『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』レマーに注目
Disney+で独占配信されているMCUドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、人種差別の歴史と現状から目を背けない新たなヒーロー作品像を提示している。特に米国内では大きな議論を巻き起こし、『ワンダヴィジョン』(2020)『マンダロリアン』(2019-) を抜いてDisney+で最も視聴されたドラマ作品となった。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、サムとバッキーの物語を中心にしながら、シャロン・カーター、バロン・ジモといった過去のMCU作品に登場したキャラクターの物語も描かれる。そして、新たに登場したジョン・ウォーカー、カーリ・モーゲンソウといったキャラクターの活躍にも注目が集まる。フェーズ4に進んでいく今後のMCUにも大きな影響を与えそうなこれらの登場人物だが、製作陣の“イチオシ”するキャラクターがもう一人いる。
それが、レマー・ホスキンスだ。米The Undefeatedのインタビューに登場した『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の脚本家マルコム・スペルマンは、レマー・ホスキンスに込めた想いを語っている。
以下の内容は、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話までの内容に関するネタバレを含みます。
「レマー・ホスキンスを見て」
レマー・ホスキンスは『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話から登場する人物で、アメリカ政府が二代目キャプテン・アメリカに選んだジョン・ウォーカーのサイドキックとして“バトルスター”を名乗る。
The Undefeatedのインタビューで「ジョン・ウォーカーのサイドキックにレマーを置くことを通して、どのようにアメリカ黒人の立場を表現しようとしたのですか」と聞かれたマルコム・スペルマンは、以下のように話している。
皆さんに知って頂きたいのは、製作陣は常に想像力に富んでいて、活気に満ちていたということです。レマーをジョンのサイドキックにするというアイデアは、誰かがプレゼンしたものですが、脚本家の間で共有されていたスピリットから生まれたものです。私が感じたのは、脚本家の中に十分な数の黒人がいれば、確かな方向に議論が進み、皆がそれを吸収しようとするということです。
そこから生まれたキャラクター、特に黒人のキャラクターの好例はレマー(・ホスキンス)です。皆さんはレマーとジョン・ウォーカーの関係を見ていますが、レマーはどの場面でも自身の立場から意見を述べています。それは黒人の立場です。支配的で主流な層から外れると、どのような問題が起きるかということを彼は認識しており、(彼の言動は) 一貫しています。
アメリカにおける黒人の生きづらさを描き出す『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、サムとサラの“逞しい生き方”が目につきやすい。一方で、脚本家チームは同じくアメリカ黒人であるレマー・ホスキンスを通して、“主流派の中で働くアメリカ黒人”の像を提示した。確かにレマーは、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の劇中で、強い言い方をするジョン・ウォーカーをフォローするよにサムを諭そうとする一方で、サムをフォローしてジョン・ウォーカーに提案を行うなど、微妙な役回りを担当している。
マルコム・スペルマンは最後にこう付け加えている。
私は、製作陣全員が議論を交わしてきたことを誇りに思っています。(それを認識するための) 一番簡単な行動はレマーを見ることです。彼がどのように受け答えをしているかをね。
全6話、約6時間で語られるストーリーの中でも、それぞれの登場人物に確かな視点を持たせた『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。今一度、レマー・ホスキンスの言葉に耳を傾けることで、アメリカ社会の現実をより知ることができるだろう。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はDisney+で独占配信中。
ワカンダとサムに関する解説はこちらの記事で。
第5話の背後にあるアメリカ社会の背景はこちらで解説している。
アヨの削除された過去についてはこちらの記事で。
Source
The Undefeated