ラスト&ポストクレジット解説 『ARGYLLE/アーガイル』最後の意味は? マシュー・ヴォーンのアクション全開 ネタバレ解説&考察 | VG+ (バゴプラ)

ラスト&ポストクレジット解説 『ARGYLLE/アーガイル』最後の意味は? マシュー・ヴォーンのアクション全開 ネタバレ解説&考察

(C)Universal Pictures

「キングスマン」シリーズ監督による新しいスパイ映画

「キック・アス」シリーズや「キングスマン」シリーズの監督であるマシュー・ヴォーンが新たなアクション映画を生み出した。それはこれまでのスパイ映画をひっくり返すような新しいもので、それでいてこれまでのスパイ映画への愛にあふれた作品となっている。そのような作品である『ARGYLLE/アーガイル』が2024年3月1日より全国劇場公開が開始された。

古典的なスパイ小説を書いてきた作家がある日突然、自分の作品が現実とリンクしているという展開は映画を入れ子構造にしており、観客を何度も驚かせてくれる。そのような『ARGYLLE/アーガイル』のラストシーンとポストクレジットについて考察と解説をしていこう。なお、本記事は『ARGYLLE/アーガイル』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ARGYLLE/アーガイル』の内容に関するネタバレを含みます。

小説家が予言者に? 『ARGYLLE/アーガイル』の新しいスパイ映画

架空のスパイが現実に

自分の書いてきた小説『アーガイル』が現実のスパイの抗争と合致しており、予言者とまで呼ばれてしまったエリー・コーンウェル。エリーはエイダン・ワイルドに闇に堕ちたスパイ組織のディヴィジョンから救い出され、ディヴィジョンを潰す鍵となるマスターキーを持つハッカーのバクーニンの住むロンドンへ向かう。しかし、バクーニンは見つからなかった。

このハッカーの名前のモデルになったのはロシアの思想家のミハイル・バクーニンだ。バクーニンは無政府主義者であり、無神論者としても知られる。アナーキズムの歴史を語る上で外すことのできない人物であり、様々な政治活動に参加した。このことからも、ハッカーのバクーニンが筋金入りの無政府主義者だと考察できる。

エイダンに無駄だと言われても自分のアイデアをもとにバクーニンの部屋でマスターキーを探そうとするエリーは、バクーニンがアパートの自室に残したログノートを発見する。そのような幸運もつかの間、ディヴィジョンのリッター長官もエリーの居場所を追っており、エイダンとディヴィジョンの工作員の間で戦闘が起きる。そのとき、エイダンと自分の生み出した架空の人物であるはずのアーガイルが重なって見えることにエリーは混乱してしまう。

バクーニンの逃亡ルート

エリーが混乱する中、エイダンは襲撃してきた工作員をすべて倒す。それでもディヴィジョンの工作員はどんどん現れる。エリーはアパートの屋上に逃げるが、ドアがロックできるようになっているなど、エイダンは逃亡するのに都合が良すぎることに気づく。それをエリーは聞き、これはすべてバクーニンの用意した逃亡ルートだと考察する。

アパートの下の水面に浮かぶボートも含めて、すべてバクーニンの逃亡ルートだと考えたエイダンはアパートから飛び降りることを決意する。そしてエイダンは冷酷にも猫のアルフィーでクッションがあることを確認すると、エリーと共に飛び降りるのだった。

エイダンの裏切り

ロンドンの安宿に身を隠すエリーとエイダン。エリーは強いストレスからアーガイルの幻覚を見るようになっていた。エリーは不安症とパニック障害で苦しむ。苦しむ最中、信頼していたエイダンの口から「エリーと一緒にいると気が変になりそうだ。頭に一発撃ち込みたい」と話しているのを聞いてしまう。エイダンに裏切られたと考えたエリーは母親のルースを頼り、ロンドンのサヴォイホテルに逃げる。

そこでエリーは父親に会うが、父親はエリーを狙っているリッター長官だった。エリーはひと時の家族団らんの中、今の状況を伝えるが、そこにエイダンが乗り込んでくる。父親を人質に取るが、その瞬間、ルースはエリーも人質に取る。ルースを射殺するエイダン。そして2人は本当の両親ではないとエリーに告げるのだった。

