『猿の惑星/キングダム』ラストについて監督が語る
映画『猿の惑星/キングダム』は「猿の惑星」リブート第4作目にあたる完全新作で、ウェス・ボール監督が指揮を執った作品。米国では公開2週目で興行収入4,060万ドルを叩き出し、2週連続の1位を記録した。日本での国内興収も5億円を突破し、全世界興収は2億3,700万ドル(約370億円)と、大ヒット街道を邁進している。
『猿の惑星/キングダム』のヒットは、「完全新作」と銘打ち、関係者を対象とした試写会を開かないなど独自のマーケティングにも理由がある。一方で、多くの人が本作を鑑賞した今、注目が集まっているのはその内容についてだ。特にそのラストについて、『猿の惑星/キングダム』で「メイズ・ランナー」シリーズ以来の大ヒット作品を生み出したウェス・ボール監督が語っている。あのエンディングにはどのような意味が込められていたのだろうか。
以下の内容は、映画『猿の惑星/キングダム』の結末に関するネタバレを含みます。
『猿の惑星/キングダム』エンディングの意味は?
『猿の惑星/キングダム』のラストは、主人公のノアがイーグル族の新たなリーダーとなり、人間のメイはそれを見届けつつ人類の復興に向けて生き残っている人間のコミュニティに帰っていくというものだった。ノアらイーグル族にとっても、メイら人類にとっても未来の可能性が開かれたエンディングであり、今後のシリーズ展開に期待を持たせるものとなっていた。
また、人類は人工衛星へのアクセスが可能になり、猿達は天文台から宇宙に関心を持つようになった。人と猿が共通して外の世界に目を向けるようになったという点でも、「猿の惑星」のユニバースの可能性はさらに広がったと言える。
『猿の惑星/キングダム』のこのラストから、「猿の惑星」フランチャイズはどのように展開していくのだろうか。米The Directのインタビューでは、ウェス・ボール監督があのエンディングで表現したかったことについて、こう語っている。
あのエンディングは、少し不思議な話ですが、私たちの映画の終わりというよりも、次の映画の始まりなんです。私たちは私たちで、自分たちで始めた物語をうまく終わらせようと努力しました。一方で、あのエンディングでは更により多くの可能性が開かれました。そして、メイとノアの関係、二人がお互いをどう変えたのか、それは二人が何らかの形で共に未来を作っていく上で、今後非常に重要な要素になるでしょう。
『猿の惑星/キングダム』のラストでは、猿は少数の部族に分岐し、人間は高度な文明と共に新たな道を歩み始めた。それは、猿のコミュニティは“プラネット=惑星”になるべく一つの“キングダム=王国”に収束していく、人間のコミュニティは『猿の惑星:聖戦記』(2017) で示唆されたように理性と文明を失って野生になっていく、というこれまでの予想を大きく覆す展開だった。ウェス・ボール監督は、このエンディングによって更に多くの可能性が開かれたとしている。
また、メイとノアが互いに与えた影響が今後の二人の物語の鍵になることにも触れている。メイは両親に関する過去のせいで猿に対して負の感情を抱いていることが示唆されていたし、ノアは集落で育ったことで人間(エコー)は理性を持たない存在だと考えていた。劇中で二人は共に相手が理性ある存在だということを学び、ノアはラカ(が崇拝するシーザー)の意志を継いで猿と人間の共存の可能性を信じようとした。その証がノアからメイへと手渡されたシーザーの紋章だった。
ノアがシーザーの紋章を手放したことにより、ノアは猿達にとっての新たなシーザーになるのではなく、イーグル族のノアとして生きていくことになる。一方で、あの紋章を人間とシェアしたことで、ノアはメイと共にシーザーの夢を引き継いでいくことになる。猿と人間という種族を超えて、“断絶”と“継承”が同時に演出されている点が巧みだ。
「血のつながり」はある?
なお、同じインタビューでウェス・ボール監督は、「猿の惑星」ファンが気になっている疑問に答えを示している。それは、ノアとシーザーの血縁関係についてだ。実はノアの右胸にはシーザーと同じく傷跡があり、ファンの間ではシーザーから遺伝したものだと考察されていた。しかし、ウェス・ボール監督は「みんなそう言うと思いました」としつつ、ノアの傷跡は後天的に怪我ができたものだとして、二人の血縁関係を完全に否定している。
ウェス・ボール監督は、観客がノアというキャラクターに夢中になるためには血のつながりは不要だと考えたと話している。「『スター・ウォーズ』のような映画のように全てが血で繋がっている必要はない」とも語っており、『猿の惑星/キングダム』における血縁関係の断絶は意図的に仕組まれていたことが窺える。
『猿の惑星/キングダム』は当初、シーザーの息子であるコーネリアスの物語になるとされていた。実際には、一転して血のつながりを持たないイーグル族のノアが主人公に。しかし、そうすることによってシーザーと後の世代の猿達との精神的なつながりはより強調されることになったと言える。この設定もまた、リブート後の「猿の惑星」の物語をシーザー家から解放したという意味で、今後のフランチャイズの可能性を広げる要素にもなった。
フランチャイズの可能性を大きく開くエンディングを用意していた『猿の惑星/キングダム』は、その期待に応えるように大ヒットを記録している。次は一体どんな展開を見せるのだろうか。続編の情報を楽しみに待とう。
映画『猿の惑星/キングダム』は2024年5月10日(金)より全国の劇場で公開。
Source
The Direct
「猿の惑星」は、第1作目からリメイク版までの6作品がセットになったBlu-rayセットが発売中。
リブート三部作=プリクエル・トリロジーのBlu-rayセットも発売中。
『猿の惑星/キングダム』ラストの解説&考察はこちらの記事で。
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