ドラマ『エコー』が高評価
2024年最初のMCU作品となったドラマ『エコー』は1月10(水) に配信を開始すると、米国のディズニープラスとHuluで視聴ランキングトップを飾る堂々のデビューを果たした。MCUのドラマシリーズでは初の全話一斉配信という試みも功を奏し、下降トレンドにあるスーパーヒーロー作品の中で一際目立つ結果を残したと言える。
『エコー』の成功を受けてマーベル・スタジオはストリートレベルのヒーローに注力する方針であると報じられているが、ドラマ『エコー』が歓迎されている理由は、その人気だけではない。『エコー』では、これまでのMCUドラマと比べるとCGを使用している場面が格段に少ない。『エコー』が低予算で制作され、人気を集めたこともマーベル・スタジオの方針転換に一役買っているとされている。
そんな情報を裏付けるデータが明らかになった。米Forbesは「『エコー』の成功が波紋を広げている」として、同作がマーベル・スタジオのドラマシリーズを救う鍵になる可能性に言及している。
同誌によると、ドラマ『エコー』の製作費は4,000万ドル(約58億円)。これは大金のようにも思えるが、同じMCUドラマの『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022) や『シークレット・インベージョン』(2023) の5分の1に過ぎない。
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の製作費は約2億2,500万ドル(約330億円)、ドラマ『シークレット・インベージョン』の製作費は約2億1,200万ドル(約311億円)とされている。『エコー』であれば25話分が製作できる予算だ。それほど大きな予算をかけずとも好調な数字を叩き出せるとすれば、スタジオにとってはそれほど魅力的なコンテンツはないはずだ。
ストリートレベルのヒーローの間にも違いが
すでに触れたように、低予算で制作された『エコー』が好調な数字を叩き出したことで、マーベル・スタジオはデアデビルやパニッシャーといったストリートレベルのドラマ作品に注力するという方針が報じられた。一方で、ストリートレベルのヒーローが一律でマーベルの新方針に合致するわけではない。
デアデビルも登場したドラマ『シー・ハルク』に多大な予算が投じられた理由は、主人公のジェニファー・ウォルターズの変身時にVFXを多用する必要があったからだ。作中には、メタ的に登場したマーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギがCG処理が必要だからという理由でジェニファーに変身を解くよう求めるシーンもあった。作品の外でもケヴィン・ファイギは変身にCGを必要としないヒーローを求めているのかもしれない。
他にも、ストリートレベルのヒーローのドラマでは『ムーンナイト』(2022) や『ミズ・マーベル』(2022) も挙げられる。だが、いずれも変身時や能力を使用する際にVFXの処理が必要なヒーローであり、『シー・ハルク』と合わせて2022年はVFX班の過重労働問題が指摘された年でもあった。
『ムーンナイト』では敵のモンスターが透明になれる能力を使ったり、『ミズ・マーベル』ではミズ・マーベルが能力を使うシーンをSEだけで表現して画面外で描いたり、CG処理を削減するためと思われる演出が見られた。ドラマ『エコー』ではネイティブ・アメリカンのコミュニティを中心にした地に足のついたストーリーが描かれ、そもそもCG処理を必要とする場面はわずかしか存在しなかった。
今後、ABC制作のドラマ『ジェシカ・ジョーンズ』(2015-2019)、『ルーク・ケイジ』(2015-2019) などの「ザ・ディフェンダーズ・サーガ」で見られた、コスチュームすらも必要としないヒーローの需要は高まると予想できる。
一方で、同じストリートレベルのヒーローでも、キングピンの宿敵スパイダーマンなどはVFXを多用するヒーローであるため、大作映画が主戦場となるはずだ。低予算のドラマで物語のベースを固め、イベントとして映画作品で盛り上げるという展開は現実的な戦略だと言える。
現在、ハリウッドではアカデミー賞視覚効果賞にノミネートされた映画『ゴジラ-1.0』(2023) の製作費が1,500万ドル(約22億円)とされていることから、「低予算で制作された映画」の成功例として注目を集めている。もちろんこの潮流にはVFX班が安い賃金で高いクオリティを求められないという保障が必要になるが、多額の予算を投じて作品を量産するよりも腰を据えて作品作りに臨む新しい流れがマーベル・スタジオにも芽生えつつあるのかもしれない。
ドラマ『エコー』の制作過程が映すメイキング『アッセンブル:エコーの裏側』は2024年1月31日(水) より配信中。
Source
Forbes
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