信じる者すべてに裏切られた上、ホテルからの脱出時に猫のアルフィーを置き去りにしてしまったエリーは精神的に参ってしまう。車の中でエリーにエイダンは休むように話す。そしてエリーは眠りにつくのだった。映画『ARGYLLE/アーガイル』では瞬きや眠りなどでの場面転換が多いのが特徴だ。

エージェント・レイチェル・カイル

エイダンの運転で寝ている間に南フランスの農場に辿り着いたエリー。そこには隠遁生活をしている元CIA副長官のアルフレッド・“アルフィー”・ソロモンがいた。そこでエリーに対してアルフレッドは秘密を打ち明ける。それはエリーの書いた小説『アーガイル』の主人公であるアーガイルとはエリーのことであり、エリーはかつて凄腕のスパイのレイチェル・カイルだった。

エリーの書いた小説は予言などではなく、すべてはレイチェル時代の記憶によるものだった。レイチェルはバクーニンからディヴィジョンを潰す鍵となるマスターキーを受け取りに行く際に事件に巻き込まれて昏睡状態に陥り、記憶を失っていた。そこにディヴィジョンの心理学部門のトップであるルースとリッター長官が付け入り、自分たちを両親だと思い込ませていたのだった。

ここでエイダンの口からMKウルトラ計画という言葉が出てきているが、MKウルトラ計画は実際にCIAが行なっていた秘密計画である。その内容は自白剤や超音波などでソ連のスパイの記憶を消し、改竄するなどを目的としたもので、ディヴィジョンには元CIAのメンバーもいたことから、その計画を流用したものだと考察できる。

エリーは不安症でパニック障害の元ウェイトレスであり、アイススケート中の事故で昏睡状態になったという嘘の記憶を植え付けられていた。そしてディヴィジョンの真実にどこまで迫っているのか探るため、真実と虚偽を混ぜ合わせた日記を渡し、小説を書かせることで情報を引き出そうとしていたのだ。

その漏れ出した記憶の断片が小説やペットの猫の名前という形であふれ出し、自分の上官であったアルフレッドの愛称を猫の名前にしていた。小説の中のアーガイルの相棒のワイアットはエイダンのことであり、胸を撃たれて死亡したと思われるキーラは実際の戦友だった。エリーは読者からのメールでキーラを今後の展開で甦らせようとしていた。

イスラームの世界の“番人”

アルフレッドの調査でバクーニンの残したマスターキーが保管されたところがアラビア半島だということを突き止める。そこには番人と呼ばれる人間がおり、番人はイスラームの厳しい戒律に基づき、情報を守っていたのだ。その番人に会いに行こうとするが、番人とレイチェルは親しかったことを知る。

エリーは番人に自分がもうレイチェルではないことが悟られてしまうと不安になる。しかし、マスターキーを手に入れるためには番人に会うしかない。世界平和の命運がかかったミッションに、エリーはレイチェルに“変装”する決意をする。不安になりながらもアラビア半島へと飛ぶ。

番人から情報を手に入れる前に、エリーはレイチェルとエイダンが恋人同士だったことを知る。2人は急接近するが、厳格なイスラームの世界では公衆の面前でのキスなどの愛情表現はご法度だ。そのとき、番人はエリーとのみ面会をすると部下を介して伝えてきた。番人は女性であり、厳格なムスリムの女性は女性相手にしか顔を含めた肌を見せない。

そのようなイスラームの戒律を用いて番人はデータを守っていたのだ。番人はエリーを見てレイチェルではないと確信する。追い詰められるエリーだったが、幻覚のアーガイルに励まされ、レイチェルとしてマスターキーを獲得する。

マスターキーのデータを見て驚愕するエリー。エリーはマスターキーのデータのすべてをエイダンに打ち明けようとするが、そこに死んだと思われていたルースが現われる。ルースは防弾ベストを着て助かっており、更にリッター長官は老眼鏡に見せかけたカメラでログノートの暗号を解読していたのだ。

