ワンダは生きている?『アガサ・オール・アロング』予告を考察 死体の指先とカードの表記に注目 | VG+ (バゴプラ)

ワンダは生きている?『アガサ・オール・アロング』予告を考察 死体の指先とカードの表記に注目

©2024 Marvel

『アガサ・オール・アロング』初予告を考察

1月に配信された『エコー』に続く2024年のMCUドラマ『アガサ・オール・アロング』が9月19日(木)よりディズニープラスで配信を開始する。『アガサ・オール・アロング』は、ディズニープラスオリジナルのMCUドラマ第1弾として2021年に配信された『ワンダヴィジョン』のヴィラン、アガサ・ハークネスを主人公に据えた作品。人気ドラマとなった『ロキ』(2021-)、高い評価を受けた『エコー』に続いてヴィランキャラをメインに据えたドラマになる。

2024年7月には、ドラマ『アガサ・オール・アロング』の初映像が公開。その予告編では、ワンダ・マキシモフが死んだともとれる演出が含まれていた。『アガサ・オール・アロング』は“ワンダの死後”を描く物語なのだろうか。今回は、ワンダにスポットライトを当てて、この予告編を考察してみよう。

なお、以下の内容はドラマ『ワンダヴィジョン』と映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) のネタバレを含むので注意して頂きたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ワンダヴィジョン』と映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の内容に関するネタバレを含みます。

『アガサ・オール・アロング』あの死体はワンダ?

刑事物には元ネタが

ドラマ『アガサ・オール・アロング』の初予告では、冒頭でアガサが刑事として登場。この場面の演出はドラマ『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』(2021) へのオマージュとされている。『メア・オブ・イーストタウン』は、平和な地方の町で起きた事件の謎を女性刑事が追うHBOのドラマだ。

『アガサ・オール・アロング』にビリー役で出演するジョー・ロックは、2023年1月にInstagramで「Agnes of Westview(アグネス・オブ・ウェストビュー)」というロゴが入ったディレクターズチェアの写真をシェア。これが『メア・オブ・イーストタウン』のロゴと似ていたため、ドラマ『アガサ・オール・アロング』が刑事物になるのでは、という考察もあった。

どうやらその写真は、『アガサ・オール・アロング』の冒頭が、本当に刑事物として展開されることのヒントとなっていたようだ。アガサを迎え入れた刑事は、『ワンダヴィジョン』でもウェストビューの住人として登場したジョン・コリンズだ。『ワンダヴィジョン』第3話ではワンダの世界で“ハーブ”という名前で登場し、ヴィジョンに真実を告げようとしてアガサがこれを止めている。

ジョンとアガサが刑事として登場しているということは、この刑事物の世界観も誰かの“ヘックス(結界)”の中である可能性が高い。そして、ジョンが「Jane Doe(身元不明の女性)」と案内した先にはうつ伏せで倒れた死体がある。顔は映されず、遺体の左手が映し出されるのだが、その指先は黒色に染まっている。

ダークホールド保持者の指

指先が黒くなる演出は『ワンダヴィジョン』と『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で登場している。“禁断の書”とされる闇の魔術書、ダークホールドを持った時に、その指先は黒く染まるのだ。

『ワンダヴィジョン』ではアガサの、『マルチバース・オブ・マッドネス』ではワンダと、イルミナティに処刑されたアース838のドクター・ストレンジの指が黒くなっていた。ワンダとアース838のドクター・ストレンジはダークホールドに記されていたドリームウォーク(別ユニバースの自分に乗り移る魔術)を使用していた。

『マルチバース・オブ・マッドネス』ラストでは、ワンダは全てのユニバースのダークホールドを破壊した。つまり、ダークホールドを使って指先が黒くなっている可能性がある人物はアガサ、ワンダ、ドクター・ストレンジのみと考えることができ、『アガサ・オール・アロング』の予告編に登場した遺体は女性とされていることから、この遺体はワンダか別ユニバースのアガサだと考えるのが妥当だろう。

加えてこの死体がジーンズを履いており、足が裸足であるという特徴は、ドリームウォークを使ってアース838に赴いたワンダと同じだ。次の検死のシーンの直後には、アガサが手にしたリストの10月13日の欄に「W. Maximoff」という文字が現れる。これはワンダのフルネームである「ワンダ・マキシモフ」を示しており、この予告編で登場した死体がワンダだということは意図的に示されているように思える。

ミスリードの可能性も?

MCUのメインユニバースでワンダが最後に登場したのは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』のラストシーンだ。ワンダはダークホールドの原本であるワンダゴア山を自ら破壊し、崩れゆく山の下敷きとなった。このラストについて、脚本家のマイケル・ウォルドロンもワンダ役のエリザベス・オルセンも、「ワンダがどうなったのかは分からない」回答している。また、エリザベス・オルセンはMCUと「X-MEN」の合流に参加したいという意欲も示している。

『アガサ・オール・アロング』の予告編の死体はフードを被せて顔を映さないようにしているため、この演出がミスリードである可能性は十分に残されている。アガサが手にしているリストについては、下の部分をよく見ると「New Jersey Public Library Westview Branch(ニュージャージー公立図書館ウェストビューブランチ)」と書かれており、このリストは病院のものではなく図書カードであることが分かる。

このリストの10月13日のところにマキシモフという名前が入るが、ワンダがワンダゴア山の下敷きとなった日は2024年10月24日とされており、そこでワンダが死んでいたとしても、リストに現れた10月13日はワンダの命日にはなり得ない。あのリストが図書カードだとすれば、ワンダが10月13日にダークホールドを手に入れたということを示していたのかもしれない。

ただ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) での人口復活が2023年10月23日、『ワンダヴィジョン』はその後の2023年11月の出来事なので、10月13日がどの年のことを指しているかは定かではない。遺体がワンダである可能性と、そうではない可能性の両方を示す演出で、『アガサ・オール・アロング』の予告編はミステリーの雰囲気を醸し出している。

あの演出がミスリードであれば、ワンダが生きている可能性が生まれるし、魔女を集めて“魔女の道”を探すという『アガサ・オール・アロング』の物語がワンダ復活までの物語となる可能性もある。

ちなみに、今回の予告編では、ワンダの双子の子どもの一人であるビリーが登場しているが、これまでビリーを演じてきたジュリアン・ヒリアードではなく、ジョー・ロックが新たに演じることになっている。『アガサ・オール・アロング』におけるビリーについての考察は、こちらの記事で。

ドラマ『アガサ・オール・アロング』は2024年9月19日(木) よりディズニープラスで独占配信。初週は2話同時に配信される。

『アガサ・オール・アロング』公式ページ

『アガサ・オール・アロング』のショーランナーが語ったアガサの魅力はこちらから。

『アガサ・オール・アロング』初映像の解説はこちらの記事で。

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』初映像の解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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