ネタバレ解説『サンダーボルツ*』バッキーの過去はなぜ重要なのか ボブとの共通点、エレーナへの言葉を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『サンダーボルツ*』バッキーの過去はなぜ重要なのか ボブとの共通点、エレーナへの言葉を考察

©︎2025 Marvel

映画『サンダーボルツ*』公開

映画『サンダーボルツ*』が2025年5月2日(金) より公開され、大きな話題を呼んでいる。本作は映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(2025) に続くMCU映画第36作目で、2026年5月米公開の映画『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に向けて重要な起点となる作品だ。

一方、本作はセバスチャン・スタン演じるバッキー・バーンズがメインキャラクターとして映画作品に帰ってくる作品だ。考えてみれば『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) 以来、約9年ぶりとなる。

また、『サンダーボルツ*』にはルイス・プルマン演じるボブ・レイノルズが参戦。原作コミックでも強力な力を持つセントリーというヒーロー(?)としてMCUに加わる。今回は、映画『サンダーボルツ*』に登場した古参のバッキーの過去と、ボブやエレーナとの関係について、ネタバレありで解説&考察してみよう。なお、以下の内容は結末に関する重大なネタバレを含むため、必ず本編を劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『サンダーボルツ*』の内容および結末に関するネタバレを含みます。

『サンダーボルツ*』解説:バッキーの過去とエレーナへの言葉

バッキーの名スピーチ

映画『サンダーボルツ*』では、バッキーは下院議員となり、ゲイリー下院議員と共にCIA長官となったヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌが運営していた企業の不正を追求する。バッキーは映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では下院議員を目指しており、キャンペーンの合間にサム・ウィルソンの危機に駆けつけていた。

あくまで資料を用い、手順を踏んでヴァルを追い詰めようとするゲイリー議員に対し、バーンズ議員は現場に向かう。バッキーはエレーナ達を捕らえた後は証人として議会に連れて行こうとするのだが、ヴァルの助手のメルからヴァルが手中に収めたボブの情報を得て、やっぱり強硬手段に出ることを選ぶ。

この場面でサンダーボルツと手を組もうとするバッキーに対し、エレーナは「私たちと?」と聞くのだが、バッキーは「行くあてがあるのか?」と切り返す。なおも「組む相手を間違えてる」と食い下がるエレーナに、バッキーは「俺も君たちと同じだった」「逃げようとしてもいずれ追い付かれる」「今行動に出るか、一生抱えて生きるかだ」という名スピーチを披露する。

バッキーの困難な道のり

この言葉が説得力を持つのは、MCUにおけるバッキー・バーンズが困難な道のりを歩んできたからだ。映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011) で初めて登場したバッキーは親友のスティーブがキャプテン・アメリカとなるきっかけを作った。だが、ヒドラとの戦いの中で消息不明となり、映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014) ではヒドラの残党によって超人結成を打たれて洗脳され、ウィンター・ソルジャーになっていたことが明らかになった。

スティーブはなおも記憶をなくしたバッキーに寄り添い、バッキーはスミソニアン博物館で自らに関する展示を見て、過去の自分を思い出す第一歩を踏み出した。映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) では、バッキーはワカンダのティ・チャカ王殺しの容疑者とされ、バッキーの無実を信じるスティーブとサムと共に逃げることになる。

その後、ティ・チャカ殺しの真犯人はジモであることが分かったが、トニー・スタークの両親をウィンター・ソルジャー時代のバッキーが殺したことが明らかになり、トニーは激怒。バッキーについたスティーブと共に再び逃亡の身となった。

その後バッキーは、ワカンダでアヨの協力を得てヒドラの洗脳を解いてもらい、ヴィブラニウム製の新しい腕も与えてもらった。サノス襲来に際してはワカンダでアベンジャーズと共に戦い、「エンドゲーム」後は“償い”をするために、ブルックリンでカウンセリングを受けながら生活していた。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) では、スティーブの盾の扱いを巡ってサムと対立するも、一緒にセラピーを受けて共闘。朝鮮戦争時代に知り合った“最初の黒人のキャプテン・アメリカ”であるイザイア・ブラッドリーをサムに紹介し、アヨに依頼してサムにワカンダ製の新スーツを用意するなど新キャプテン・アメリカの誕生に貢献した。

最後には、ウィンター・ソルジャー時代に自分が息子を殺したヨリ老人に真実を明かし、自分のための“復讐の償い”ではなく、被害者のための償いに取り組むことに。サムがキャプテン・アメリカとして活動する一方で、バッキーは政治の世界に活路を見出したようだ。

前を向かせるバッキー

このように振り返ってみると、バッキーはヒドラの暗殺者という暗い過去を持ちながらも、スティーブをはじめとする周囲の人々の協力を得て、政治家として他者を助ける立場になることができた。時にはアヨが、時にはサムがバッキーの側にいた。そして、バッキー自身もその支援に応えて前を向こうとした。

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では、バッキーの方がサムの危機に駆けつけた。映画『サンダーボルツ*』では、自分と同じように殺し屋をやってきたサンダーボルツの面々に「俺も君たちと同じだった」「今行動に出るか、一生抱えて生きるかだ」と語りかけ、自分が手を差し伸べる側に立った。

“ヴィラン”と呼ばれる存在から脱した先輩として、後輩達に前を向かせ、その機会を与えるバッキーの姿は感動的だった。スティーブやサムにはできないやり方で、110歳のバッキーは闇を抱える若者達に手を差し伸べている。