ディヴィジョンの最高峰のスパイ

そこでレイチェルのすべてが明らかになる。ディヴィジョンの誇る最高峰の工作員こそレイチェルであり、レイチェルはリッター長官の部下だったのだ。バクーニンを殺したのもレイチェルであり、バクーニンの部屋にあった修繕の跡はバクーニンが遺した自爆プロトコルによるものだった。レイチェルはその爆発に巻き込まれて記憶を失った。

エイダンはそれに驚きを隠せない。エイダンは否定しようとするが、その場で倒れ込んでしまう。エイダンとエリーが飲まされたお茶には睡眠薬が仕込まれており、エリーが目を覚ますとリッター長官のオフィスにいた。

リッター長官は暖炉でマスターキーを燃やしていた。そして、エリーではなくレイチェルに語りかけ、アルフレッドの居場所を探すように命令する。そして捕まっているエイダンは拷問の最中だと語り、エイダンの命と引き換えだと命令を続けた。

ディヴィジョンの基地にはエリーの実家がセットとして用意されており、エリーとルースのテレビ電話はここから行われていた。エイダンはそこで殴られるなど拷問されている。リッター長官はレイチェルにエイダンを殺すように命令するが、エイダンはレイチェルのエリーの部分に語りかける。

エイダンは自分がリッター長官の裏切りを知った際に、レイチェルが自分を殺さなかったのは、レイチェルもディヴィジョンを抜けたがっていたからではないかと語り続ける。そしてエリーとはレイチェルの善の面が出てきたものだと考察する。そのようにレイチェルを信じ続けるエイダンの胸を冷酷にもレイチェルは撃ち抜いた。

隙間回廊

レイチェルはリッター長官の命令でアルフレッドの居場所を探り始める。だが、レイチェルはぎりぎりのところでアルフレッドの調査を止める。リッター長官はレイチェルの人格だと思い込んでいたが、実際はエリーの人格だったのだ。その頃、胸を撃たれたはずのエイダンは這う這うの体で敵をなぎ倒し、アドレナリンを注射して立ち上がっていた。

エリーは猫のアルフィーを連れてその場を脱出し、マスターキーに保管されていたものと同じディヴィジョンのメンバーのデータをアルフレッドに送ろうとする。その過程で武器庫に立ち寄るが、そこでエリーはエイダンと遭遇する。エリーはエイダンの胸を撃ち抜いたが、実際は心臓から5㎝外したところにある血管の隙間の「隙間回廊」に向けて銃弾を放ったと言う。これは小説内で死亡したキーラを復活させるための読者から送られてきたアイデアだったとのことだ。

「キック・アス」シリーズと「キングスマン」シリーズから続くアクション

エイダンとエリーは和解し、2人は煙幕を使ってディヴィジョンの工作員を倒す作戦を立てる。それは色とりどりの煙を使う作戦で、殺人バレエそのものだった。ここで煙や銃弾の火花がハート型になり、戦いの中でダンスを踊るなど、「キングスマン」シリーズでも見せたマシュー・ヴォーン節が全開の演出となっている。

石油が漏れ出した死のオイルスケートのシーンもマシュー・ヴォーン節全開だ。これらのアクションシーンを生んだのは「キングスマン」シリーズなど、マシュー・ヴォーン作品でスタント監修を行なったブラッドリー・ジェームズ・アランだ。ブラッドリー・ジェームズ・アランは制作中に亡くなっており、エンドクレジットでも映画『ARGYLLE/アーガイル』を彼に捧げるという一文が添えられている。

死のオイルスケートのシーンでは、リッター長官とルースがレイチェルをエリーへと人格を作り変えるための偽の日記が役に立っている。偽の日記の中には真実も入っており、その玉石混交の日記がエリーの人格を創り上げた。その日記の中の真実がエリーはスケートが得意ということだ。レイチェルも実際にスケートが得意であり、それが火気厳禁の原油の上での死のオイルスケートに繋がった。

アルフィーの反撃

サーバー室へと向かったエリーとエイダンだったが最後の最後でリッター長官の角膜スキャンが必要になってしまう。更に背後をそのリッター長官に取られてしまう。危機に陥ったエリーとエイダンだったが、その窮地を救ったのは元CIA副長官の方ではなく、猫の方のアルフィーだった。アルフィーがリッター長官の顔をズタズタに引き裂き、その隙をついてエイダンが撃った。

