーカーはパワー・ブローカーが作成を主導したマドリプール製の超人血清を打っている。これは、超人血清を打たないことで人々の目標になれたサム・ウィルソンと一線を画す要素だ。
出身組織を見ても、米空軍出身のサム&ホアキンに対し、ニュー・アベンジャーズのメンバーはソ連のKGBやレッドルーム、ヒドラに所属していた経歴があり、一時は公式なキャプテン・アメリカだったジョン・ウォーカーも米陸軍を不名誉除隊となっている。ゴーストはS.H.I.E.L.D.出身だが、当時のS.H.I.E.L.D.を牛耳っていたのはヒドラで、自身も兵器として利用されていた。
だからこそ、ニュー・アベンジャーズはヴィランとしての過去を持つキャラクターでもメンバーになれる可能性がある。例えば、ラフト刑務所に収容されているレッド・ハルクことロス元大統領や、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でジョン・ウォーカーとも面識があるバロン・ジモの招集もあり得る。
ニュー・アベンジャーズは米政府の組織ということで、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で政府に入り込んだパワーブローカーことシャロン・カーターの加入もあり得るだろう。ボブのようにコントロールが難しいキャラクターとしては、ムーンナイトもいる。別ユニバースからはデッドプールとウルヴァリンという傷ものコンビの加入にも期待したい。
本家アベンジャーズのメンバーは?
キャプテン・アメリカが率いる本家アベンジャーズは、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のラストの時点でキャプテン・アメリカことサム・ウィルソンと、ファルコンことホアキン・トレスの所属は確実だ。旧アベンジャーズメンバーのキャプテン・マーベル、ウォン、ブルース・バナー、その三人と会議を持ったシャン・チーとケイティもサム派に入ってくれるだろう。
ブルースの従妹のシー・ハルクことジェニファーは、商標登録の件ですでにサムに力を貸してくれている可能性がある。スティーブ・ロジャースに心酔し、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2018) でサムからの招集に応えたアントマンことスコット・ラングと、ワスプことホープ・ヴァン・ダインもサムにつくはず。
ニュー・アベンジャーズが東海岸のニューヨークを拠点にするということで、本家アベンジャーズはシャン・チー、シー・ハルク、アントマンらがいる西海岸に拠点を置くのかもしれない。そうなれば本家アベンジャーズは、原作コミックにも登場する、西海岸を拠点とするウエストコースト・アベンジャーズ的な扱いを受けることになるかもしれない。
ニューヨークのヒーローでは、旧アベンジャーズのドクター・ストレンジとスパイダーマンは本家アベンジャーズにつくだろう。ストレンジとウォンと関係が近いアメリカ・チャベスの合流も期待できる。
チャンピオンズは商標対策?
だが、アメリカ・チャベスら若手ヒーローの動向が読めないのは、先に述べた通りカマラが独自のリクルートを進めているように見えるからだ。カマラがリクルートした若手チームがそのまま本家アベンジャーズに加わるのであれば、構図は「本家アベンジャーズ vs ニュー・アベンジャーズ」という形ですっきりするが、カマラ達が別チームになるのであれば、“アベンジャーズ乱立”となる可能性もある。
というのも、コミックではカマラ・カーンはアベンジャーズを離脱してチャンピオンズというヒーローチームを立ち上げる展開があるのだ。チャンピオンズはアベンジャーズのベテランヒーロー達に疑問を持った若手ヒーローが参加するチームで、ヤング・アベンジャーズ等と異なり“アベンジャーズ”の名前を冠していない。
映画『サンダーボルツ*』のラストではサム・ウィルソンがアベンジャーズの商標登録を申請したことが明かされた。MCUでは商標の問題でアベンジャーズの名前が使えないために、カマラ達はチャンピオンズを名乗ることになるのかもしれない。
商標登録のくだりがただのギャグと思えない理由は他にもある。アレクセイは商標対策で「Avengers」の綴りを「Avengerz」にすることを提案しているが、バッキーとサムのいざこざも含めて、若手チームからすれば“おじさん同士の小競り合い”に見えるかもしれない。そんなベテラン勢に嫌気がさして独自のチームを立ち上げるという可能性もあるだろう。
ニュー・アベンジャーズは政府の組織だし、本家アベンジャーズはいなくなった旧世代のことばかり気にしているとしたら——。世代が異なる若手ヒーローにとってはどちらも魅力的に思えないのではないだろうか。
『ホークアイ』のアノ人が鍵に?
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』(2023) では、カマラはニュージャージーを離れて西海岸を訪れていることが明かされた。サンフランシスコに住むキャシー・ラングのリクルートに出向いていると見られ、カマラ、ケイト、キャシーを中心とした若手チームの結成はそう遠くないように思われる。
ドラマ『ホークアイ』第2話では、ケイトのおばのモイラ・ブランドンがフロリダに別荘を持っていることが明かされている。モイラ・ブランドンは原作コミックでウエストコースト・アベンジャーズの本部となる場所を提供した人物だ。
アベンジャーズの支援者だった富豪のモイラ・ブランドンがケイトのおばというのはMCU独自の改変で、何らかの意図があるように思われる。もし仮に東海岸にニュー・アベンジャーズ、西海岸に本家アベンジャーズという布陣が出来上がるなら、ケイトがおばを頼り、モイラの別荘がある南部のフロリダにチャンピオンズの拠点を置く可能性もあるだろう。
アベンジャーズの乱立、あるいは“のれん分け”という最高に想像が膨らむ展開を用意してくれた『サンダーボルツ*』。一方でバラバラの状態のままドクター・ドゥームという強敵に挑んでしまっては、サノスの時の二の舞になるだろう。そして、ワカンダやファンタスティック・フォー、そしてX-MENがアベンジャーズとどう絡むことになるのか、期待して続報を待とう。
映画『サンダーボルツ*』は2025年5月2日(金) 公開。
本記事の筆者・齋藤隼飛が翻訳を手がけた『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』は5月2日発売。500点以上のアートと共にMCUの歴史を辿る貴重な一冊なのでぜひチェックしていただきたい。
『サンダーボルツ*』オリジナル・サウンドトラックは発売中。
コミック『サンダーボルツ』は中沢俊介の翻訳で発売中。
『サンダーボルツ*』ラストのネタバレ解説&考察はこちらの記事で。
ケヴィン・ファイギが明かした『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』でドクター・ドゥームと戦う5大勢力と、同作の出演キャストについてはこちらの記事で。
タスクマスターの死について『サンダーボルツ*』の監督が語った内容はこちらから。
バッキーはなぜ議員に? そして、最後は議員を辞めた? 演じたセバスチャン・スタンが語った背景の解説はこちらから。
バッキーの過去がサンダーボルツメンバーとニュー・アベンジャーズに与えた影響についての考察はこちらから。
サンダーボルツメンバーのこれまでのまとめはこちらから。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ラスト&ポストクレジットの解説&考察はこちらから。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』時点のアベンジャーズ候補の考察はこちらから。
『キャプテン・アメリカ:BNW』までのMCU時系列解説はこちらから。
サム役のアンソニー・マッキーが語ったアベンジャーズの今後についてはこちらの記事で。
バッキーの「I love you」発言への海外の反応と、10年前にあった伏線の考察はこちらから。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』最終回のネタバレ解説はこちらから。