続編はどうなる? 『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』 ネタバレ考察&解説 | VG+ (バゴプラ)

続編はどうなる? 『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』 ネタバレ考察&解説

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20周年記念の新しい『仮面ライダー555』

2003年から2004年に放送され、高い人気を誇った『仮面ライダー555』。その正統続編である『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』が2024年2月2日(金)に期間限定公開が始まった。仮面ライダーファイズ/乾巧を演じる半田健人や仮面ライダーカイザ/草加雅人を演じた村上幸平、園田真理を演じた芳賀優里亜ら主要キャストによって立ち上げられた企画である『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』は『仮面ライダー555』の続編として相応しいものとなっている。

これまで、IFストーリーで本編後の世界が描かれてきた『仮面ライダー555』だが、正統続編として制作された『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』には続編はあるのだろうか。本記事では『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』での描写などから続編に関する考察と解説をしていこう。なお、本記事では『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』の内容に関するネタバレを含みます。
自傷行為及び自殺描写に関する注意
以下の内容は、自傷行為及び自殺描写に関する表現を含みます。

新しく描かれる真理と巧にとっての『仮面ライダー555』

真理の変貌

まず本作の中心にいた真理と巧の今後について考察してみよう。本作では、真理は福田ルミカ演じる仮面ライダーミューズ/胡桃玲菜の嫉妬心により、かつての流星塾同窓会襲撃事件で埋め込まれたオルフェノクの記号(F記号)が活性化させられてしまう。それにより真理はワイルドキャットオルフェノクへと変貌してしまう。

巧は自分を殺そうとする真理を受け入れ、殺して満足するなら殺せと語るが、真理は自分が巧を殺そうとしたことで余計に戸惑い、その場から去ってしまった。そして、真理は自殺を試みる。

投身自殺する真理だったが、ワイルドキャットオルフェノクとなっていた真理がそう簡単に死ねるわけもなく、傷ついた真理は巧によって廃校に運ばれていった。かつて巧は真理にオルフェノクと人類の共存という理想を追うことに疲れたと語り、真理はそれを信じようとしなかった。だが、真理は自分がオルフェノクになったとき、人間で在り続けたかったという感情を抱く。

巧の絶望

真理の投身自殺という絶望こそ、巧にとって最大の絶望であったことが監督である田崎竜太の口から語られている。巧は『仮面ライダー555』第8話にて「俺には夢がない。でも夢を守ることはできる」と語っている。その後に抱くオルフェノクが人間として生き、人類と共存するという夢は泉政行演じるホースオルフェノク/木場勇治の夢である。

更には『仮面ライダー555』最終話で語った「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに皆が幸せになりますように」という夢は溝呂木賢演じる菊池啓太郎や我謝よしか演じるクレインオルフェノク/長田結花、斉藤麻衣演じる仮面ライダーデルタ/木村沙耶の持っていた夢である。そのため、巧自身の夢というものはなく、真理の持つ夢に自分の夢を重ねていたことが考察できる。

その真理が自殺をするという絶望を味わったため、もう巧には縋るものが無く、その末に出た言葉が「助けてくれ」であったことが考察できる。そして真理と巧はワイルドキャットオルフェノクとウルフオルフェノクとして体を重ねるのだった。続編が製作するとすれば、誰かの夢の守護者ではなく、乾巧として夢を抱く姿が描かれることが考察できる。

巧と真理のその後

注目すべきはオルフェノクとなった巧と真理のその後だ。オルフェノクは人類の進化した姿だが、その急激な進化に肉体が適応できず、短命な種族であることが『仮面ライダー555』で解説されている。それに加え、巧は『仮面ライダー555』最終話でスマートブレイン社の人体実験を受けており、それによって寿命がより短くなっている。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』のラストのお好み焼きパーティーの場面では、巧が自分の手を見て生命線が伸びたと語っている。しかし、あのシーンは灰化が進む巧が咄嗟に皆に心配をかけまいとしたシーンとも解釈できる。

