アーガイルは実在する? それとも架空の人物?『ARGYLLE/アーガイル』 ネタバレ考察&解説 | VG+ (バゴプラ)

アーガイルは実在する? それとも架空の人物?『ARGYLLE/アーガイル』 ネタバレ考察&解説

(C)Universal Pictures

『ARGYLLE/アーガイル』に登場するスパイはどこまで実在する?

目まぐるしい場面転換を通してさまざまなスパイ像を描くマシュー・ヴォーン監督最新作『ARGYLLE/アーガイル』が2024年3月1日に全国劇場公開された。「キングスマン」シリーズでは、マシュー・ヴォーン監督は紳士的なスパイを描いたが、『ARGYLLE/アーガイル』では正反対のスパイ像を描いて見せた。

髭を蓄えてむさくるしい恰好のエイダン・ワイルドというスパイに、大人気スパイ小説を書いているのにも関わらず、飛行機にも乗れない心配性のエリー・コーンウェルの2人組は「マナーが紳士を作る」という「キングスマン」シリーズとは正反対の姿だ。実在するスパイとは社会に溶け込むため、スーツ姿よりもこのような格好の方が活動しやすいのかもしれない。

『ARGYLLE/アーガイル』では実在するスパイと、エリーが描いた架空のスパイが交錯する展開となっている。その最たる例が、エリーが小説の中で書いたアーガイルというスパイだ。本記事では『ARGYLLE/アーガイル』に登場するアーガイルが存在するかどうかについて考察と解説をしていこう。なお、本記事には『ARGYLLE/アーガイル』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ARGYLLE/アーガイル』の内容に関するネタバレを含みます。

『ARGYLLE/アーガイル』におけるアーガイルとは何者か

エリーの考えるスパイ像?

『ARGYLLE/アーガイル』ではエリーの正体は、無政府主義者のハッカーのバクーニンの自爆によって、記憶を失った最高峰のスパイのレイチェル・カイルだとされている。レイチェルは記憶を失った後、ディヴィジョンという組織の心理学部門のトップであるルースとリッター長官に偽の記憶を植え付けられた。その結果、ルースとリッター長官を両親だと思い込み、2人に促されるまま、小説を書いていた。

小説の中の登場人物や地名、事件などはすべてエリーがレイチェルだった頃に経験した出来事がもとになっている。そして、登場人物のイメージはレイチェルが出会った人物のイメージがモデルになっていることがエイダンの口から語られた。

エリーの書いた小説に登場するワイアットはエイダンがモデルになっているが、エイダンを演じるサム・ロックウェルと異なり、小説に登場するワイアットはジョン・シナが演じる筋骨隆々の人物となっている。エイダンもそのことについて言及しており、エリーがエイダンに持っていた体格が良いというイメージが大きくなり、筋骨隆々の姿で小説に登場させたと考察できる。そのため、アーガイルもレイチェルの記憶にエリーの理想像が組み合わさって誕生した登場人物だと考察できる。

オーブリー・アーガイルの存在

しかし、観客とエリーを驚かせたのは最後に登場するオーブリー・アーガイルの存在だ。エリーの小説のイメージ通りのヘンリー・カヴィルの姿をしており、違いと言えば角刈りかロン毛かどうかぐらいだった。そのため、レイチェルの記憶の産物だと思われていたアーガイルが実在していたという驚きは、エリーも観客も共通して受けた。

ここで注目したいのが実際のスパイであるエイダン、キーラ、アルフレッド・ソロモンの顔が映されないという点だ。エリーが驚いた顔は映されるが、エリーがレイチェルだった頃の同業者たちがオーブリー・アーガイルと出会ったときに、どのような反応を示したのかは明らかにされていない。

現在分かっている情報として、マシュー・ヴォーン監督はオーブリー・アーガイルが凄腕スパイになるまでの過程を描いた『ARGYLLE/アーガイル』のスピンオフTVドラマシリーズを計画していることを米Screen Rantが報じている。そのことからオーブリー・アーガイルが、これまでエリーがストレスから見ていた幻覚ではないことは判明されている。

理想のスパイ

オーブリー・アーガイルのストーリーがスピンオフTVドラマシリーズで描かれるということは、『ARGYLLE/アーガイル』でディヴィジョンと戦ったスパイたちの仲間の1人がオーブリー・アーガイルだった可能性が考察できる。前述したようにエリーはレイチェルの頃の記憶をもとに小説を書いている。そのため、エリーが考える理想のスパイのイメージにレイチェルとオーブリー・アーガイルが混ざった可能性とも考察できる。

エリーはレイチェルの頃の記憶をもとに小説を書いているが、その記憶は鮮明ではない。実際、エイダンを筋骨隆々のワイアットとしてイメージし、自分がモデルであるはずのアーガイルを角刈りの筋骨隆々の男性としてイメージしている。

このようにエリーの記憶はところどころ曖昧で、キーラのような正確なイメージの人物もいれば、一部の特徴が特化したイメージになっている人物もいる。エリーがレイチェルの頃の記憶を思い出したときに、オーブリー・アーガイルのイメージが混ざってしまった可能性が考察できるのだ。

アーガイルとレイチェルの冒険は描かれるか

エリーの記憶をもとに書いた小説がテーマの『ARGYLLE/アーガイル』だったが、そのスピンオフの前日譚では、オーブリー・アーガイルとレイチェル・カイルの出会いと共にスパイ活動をしたストーリーが描かれることが考察できる。オーブリー・アーガイルとレイチェル・カイルが共にスパイ活動をしたことが、エリーの小説のアーガイル像のモデルになったと考察できるからだ。

レイチェルとして活動していた頃に、オーブリー・アーガイルのスパイ活動を目撃したことが記憶に影響を与えたと考えられる。その頃のオーブリー・アーガイルの活躍は凄まじかったため、記憶を操られてエリーという人格になってもレイチェルが忘れることのできないスパイになったと考察できる。

そうなると重要になってくるのがオーブリー・アーガイルの前日譚となる『ARGYLLE/アーガイル』のスピンオフが制作されるかどうかだ。『ARGYLLE/アーガイル』は三部作の映画になることが構想されており、オーブリー・アーガイルの前日譚はそことは異なるTVドラマシリーズになるとのことだ。

しかし、それを阻むのは興行成績と評価だ。米映画評論サイトRotten Tomatoesでは、2024年3月1日時点で『ARGYLLE/アーガイル』は批評家の評価が33%と低評価だ。観客からの評価も72%と高いとも言い難い。興行成績ではおよそ3億ドルを超えないと成功したと見なされないと米Screen Rantは報じている。

しかし、近年では批評家の評価が悪くても観客から高評価ならば続編が制作されるケースが存在している。また、興行収入が悪くても既に続編やスピンオフ制作に取り組んでいる可能性も考察できる。そのため、オーブリー・アーガイルの活躍を描いた『ARGYLLE/アーガイル』のスピンオフ前日譚にマシュー・ヴォーン監督が着手している可能性がある。

オーブリー・アーガイルがエリーの幻覚ではなく、実在する人物になるには『ARGYLLE/アーガイル』のスピンオフ前日譚が制作されるかどうかにかかっている。すべてがエリーの幻覚で終わらないように、『ARGYLLE/アーガイル』の今後の展開に注目していきたい。

『ARGYLLE/アーガイル』は2024年3月1日(金)より全国劇場公開。

『ARGYLLE/アーガイル』公式サイト

Source
Screen Rant/Screen Rant/Rotten Tomatoes

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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