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『アントマン&ワスプ』を彩った個性派俳優
個性豊かな出演者
8月31日、『アントマン&ワスプ』が日本全国の映画館で公開された。コミカルで爽快感のある演出とは裏腹に、量子を軸としたハードSFの色合いを感じさせるバランスの取れた良作に仕上がっている。
個性的な演技が光るランドール・パーク
『アントマン&ワスプ』の独特な作風を彩った最大の要因は、紛れもなく個性豊かな出演者陣だろう。アントマンことスコット・ラングを演じたポール・ラッド、ワスプことホープ・ヴァン・ダインを演じたエヴァンジェリン・リリー、ハンク・ピムを演じたマイケル・ダグラスら、豪華俳優達がキャストに名を連ねた。そんな中でも、個性的な演技を光らせていたのは、スコット・ラングの監視を担当していたFBI捜査官ジミー・ウーを演じたランドール・パークだ。ヒーローでもヴィランでもない、スコットの監視役だがどこか憎めないジミー・ウーを、ランドール・パークはどのように演じたのだろうか。
ジミー・ウーを演じたランドール・パークのルーツ
UCLA卒の秀才
ランドール・パークは、1973年生まれの韓国系アメリカ人。名門UCLA (カリフォルニア大学ロサンゼルス校) の修士号を持つ秀才だ。韓国からの移民の両親を持つパークは、UCLAでもアジア系アメリカ人についての研究を行なっている。大学在学中にアジア系アメリカ人による学生劇団を立ち上げるなど、学生時代から自らのルーツに根ざした活動を行っていた。実は、このパーク自身のルーツが、ジミー・ウーというキャラクターの特徴にも関わってくるのだ。
金正恩役で一躍有名に!
パークは、2003年にドラマ『Fastlane』(2002-2003) で俳優としてのキャリアをスタートさせると、その後はコメディ作品を中心に、ドラマ・映画の双方で活躍を見せている。そんなランドール・パークが一躍脚光を浴びたのは、北朝鮮を揶揄したパロディ映画『インタビュー』(2014) への出演だった。なんと、パークはこの映画に金正恩役として出演。北朝鮮からこの映画に対し、公式に抗議が行われる事態にまで発展したことで、映画、パーク共に大きな注目を集めた。
ジミー・ウーとは誰か
「初めて好意的に描かれたアジア系アメリカ人」
そのランドール・パークは、今回『アントマン&ワスプ』で演じたジミー・ウーというキャラクターについて、以下のように語っている。
ジミー・ウーを演じられることを誇りに思います。私が勉強したところによると、彼はマーベルのコミックで初めて好意的に描かれたアジア系アメリカ人の一人なんです。
by ランドール・パーク
ジミー・ウーが初めてコミックに登場したのは、なんと1956年のこと。1964年にアメリカで公民権法が制定される8年も前の話である。パークが“好意的に描かれた”としているのは、当時コミックで描かれるアジア人は差別的な描かれ方がされていたことが理由だ。カッコいい“エージェント”として登場したジミー・ウーは、アジア系アメリカ人の憧れの的となったのだ。
まさに、アジア系アメリカ人という自身のルーツに根ざした活動を行ってきたランドール・パークが演じるに相応しいキャラクターだったと言えるだろう。
S.H.I.E.L.D.入りの可能性も…
更に、ランドール・パークは、自身がコメディ出身であることが起用の理由となったことを認めた上で、ジミー・ウーについてこのようにも述べている。
ただ、明らかにしておきたかった点は、彼はコミカルな一面を見せはするけれど、それでも優秀な人材だということなんです。スコットを追いかけている間にも、スコットとの仲間意識のようなものが存在している。それも一つの友情の形ではあるんだけど、それでも彼はFBIのイヤな奴なんですよ (笑)
by ランドール・パーク
ランドール・パークの言う通り、『アントマン&ワスプ』ではコミカルなキャラクターに仕上がったジミー・ウーだが、原作では優秀なFBIエージェント。原作のジミー・ウーは、S.H.I.E.L.D.に所属し、ゴジラの討伐を目的とする部隊 “ゴジラ・スクワッド”にも所属するなど、幅広い活躍を見せている。原作ではFBIで訓練を積んでS.H.I.E.L.D.入りしており、順当に行けば、MCUでもS.H.I.E.L.D.に所属するジミー・ウーの再登場もあり得る。今後、ランドール・パークがジミー・ウーを演じ続ける姿を期待せずにはいられない。
『アントマン&ワスプ』は、2018年8月31日より全国で公開中。