そして、唐橋充演じるスネークオルフェノク/海堂直也ともに巧はオルフェノクとしては長寿にあたる人物だが、短命を克服できる唯一の存在であるアークオルフェノクを『仮面ライダー555』最終話で倒してしまっている以上、これ以上の延命は望めない。その上、巧は延命治療が無ければすぐに死んでしまうほど肉体に限界が来ている。巧、海堂、真理、クイナオルフェノク/ケイたちの残りの寿命は短いことが『仮面ライダー555』本編から考察できる。

続編が製作される場合、このオルフェノク故のマイノリティ性がクローズアップされると考察でき、真理たちが庇護を続けてもオルフェノクは自然と絶滅してしまうことが深堀りされるとも考察できる。乾巧を演じた半田健人や草加雅人を演じた村上幸平らはシネマトゥデイのインタビューで、『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』を新たな出発点にしたいという旨の発言をしており、マイノリティの絶滅というテーマが新たな問題提起になる可能性がある。

政府と変貌したスマートブレイン社

解体されたはずのスマートブレイン社の復活

『仮面ライダー555』最終話で、スマートブレイン社は倒産、もしくは解体されたとも取れる描写がなされている。そこではそれまで警察ですら手出しができなかった大企業から物が運び出されていき、空っぽになった社長室が映し出された。そのようなスマートブレイン社がどのようにして復活したのかということに『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』公開前から注目が集まっていたが、その実態は監視社会を築くための政府の傀儡だった。

社長である北崎はドラゴンオルフェノクではなく、政府がオルフェノク殲滅のために生み出したアンドロイドであり、オルフェノクを庇護する真理たちにも草加というアンドロイドを潜入させていた。政府はスマートブレイン社という『仮面ライダー555』の世界で誰もが知る大企業を利用し、オルフェノクを市民たちが監視するシステムを作り上げたのである。

その一つがオルフェノクの通報に報奨金がでる設定があり、仮面ライダーデルタ/モスキートオルフェノク/ヒサオは助けたはずの人間に通報されてしまっている。政府は民間企業と蜜月の関係を結び、『華氏451度』(1953)のような市民同士の相互監視社会を生み出すことに成功した。

これにより、人間の死によって自然発生するオルフェノクを早期発見し、仮面ライダーミューズら武装部隊を派遣することに成功したのである。冒頭で『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(2003)の映像が流れるのは、オルフェノクが勝ったか、人間が勝ったかというだけで最終的にはマジョリティによるマイノリティへの監視社会が形成されたことを暗示していると考察できる。

オルフェノクへの不安と新たな救世主の誕生

このように政府がオルフェノクの殲滅に動き出しているのは『仮面ライダー555』本編後半でも描かれており、小川敦史演じる警視庁の官僚である南雅彦がクラブオルフェノクを実験台にしている。このときはオルフェノク殲滅は警察の一部だけの行動だったが、20年の時を経てオルフェノク殲滅は政府が主体となって行われるものになっている。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』続編では南雅彦が危惧していた誰もがオルフェノクになり得る可能性があることで発生する集団ヒステリーがクローズアップされるのかもしれない。もしくは、それが広まることを防ぐためにオルフェノク殲滅を政府が行なっている可能性が考察できる。

この怪人が弾圧される設定といざ怪人になったときに人間で在り続けたいという感情が浮かぶ展開は『仮面ライダーBLACK SUN』(2022)を想起させる。政府がAIなどで国民を管理し、反対するものを攻撃するのは『シン・仮面ライダー』(2023)の続編構想「仮面の世界」を想い起させる。

『仮面ライダーBLACK SUN』と『シン・仮面ライダー』はどちらも「仮面ライダー生誕50周年記念」のプロジェクトである。それらのことから、仮面ライダーの源流ともいうべきエッセンスが『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』には組み込まれていると考察できる。