考察:バッキーとボブの繋がり

スティーブ、バッキー、エレーナ、ボブ

そのバッキーの取り組みは、結果的にボブを助けることになる。幼少期のトラウマを抱え、放浪生活を送る中でOXE社の実験に参加し、スーパーヒーローのセントリーとなったボブは、けれど自分の中のヴォイドが暴走するのを止めることができなかった。そんなボブに対し、エレーナは自らヴォイドの中に身を投じることを選ぶ。

映画『サンダーボルツ*』では、バッキーとボブの絡みはほとんどない。それどころか、エレーナやジョン・ウォーカーと違ってボブの能力に触れていなかったため、ヴォイドの中に入っていく作戦には懐疑的だった。だが、エレーナは同じく“ヴォイド=虚無感”を抱えている者としてボブに寄り添い、「あなたは一人じゃない」と伝えた。

ボブが自分の分身でもあるヴォイドを殴り続ける姿は、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で洗脳状態にあるバッキーがスティーブを殴り続けたクライマックスのシーンと重なる。この時スティーブは抵抗せず、殺されそうになっても「最後まで一緒だ」とバッキーに告げた。この一言でバッキーは踏みとどまり、水の中に落ちたスティーブを助け出した。バッキーの“回復”の道のりはそこから始まったのだ。

スティーブはバッキーのことを諦めず、バッキーは同じように暗い過去を抱えるエレーナ達に手を差し伸べ、エレーナ達はボブに手を差し伸べた。ヴォイド戦においてバッキーは一歩引いた位置にいたが、バッキーからすればボブは“孫世代”。後輩達が新入りを助ける際に出しゃばらないところにも好感が持てる。

旧アベンジャーズができなかったこと

ニューヨークから闇が晴れた後、サンダーボルツはニュー・アベンジャーズを襲名し、14ヶ月後もボブはバッキーやエレーナ達と一緒にいる。ボブは力を使おうとすればヴォイドが出てきてしまうことから、皿洗いなどをしてニュー・アベンジャーズを助けているようである。

『サンダーボルツ*』のポストクレジットシーンではサムが率いる本家アベンジャーズとの対立が示唆される。バッキーのいるニュー・アベンジャーズの特徴は、バッキーやエレーナのように闇を抱える者が気兼ねなく所属できるという点だろう。

思えば『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でもアベンジャーズは分裂したが、ソコヴィア協定への参加とティ・チャカ王暗殺事件をめぐって、後に大統領となるロス国務長官ら政府はトニー・スタークの側についていた。当時のスティーブとバッキーは“政府のアベンジャーズ”にいることを許されなかったのだ。

ニュー・アベンジャーズも政府公認のアベンジャーズだ。洗脳され自分自身の制御を失った経験があるバッキーは、同じくパワーの制御に不安を抱えるボブを近くに置いている。バッキーとエレーナのアベンジャーズは、かつてのアベンジャーズができなかったことをやっているようだ。

バッキーは行くあてもなく逃亡し、逃げ続けざるを得なかった『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』後の自分の姿をボブに重ね合わせているのかもしれない。エレーナ達にかけた「行くあてはあるのか」「逃げても追い付かれるだけだ」という言葉がここでも思い出される。

バッキーが歩んできた道を抜きにして考えるなら、確かにサンダーボルツ=ニュー・アベンジャーズはヘンテコなチームだ。だが、ウィンター・ソルジャーの処遇をめぐって崩壊し、サノスに指パッチンを許した旧アベンジャーズとの違いを考えれば、バッキーがそこでやろうとしていることも分かる気がする。サムと距離が生まれても、バッキーがニュー・アベンジャーズを大事にしている理由は、サムのように“みんなの目標”にはなれないメンバー達に居場所を作るためなのかもしれない。

ただ、心配なのは、そのチームが政府公認の唯一のアベンジャーズになってしまうことだ。公的な支援によって成り立つチームであることは確かだが、いずれニュー・アベンジャーズだけでは対処しきれない状況にも直面するだろう。その時、トニーとスティーブの衝突を間近で見ていたサムとバッキーはどんな決断を下すのか。今後の展開からも目が離せない。

映画『サンダーボルツ*』は2025年5月2日(金) 公開。

『サンダーボルツ*』公式

本記事の筆者・齋藤隼飛が翻訳を手がけた『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』は5月2日発売。500点以上のアートと共にMCUの歴史を辿る貴重な一冊なのでぜひチェックしていただきたい。

『サンダーボルツ*』オリジナル・サウンドトラックは発売中。

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コミック『サンダーボルツ』は中沢俊介の翻訳で発売中。

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『サンダーボルツ*』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

『サンダーボルツ*』のラストを受けた、“三つのアベンジャーズ”についての考察はこちらの記事で。

タスクマスターの死について『サンダーボルツ*』の監督が語った内容はこちらから。

 

サンダーボルツメンバーのこれまでのまとめはこちらから。

サンダーボルツは『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』でドクター・ドゥームと戦う5大勢力の一つに数えられている。詳しくはこちらの記事で。

 

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ラスト&ポストクレジットの解説&考察はこちらから。

バッキーの「I love you」発言への海外の反応と、10年前にあった伏線の考察はこちらから。

『キャプテン・アメリカ:BNW』までのMCU時系列解説はこちらから。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』最終回のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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