「バットマンがいないバットマン作品」が作られ続ける理由——『ジョーカー』『バットウーマン』『ペニーワース』 | VG+ (バゴプラ)

「バットマンがいないバットマン作品」が作られ続ける理由——『ジョーカー』『バットウーマン』『ペニーワース』

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「バットマンがいないバットマン作品」が続々

2019年10月4日(金)、「バットマン」シリーズに登場するヴィランのジョーカーを主演に据えた『ジョーカー』が日米で同時公開される。クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008) でもおなじみのジョーカーのオリジンが描かれる同作。後にジョーカーとなるアーサー・フレック役をホアキン・フェニックスが演じる。アメコミ史上最狂の悪役・ジョーカーの物語に世界中が注目している。

ドラマもバットマン関連作品

2019年に「バットマン」シリーズのスピンオフとして公開される作品は『ジョーカー』だけではない。バットマンの執事であるアルフレッド・ペニーワースの若き日を描くドラマ『ペニーワース (邦題未定、原題: Pennyworth)』は7月28日に米国で放送を開始。『ジョーカー』公開直後の10月6日からは、DCコミックス初のLGBTQヒーローを主人公にしたドラマ『バットウーマン (邦題未定、原題: Batwoman)の放送が始まる。『ペニーワース』はバットマン誕生の遥か昔を、『バットウーマン』はバットマンがいなくなった後のゴッサムシティを舞台にしたドラマ作品だ。

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つまり、『ジョーカー』『ペニーワース』『バットウーマン』と、2019年は「バットマンがいないバットマン作品」が3作品もリリースされることになる。しかも、1月には「バットマン」シリーズの舞台であるゴッサムの街が混沌に陥っていく様子を描いたドラマ『GOTHAM/ゴッサム』(2014-2019) が全100話の放送を終えて完結したばかりだ。

17年前にもスピンオフ作品が

「バットマンがいないバットマン作品」には、古くは『ゴッサム・シティ・エンジェル』(2002-2003) も挙げられる。こちらも『バットウーマン』同様、バットマンが活動をやめた後のゴッサムが舞台になっている。キャットウーマンことセリーナ・カイルの娘、ヘレナ・カイル、『GOTHAM/ゴッサム』の主人公ジム・ゴードンの娘、バーバラ・ゴードン、『ARROW/アロー』(2012-)、『レジェンド・オブ・トゥモロー』(2016-) にも登場したブラックキャナリーの娘、ダイナ・レドモンドの三人がチームとなってゴッサムの街を守る。芳しい評価が得られなかった『ゴッサム・シティ・エンジェル』はシーズン1で終了してしまったが、「バットマン」スピンオフの灯が消えることはなかった。

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人気シリーズとなった『GOTHAM/ゴッサム』

2014年に放送を開始し、全5シーズンが放送されたドラマ『GOTHAM/ゴッサム』は、「ダークナイト」トリロジーでもおなじみの刑事、ジム・ゴードンの新米時代からスタート。ブルース・ウェインの父トーマス・ウェインの死をきっかけにゴッサムの街は混沌に陥り、街の小悪党たちが次々と大物ヴィランへと変貌を遂げていく過程が描かれた。同時にブルース・ウェイン少年がバットマンへと成長する姿も描かれており、バットマンの誕生と共にシリーズは好評のままフィナーレを迎えている。

「バットマンがいないバットマン作品」ができる理由

では、何故これほどまでに「バットマン」シリーズに登場する枠役を中心に据えた作品が続々登場するのだろうか。『GOTHAM/ゴッサム』と『ペニーワース』の両作を手がけるダニー・キャノンは、DCコミックスの公式サイトでこう語っている。

『GOTHAM/ゴッサム』を作ったとき、皆が同じ疑問を抱いたんです。「なぜ「バットマン」でやる必要があるのか」ということです。『GOTHAM/ゴッサム』のテーマの大部分は、ここ (『ペニーワース』) でやっていることと同じです。以前の世界はどのようなものであったのか、そして来たる展開に向けて世界がどのように変わっていくのか、ということです。

つまり、多くの人が知る「バットマン」の世界観がどのように生まれたのか、それ以前の世界とその過程を描くことに重点を置いているということだ。「バットマン」という巨大なフランチャイズを利用する以上、その主人公を意識した作りになることは自然の成り行きだろう。

“バットマン以外”が輝ける理由

では、『ゴッサム・シティ・エンジェル』や『バットウーマン』のように、“バットマン後”の世界を描いている作品も登場していることについては、どう説明することができるだろうか。その答えを解くには、バットマンというキャラクターの持つ特徴が鍵になる。

バットマンは、スーパーマンやアクアマンといったキャラクターと違い、スーパーパワーを持っていないことがその特徴だ。映画『ジャスティス・リーグ』(2017) では、「あなたのスーパーパワーは?」と問われたバットマンが「“金持ち”だ」と答えるシーンが登場する。ウェイングループの御曹司であり大富豪であるがゆえに、周囲には彼をバックアップする人材が揃っている。ブルース・ウェインに代わってウェイグループを指揮するルーシャス・フォックスや、執事のアルフレッド・ペニーワースがその代表だ。

バットマンを支えるサイドキック

それは一方で、バットマンが超人ではないがゆえに周囲の人々の助けを必要とするということを意味している。実写映画シリーズでは描かれていないが、ロビンやバットガール、ナイトウィングなど、バットマンに付いているサイドキック (相棒) の数はアメコミヒーローの中でも随一。バットマンの“仲間”の多様さは、アニメ映画『ニンジャ・バットマン』(2018) で日本のファンにも再認識された。戦隊モノ的な構成が可能になるほどの面々が揃っているのだ。

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個性豊かなキャラクターにスポットライト

そうして、人間らしいバットマンの“弱さ”が、個性豊かなキャラクターを生み出す素地となった。スーパーマンでは生まれ得ないものだろう。そしてこの背景が、個人にスポットライトを当てる現代的なストーリーテリングにマッチする。『ゴッサム・シティ・エンジェル』は女性キャラクター達を中心に据えたストーリーで、『バットウーマン』ではDC初のレズビアンのスーパーヒーローが誕生した。「バットマン」というDC最大のフランチャイズを利用して、様々な物語を描き出すことができるのだ。

ヴィランにスポットライトを当てた映画『ジョーカー』では、どのような物語が描かれるのだろうか。『ダークナイト ライジング』(2012) 以来となるバットマン単独映画『ザ・バットマン』も、2021年に公開される予定だ。2019年で誕生から80年が経過した「バットマン」シリーズは、今後も——バットマンが登場しなくても——多様なストーリーを紡ぎ出していくだろう。

Source
DC Comics

VG+編集部

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