主要俳優陣は『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』を『仮面ライダー555』の新しい出発点にしたい旨の発言をシネマトゥデイでしている。『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』の続編では、漫画版『仮面ライダー』(1971)のように新たな仮面ライダーファイズにバトンタッチするのかもしれない。

それを踏まえると旧式のファイズギアとネクストファイズギアという2つのファイズギアが存在していることが、新しい救世主の誕生の理由にもなると考察できる。続編が製作される場合、新しい世代によるオルフェノクとの共存共栄が描かれる可能性も考察できる。オルフェノク狩りという集団ヒステリーなどの問題を解決する対話の道具として、携帯電話型のファイズギアが活躍するかもしれない。

スマートブレイン社の襲撃とその正体

本作で明らかになるのはかつてアークオルフェノクに捕食されたはずの藤田玲演じるドラゴンオルフェノク/北崎望が生きていた理由は、本当の北崎は既に死亡しており、政府がスマートブレイン社を利用して国民を監視するために生み出したアンドロイドということだった。

さらには木場勇治に殺害されたはずが、何故か生きていた草加もアンドロイドであった。その目的は、かつてアークオルフェノクを探し出すために設立された流星塾の卒業生はいずれオルフェノクになると考えた政府がアンドロイドの草加を使い、オルフェノクになった流星塾生を殺害することだった。

スマートブレイン社のその後

社長である北崎が倒され、仮面ライダーミューズのライダーギアも破壊されたことで勝利を収めたように見えた巧たちだったが、スマートブレイン社は巧を冷凍保存していた装置を大量に用意しており、アンドロイドも多数生産していると考察できるシーンがラストで描かれた。そして、スマートブレイン社の新社長にアンドロイドの草加が就任するのだった。

草加は『仮面ライダー555』本編でもカイザギアを手土産に、スマートブレイン社が誇る4人のオルフェノクの精鋭であるラッキークローバーに加入しようとしている。しかし、『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』の草加はアンドロイドとしてスマートブレイン社に組み込まれている。

また、胡桃玲菜は北崎のアンドロイドに関して「政府がスマートブレイン社をコントロールして、オルフェノク殲滅ができるように北崎をモデルにしていたアンドロイドを製造している噂」について言及している。政府は草加など、かつてのオルフェノクとスマートブレイン社、流星塾生の戦いの関係者をアンドロイドとして蘇生させており、この他にも強力なオルフェノクやライダーギア保有者のアンドロイドをストックしていると考察できる。

このことから、続編が製作される場合、強力な能力を持ったオルフェノクや高い戦闘能力を持っていたライダーギア保有者のアンドロイドたちが登場すると考察できる。パラレルな世界観だが、「仮面ライダーアウトサイダーズ」シリーズではスマートブレイン社はクローン技術も有しており、真理のクローンである仮面ライダーデルタ/スマートクイーンを生み出している。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』を出発点とする『仮面ライダー555』の続編では、偶然生まれてしまったマイノリティのオルフェノクと人類の対立構造だけではなく、政府によって生み出されたアンドロイドたちによるマイノリティの弾圧も描かれると考察できる。そのはじまりがスマートブレイン社による監視社会だとも考察できる。近年の東映は東映オフィシャルファンクラブ限定作品なども製作しているため、本格的に『仮面ライダー555』の続編に期待していきたい。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』は2024年2月2日(金)より期間限定上映。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』公式サイト

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』のラスト解説&考察記事はこちらから。

『シン・仮面ライダー』のネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

ラストの本郷猛と緑川イチローの対決の解説と二人の対比はこちらの記事で。

庵野秀明監督が明かした『シン・仮面ライダー』続編構想の考察はこちらから。

【!ネタバレ注意!】『仮面ライダーBLACK SUN』第1話・第2話のネタバレ解説はこちらから。

【!ネタバレ注意!】『仮面ライダーBLACK SUN』第9話・最終話のネタバレ解説はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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