ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』55周年コンセプトムービー 感想&考察 描かれるマルチバースの衝突 ネタバレ解説 | VG+ (バゴプラ)

ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』55周年コンセプトムービー 感想&考察 描かれるマルチバースの衝突 ネタバレ解説

© TSUBURAYA PRODUCTIONS Co., Ltd.

2023年11月25日(土)完全版公開

1967年から1968年にかけて放送され、55年経った2023年になってもなお高い人気を誇り続けるTBS「ウルトラシリーズ」(空想特撮シリーズ)の第4弾の特撮ヒーロー『ウルトラセブン』。その55周年を記念した6分36秒のコンセプトムービー 「ウルトラセブン IF Story 『55年前の未来』」の完全版が2023年11月25日(土)に配信された。「ウルトラセブン IF Story 『55年前の未来』」はコンセプトムービーと共に前日譚やサイドストーリーを描くビジュアルボイスドラマの配信も予定されている。

 

本記事では「ウルトラセブン IF Story 『55年前の未来』」のコンセプトムービーとビジュアルボイスドラマ第1話と第2話について解説と考察をしていこう。なお、本記事には「ウルトラセブン IF Story 『55年前の未来』」のコンセプトムービーとビジュアルボイスドラマ第1話と第2話のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、コンセプトムービーとビジュアルボイスドラマ「ウルトラセブン IF Story 『55年前の未来』」の内容に関するネタバレを含みます。

バーチャルヒューマンと音声生成AIでよみがえる55年前のモロボシ・ダンと友里アンヌ

歴史改変によって生じたインカ―ジョン

「ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』」は第6話「ダーク・ゾーン」に登場したペガッサ星人がペガッサシティ(ペガッサ市)と地球の衝突を回避すべく、歴史改変を行ったことで生じたパラレルワールドの誕生とそれによるインカージョン(パラレルワールド同士の衝突)を描いた物語だ。55年前からタイムスリップしてきたモロボシ・ダンと友里アンヌはCGIのバーチャルヒューマン、放映当時の音声を抽出した音声生成AI、ボディダブル、声優の4つの要素で映像化されている。

「ウルトラマン」シリーズでは『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(2007)をはじめとして、MCUやDCEUなどよりも先に多次元宇宙(マルチバース)の映像化がなされており、様々なパラレルワールドが存在している。

『ウルトラQ』(1966)から『ウルトラマンメビウス』(2006)までのM78星雲のウルトラマンが活躍した「M78ワールド」、『ウルトラマンティガ』(1996-1997)と『ウルトラマンダイナ』(1997-1998)で描かれた人類が宇宙進出を果たした「ネオフロンティアスペース」、『ウルトラマンコスモス』(2001-2002)で描かれた怪獣と人類の共存を目指す「コスモスペース」などが存在している。

そしてM78ワールドでは大規模な多次元宇宙のインカージョン「ギャラクシークライシス」が生じ、あらゆるマルチバースの怪獣がM78ワールドに流入してくるという事件も発生した。このようなマルチバースを多く描いてきた「ウルトラマン」シリーズだが、『ウルトラセブン』はその人気の高さから多くのマルチバースが存在している。「ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』」はそのマルチバースの中でもインカージョンに焦点を置いて描かれた作品だ。

緩やかに終末を迎える地球

木村都貴演じる友里アンヌの部屋にダークゾーンをつくったペガッサ星人工作員は、ウルトラセブンをペガッサシティ(ペガッサ市)滅亡の一因と考えて彼をダークゾーンへと誘い込み、歴史から抹消した。それによってペガッサ星人工作員は地球破壊爆弾を応用して地球の軌道を変更することに成功。地球は一部破壊されたものの、復興の道のりは存在しており、すべてはペガッサ星人の思惑通りかと思われた。

しかし、M78ワールドやそれに類するマルチバースにおける1968年は宇宙規模で星間戦争が最も激しかった時代だ。そのため、守護者であったウルトラセブンがいなくなった地球は度重なる異星人からの侵略を受け、地球の防衛を担うウルトラ警備隊は疲弊していき壊滅。その存在を知る者はいなくなり、地球は終わらない星間戦争の中にあった。

本来、敵意がなく、ただ地球の軌道を変えたかっただけだったペガッサ星人工作員は戦争で崩れ去る地球を見て、避難勧告に応じずに強引な方法を取ったことを後悔。そして地球を美しい星と呼ぶようになり、モロボシ・ダン/ウルトラセブンだけではなく自分に友好的だった友里アンヌ隊員までもこの歴史改変に巻き込んでしまったことも悔やみ、モロボシ・ダンに歴史改変によって生じた別次元(ディメンション)の地球に不時着してしまった友里アンヌを探して出会えと告げるのだった。

ハリウッドにも引けを取らない映像美

ウルトラ警備隊の航空機「ウルトラホーク1号」が空を飛び、ダークゾーンを抜け、墜落して炎上するまでの様子はハリウッドの最新映画さながらの仕上がりであり、モロボシ・ダンが燃えるウルトラホーク1号の前に立つ姿はボディダブルとバーチャルヒューマンとは思えないほど美しい。そのウルトラホーク1号を追って飛来するウルトラホーク3号の機体にダークゾーンの七色の輝きが反射する場面には見惚れてしまうほどだ。

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また、ボディダブルを演じたモロボシ・ダン役の神田穣と友里アンヌ役の戸田真紀子は『ウルトラセブン』放映当時のモロボシ・ダンと友里アンヌの立ち振る舞いを完全に再現しており、走り方からウルトラガンの構え方まで『ウルトラセブン』の劇中から飛び出してきた錯覚してしまう。そのような高い再限度とバーチャルヒューマンなどCGIによる演出が森次晃嗣演じるモロボシ・ダンのモデルとなった薩摩次郎の現在の姿との出会いを際立たせる。

また、歴史改変によって生じたインカージョンや次元の歪みはMCU作品『ドクター・ストレンジ』(2017)のミラー次元を想起させ、空に別の次元(ディメンション)の地球が映る場面などでは今後の「ウルトラマン」シリーズの映像の進化を期待させる。そのような映像美を通して描かれる『ウルトラセブン』の名場面と同じカットや、ウルトラセブンがかつて救えなかった異星人たちがウルトラセブンの再来を希望している姿に、視聴者もウルトラセブンの再来を願ってしまう。

ラストはウルトラセブンの姿を映さずとも、“ウルトラセブンのいなくなった地球”の人々の反応からウルトラセブンが再び地球に降り立ったことを予見させて終るという希望と期待に満ちたものとなった。「ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』」は2023年12月2日(土)にビジュアルボイスドラマと55周年のフィナーレを飾るビジュアルボイスドラマ第3話が配信されるため、そちらにも注目していきたい。

55周年を記念した6分36秒のコンセプトムービー「ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』」は2023年11月25日(土)にTSUBURAYA IMAGINATIONにて公開予定。ビジュアルボイスドラマは2023年11月18日(土)に第1話、2023年11月25日(土)に第2話、2023年12月2日(土)に第3話が同じくTSUBURAYA IMAGINATIONにて公開予定。

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「ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』」予告公開に関する記事はこちらから。

2024年にNetflixより配信が予定されている『Ultraman Rising』の予告編第1弾に関する記事はこちらから。

2022年公開『シン・ウルトラマン』のキャスト紹介記事はこちらから。

2022年公開『シン・ウルトラマン』のネタバレ感想記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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