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『高い城の男』シーズン1でナチス側のキャラを演じたキャストをおさらい―Vol.1 ジョン・スミスを演じた俳優が鳴らす警鐘

高い人気を誇る『高い城の男』

2018年10月よりシーズン3がスタート

2018年10月5日から配信が始まった『高い城の男』シーズン3。フィリップ・K・ディックが1962年に発表した同名小説が原作だ。2015年にシーズン1が公開されて以来、個性的なキャラクターと、ドラマオリジナルの展開で人気を集めている。

VG+では、新シーズンの公開を記念して、『高い城の男』シーズン1から登場している日本人キャラクターと、それを演じたキャストについて特集をお送りしてきた。各世代の俳優が語るアジア系俳優としての苦悩と展望は、下記のリンクからご覧いただきたい。

ナチスドイツ側の登場人物に注目

好評をいただいた前回の特集に続き、今回は、『高い城の男』シーズン1から登場する大ナチス帝国側の登場人物にスポットライトを当ててみよう。旧アメリカ合衆国を日本太平洋合衆国と分割統治する同国のキャラクターを、どのように演じたのだろうか。

ナチス側を代表するキャラクター、ジョン・スミス

アメリカ人にしてナチス親衛隊大将…

『高い城の男』をシーズン1から視聴している方にとっては、ナチス側の登場人物と聞いていの一番に思い浮かべる人物は、ジョン・スミス親衛隊大将だろう。”SS”とも呼ばれるナチス党親衛隊の大将で、ドイツ語で”オーベルグルッペンヒューラー (Obergruppenfuhrer)”という敬称で呼ばれる。SSの大将ではあるが、かつてはアメリカ陸軍にも所属していたアメリカ人。大恐慌の最中にあった戦前のアメリカでの苦しい経験が、彼をナチスへと向かわせたのだろう。旧アメリカ合衆国出身でありながら、ナチスドイツの支配下にあるニューヨークで、親衛隊大将まで上り詰めたその器量こそが、ジョン・スミスという人物の魅力でもあり、恐ろしい部分でもあるのだ。

家族思い…だが非情

ジョン・スミスは、同じくシーズン1から登場している日本太平洋合衆国の憲兵隊大尉である木戸と対をなす人物だ。アメリカ的な家族愛に溢れるキャラクターでもあるが、家族を守るためであれば非道な手段も辞さない。ジョン・スミスの家族を守るための非情な決断と、ナチスを守るための勇気溢れる行動は、完全な善人も完全な悪人もいない『高い城の男』という作品の世界観を端的に表しているのだ。

ジョン・スミスを演じた俳優は?

そんなジョン・スミス役を演じたのは、90年代初頭からテレビドラマや舞台で活躍してきたルーファス・シーウェルだ。“ナチスに所属するアメリカ人大将”という複雑な役柄を演じているが、本人はイギリス生まれ。映画『ハムレット』(1996)ではノルウェー王子のフォーティンブラスを演じた他、映画『幻影師アイゼンハイム』(2006)ではオーストリア皇太子を、ドラマ『Charles Ⅱ: The Power and the Passion』(2003)ではチャールズ2世を演じるなど、高貴な役柄を演じることも多い。そんなシーウェルが『高い城の男』で演じたのは、ファミリーマンでナチスの大将であるジョン・スミス。この時代にナチスのキャラクターを演じるに当たっては、この役柄ならではの苦労があったようだ。

「ナチスもまた、”ただの人間”にすぎない」

ナチス式の敬礼を受けることも…

『高い城の男』シーズン1で見事な演技を見せたルーファス・シーウェルは、2016年のニューヨーク・コミコンの後、ネオナチと思われる男性に「ジークハイル!(勝利万歳!)」とナチス式の敬礼を受ける。コーヒーショップで当時3歳の娘を連れていたシーウェルは見て見ぬ振りをしようとするが、彼は再び同じ行動を取ったという。同作を代表する人気キャラになったとはいえ、プライベートの場にネオナチのファンが現れるとは、ゾッとする話である。

「僕が演じるのは怪物じゃない」

シーウェルは一連の出来事について、英インデペンデント紙のインタビューで、以下のように話している。

これが偶然だとは思わないよ。皆がジョン・スミスに対して強烈な反応を示す。けれど、自分がナチの党員を演じるとなれば、どうやって演じるべきか、皆が知ってるんだ。一生懸命やるか、仕事を断るかのどちらかだよ。
僕の仕事は、ナチスもまた、”ただの人間”にすぎないということを示すことなんだ。それは、ナチスに共感してもらいたいからではない。一連の出来事から僕らが学べることがあるとすれば、彼らを怪物のように扱うことをやめないといけない。
僕が演じるのは怪物じゃない――人間だ。こんな最低のことをやるのは人間だけだよ。怪物なんて存在しないんだ。

by ルーファス・シーウェル

現代に現れたネオナチのファンから敬礼を受けた彼だからこそ言える言葉が並んでいる。ジョン・スミスというキャラクターは、誰の心の中にも潜む光と闇の部分を行き来する、そんな役柄なのだ。

トランプ大統領誕生、そして…

このインタビューが公開された後、アメリカを熱狂と騒乱の渦に飲み込み、ドナルド・トランプが大統領の座に着く。『高い城の男』という作品が持つ意味が変わり始める。2017年10月に開催されたニューヨーク・コミコンでは、「残念ながら、現実のアメリカにもナチスが現れた」と話すSYFY WIREのインタビュアーに対して、ルーファス・シーウェルは質問を遮るようにこう話した。

今に始まったことではないよ。彼 (フィリップ・K・ディック) が1962年にこの物語を書いているという事実が重要なんだ。この世界にナチスを生む素地があることを彼は理解していた
ナチスのコミュニティはいまだに存在するし、ヒトラーの名前がつけられた道も存在する。ロサンゼルスにもナチスのコミュニティがあって、ナチスを受け入れる準備が整っている人々がいるんだ。いつだって雲行きは怪しいんだよ。
それが、彼 (フィリップ・K・ディック) が1962年に書いたことなんじゃないかな。僕らが注意深くいなければ、人間の善良な部分を沈黙させ、凶悪な部分を引き出すメカニズムが動き出す。そのメカニズムが餌とするものは、人間が醜い世界に慣れていく力だ。

イギリス人でありながら、ナチス親衛隊の大将のアメリカ人という役柄を演じたルーファス・シーウェル。ナチスの党員を特別な存在として演じるのではなく、人間の中に普遍的に存在する”闇”の部分を表現するように、ジョン・スミスを演じた。

怪物なんて存在しない――彼の演技は、混沌とした時代の最中にあって、自分たちの心を省みることの大切さを教えてくれているのだ。

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