危機から脱出したと思われたが、アルフィーが引っ掻きすぎたせいでリッター長官の死体は角膜もズタズタに切り裂かれてしまっていた。そのため、角膜スキャンができない。エリーとエイダンは作戦を変え、別ルートでのデータ送信を試みる。

ディヴィジョンの基地の正体

データ送信のために建物の屋上に上がろうとするエリーとエイダンだったが、そこで目にしたのは船の甲板だった。眠らされて運ばれたため気が付かなかったが、ディヴィジョンの基地は巨大なオイルタンカーの中にあったのだ。エリーは船のアンテナを利用してアルフレッドにデータを送ろうとする。

そのとき、ルースが現われてオルゴールを鳴らす。オルゴールとルースの言葉が引き金となり、エリーは洗脳された状態になってしまう。このシーンは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)のウィンターソルジャー/バッキー・バーンズを想起させる。エリーはアーガイルのモデルになっただけあって強い上、エイダンはエリー相手に本気を出すことが出来ない。そのせいでデータが100%送信できないでいた。

その窮地を船員の1人が救う。その船員こそキーラであり、キーラが読者として隙間回廊のアイデアをエリーにメールで送っていたのだ。ルースは倒れ、オルゴールが砕け散り、エリーはエイダンの頭を踏み潰す寸前で止まる。そして、エイダンを起こすと、残りのデータを送信するのだった。

小説『アーガイル』の後日談

エリーはこのことを小説にまとめ、『アーガイル』の最終巻として発表した。ファンからキャラクターたちのその後についてエリーは問われる。エリー曰く、オイルタンカーを爆破した後、アルフレッドはデータを使ってCIAからディヴィジョンのメンバーを一掃し、キーラは第二のスティーブ・ジョブズとなるべくIT業界へと進出した。

そしてワイアットはその後もアーガイルと良き相棒として生活したと語った。ワイアットはエイダンのことであり、日本語字幕では相棒となっているが原語版ではパートナーとなっており、仕事上のパートナーとも恋人とも取れる上手い表現となっている。

最後に1人のファンが立ち上がり質問するが、その姿はロン毛のヘンリー・カヴィルであり、「僕について質問ある?」とエリーに尋ね返すことでアーガイルが実在していたかもしれないことを匂わせて終わった。

ポストクレジットの意味とは?

「キングスマン」シリーズと繋がる?

ポストクレジットでは「ザ・キングスマン」というパブが映される。そこで1人の青年がウォッカ、キュラソー、クランベリージュース抜きのコスモポリタンを注文する。そしてライムのみのコスモポリタンとして木箱が差し出され、その中には拳銃とサイレンサーが入っていた。

その青年はバーテンダーに名前を尋ねられる。青年はオーブリー・アーガイルと返すのだった。これにより、レイチェル・カイルをモデルにしたアーガイルだけではなく、実際にアーガイルが存在し、なおかつ「キングスマン」シリーズとシェアードユニバースであることが明らかになった。

サミュエル・L・ジャクソンはどうなる?

このポストクレジットにより、『ARGYLLE/アーガイル』が「キングスマン」シリーズとシェアードユニバースであり、エイダンが所属する組織がキングスマンである可能性が高まった。そうなると気になるのがアルフレッドの存在だ。アルフレッドを演じたサミュエル・L・ジャクソンは『キングスマン』(2014)でヴィランのリッチモンド・ヴァレンタインを演じている。これらの関係性も明らかになるのだろうか。

『ARGYLLE/アーガイル』は続編制作が決定している。そのため、そのような展開も今後明らかになっていくのかもしれない。映画『ARGYLLE/アーガイル』のラストでは、映画『ARGYLLE/アーガイル』の世界でエリーが書いた小説『アーガイル』の第1巻が映画化されることが発表されて終わる。現実世界では『ARGYLLE/アーガイル』はどのように展開していくのだろうか。今後の情報解禁に期待していきたい。

『ARGYLLE/アーガイル』は2024年3月1日より全国劇場公開。

『ARGYLLE/アーガイル』公式サイト

Source
Screen Rant

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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