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日本人キャラクターをおさらい!
いよいよシーズン3に突入
2015年に配信が始まったAmazonビデオの『高い城の男』。フィリップ・K・ディック原作の名作SF小説のドラマ化とあって、あれよあれよという間にシーズン3の配信が決定した。シーズン3からは、『ロー&オーダー』(1990-2010)、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』(2002-2008)等を手がけてきたエリック・オーバーマイヤーが、新たにショーランナーに就任している。新シーズンは2018年10月5日に配信開始となり、既に新たなエピソードを楽しんでいる日本のファンも多いだろう。
そこで今回は、新シーズンに備えてこれまでの『高い城の男』をふり返ってみたい。気がつけば公開からしばらく経ってしまったシーズン1から、登場したキャラクターとキャストを復習しよう。
『高い城の男』を彩った日本人キャラクターたち
シーズン1の特徴は、日本人の登場人物が多く登場したことだ。シーズン1では、日本領となったサンフランシスコが主な舞台となっている為、レギュラーとして登場した人物だけでなくシーズン1のみの登場人物にも日系人が多く含まれている。今回は、シーズン1に登場した日系の登場人物の中から、あの人物を演じたベテラン俳優に迫る。
シーズン1から登場したあの人物
日本合衆国の良心
『高い城の男』シーズン1から日本太平洋合衆国の人間として登場しているのは、“田上貿易担当大臣”こと田上信輔。原作にも登場した易占 (えきせん) をたしなむ、優しげな人物だ。同じ日本太平洋合衆国の木戸大尉とは正反対の柔和な性格で、アメリカ人の主人公・ジュリアナに対しても優しく接する。派手な役柄ではないが、シーズン1から登場し続けている数少ない人物の一人だ。
田上大臣を演じたのはベテラン俳優
そんな田上大臣を演じたのは、ベテラン俳優のケイリー=ヒロユキ・タガワ。日本生まれアメリカ育ちで、過去には『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001)にゴリラの将軍クラル役で出演。『TEKKEN -鉄拳-』(2009)では三島平八を、『47RONIN』(2013)では徳川綱吉を演じるなど、様々なタイプの役柄を演じてきた。一方で、これまでのキャリアで演じてきたキャラクターは悪役ばかり。『高い城の男』での印象とは全く異なる。2016年のCherry Davesからのインタビューでは、ケイリー=ヒロユキ・タガワはこう話している。
これまでは悪役を演じることがとても多かった。この作品の登場人物について聞いた時、憲兵隊の役になるだろうなと思ってたよ。素晴らしい奴ではないけれど、良い奴っていうくらいのね。蓋を開けてみれば穏和な人物だった。これまで演じてきた役を考えると珍しい役柄だったんだけど、より私の性格に近いキャラクターだったんだ。
by ケイリー=ヒロユキ・タガワ
『高い城の男』で、これまで演じてきた役柄とは正反対の人物を演じることになったタガワ。だが、本来の彼の性格は悪役の気質ではなく、田上大臣は演じやすいキャラクターだったようだ。
悲壮な覚悟で挑んだハリウッド
「アジア人で善人の役って見たことある?」
そんなケイリー=ヒロユキ・タガワだが、これまでのキャリアで悪役を演じ続けてきたことには、ある理由があるという。タガワは、2015年11月に公開されたAVTV CLUBからのインタビューで、以下のように話している。
人に聞かれるんだ。「なぜあなたのような人が悪役ばかり演じているの?」って。私はこう答えるんだよ。「アジア人で善人の役って見たことある?」。とりわけ、私がハリウッドで演技を始めた86年はそういう時代だった。まずアジア人の役がなかったんだよ。まだ“悪役の時代”の始まりだった。
(中略)
私が俳優業を始めたのは、そんな時代だよ。でもね、これだけはハッキリしていた。「分厚いメガネをかけてカメラを下げたビジネスマン役はごめんだ。だからアジア人の悪役をくれるんなら、見たこともない悪役を演じてやる。私がその作品に出ていたことが忘れられないくらいに。悪役は必ず死ぬが、死ぬ前に私の存在を忘れられなくなるくらい怖がらせてやる」ってね。
by ケイリー=ヒロユキ・タガワ
悲壮な覚悟である。タガワは、ハリウッドでアジア人俳優の地位が確立されていなかった時代に俳優業を始め、悪役として演技の世界でのし上がっていったのだ。そして、2015年にようやく“良いアジア人”の役を掴んだことになる。このエピソードは、映画『アントマン&ワスプ』(2018)でFBIのジミー・ウーを演じた韓国系俳優、ランドール・パークの話にも通じるものがある。映画やドラマ、コミックでアジア人が好意的に描かれることは、少し前まで特別なことだったのだ。
2015年に入ってようやく映像化された『高い城の男』。原作の発表からシーズン1の公開まで、50年以上が経過している。実写化に多くのアジア系俳優を必要とするこの作品は、業界が成熟する時を待っていたのかもしれない。
Source
Cherry Davis YouTube / AVTV CLUB